
【下平隆宏の「ビルドアップ論」】クリーンにハーフラインを超えること。ボールを運ぶ技術ではなく優位性を設計する思考。ピッチ上でのビルドアップに必要な要素とは
名ボランチとして長く活躍し、監督としては柏、横浜FC、大分、長崎を率い、先日には大分市に拠点を置くJFLのジェイリースFCのクラブアドバイザーにも就任した下平隆宏氏の連載コラム。第2回の今回も、自身が考える“ビルドアップ”について語ってもらった。
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試合を観ていると、どこで流れが決まるのか。その分岐点の多くは、ビルドアップの局面にある。
前回は「チームビルド」という視点で、強いチームに共通する基準について書いた。今回はそこから一歩踏み込み、ピッチ上での「ビルドアップ」について考えてみたい。
まずは私の考えるビルドアップの定義から説明したい。ビルドアップとは、「クリーンにハーフラインを超えること」である。
相手チームが前からプレッシングにきても、中盤でブロックを組んでこちらの侵入を阻もうとしても、クリーンにハーフラインを超えて相手陣内に侵入していくことができれば、再現性のある攻撃につながる。それこそがビルドアップだと思っている。
そのために必要になるのが、フリーマンの把握である。後方からビルドアップする場合、基本的にピッチ上にはGKを含めて11人がいる。それに対して相手は10人。相手GKがマークにこない限り、必ずピッチ上には数的有利が作れる。
重要なのは、誰がフリーになり、そこに相手が出てきた時に次のフリーマンが誰になるかを共有することだ。相手はパスコースを切りながらプレスに出てきたり、1人で2人をマークしたりと賢い守備をしてくる。
それでも、適切なポジショニングで相手のプレスのスイッチと矢印を見極め、的確な身体の向きと確かな技術があれば、フリーマンからフリーマンへとボールを動かし、前進することができる。
そしてここからがビルドアップの本題になるが、フリーマンを作るうえで最も重要なのが、GKのフィールド選手並みの技術と理解度である。
ハイプレス全盛の現代サッカーにおいて、GKにまでプレスをかけてくるのは当然である。そのプレスにハマりロングボールで回避するしか術がなければ、攻撃のリズムは生まれない。
しかし、GKが相手のプレスにハマらずプレッシャーを引き受けてくれたら、チームで次のフリーマンができる。そうやって相手のプレスを回避し前進させることができれば、メリットは大きい。
そしてビルドアップはGKだけの問題ではなく、CBにも大きく関わってくる。
CBが相手にプレスをかけられ、GKにバックパス。相手がそのままGKにまでプレスをかけた場面で、バックパスしたCBがポジションを変えなければ、GKは1つパスコースを失う。
CBは自分のマーカーがGKに二度追いしてプレスにいったのであれば、次のフリーマンが自分だと理解し、ポジションを取り直さなければならない。
そのうえで、GKが判断し直接リターンを受けてもいいし、中盤の選手を使って3人目から受けてもいい。
CBだけに限らずだが、GKにバックパスしてポジションを取り直さないのは、私からしたらエチケット不足である。小さなポジショニングだが、これを実践すればチームへのメリットは大きい。
ビルドアップにより、クリーンにハーフラインを超え、相手陣内で再現性のある攻撃に繋げることができた時、それはすでにゲームをコントロールしている状態に近い。
ビルドアップとは、ボールを運ぶ技術ではなく、優位性を設計する思考である。そしてそれは、ピッチ上の選手1人ひとりの判断によって完成する。
戦術でありながら、同時に判断の連続。ゲームをコントロールするとは、その積み重ねに他ならない。それが、私の考えるビルドアップである。
【著者プロフィール】下平隆宏(しもたいら・たかひろ)/1971年12月18日生まれ、青森県出身。現役時代は柏などでJ1では234試合・3ゴール。引退後は柏のU-18の監督などを経て、柏、横浜FC、大分、長崎を指揮。現在は大分市に拠点を置くJFLのジェイリースFCのクラブアドバイザーを務め、九州を中心に活動。
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