カズレーザー(メイプル超合金)の赤ずくめスーツ、ナダル(コロコロチキチキペッパーズ)のタートルネック、スギちゃんの袖なしGジャン、春日俊彰(オードリー)のピンク色ベストなどなど、特徴的な衣装をトレードマークとしている芸人は多い。
観客や視聴者にとって、「ネタ」という耳から入る情報以上に、見た目からくる視覚効果は、より強い印象を残すものだ。芸人はよく、自己紹介がてらのツカミに「名前だけでも憶えてってください」と言うが、その名刺代わりとして衣装は重要なアイテムと言えるだろう。
ただし、例えばこれが人気モデルや俳優だったら「俺(私)も着てみたい」と、その服やアイテムの購買意欲に繋がることになるけれど、こと芸人になると話は別。ブティックなんかで、たとえ店員に「お似合いですよ」と勧められても、恋人や友人から「芸人の○○みたいだね」なんて言われたら、おずおずと試着室に戻るのが関の山だ。
実際、ナダルは「売り上げが落ちた」という理由で、服飾業界から「白いタートルネックをあまり着ないでほしい」というクレームが入ったと、テレビ番組で告白している。
かようにお洒落やファッションにとって、ある特定の人物、とりわけ「お笑い芸人」を想起させることは、決してプラスにはならない。むしろ、マイナスに働くことの方が圧倒的に多い。
ところが、だ。5月18日の「めざましテレビ」(フジテレビ系)でのこと。「ココ調」というコーナーで「若者の最新ファッション」が取り上げられたのだが、「カプリパンツ」や「ナポレオンコーデ」とともに紹介されたのがなんと「くまだまさしコーデ」と呼ばれるものだった。
「時代がくまだまさしに追いついた」とご満悦
くまだまさしは、ぽっちゃりした体型のスキンヘッドがトレードマークで、妻と一緒に作成しているという小物を使った、実にくだらない宴会芸(誉め言葉デス!)で楽しませてくれるピン芸人だ。その衣装というのが「ロングTシャツにタンクトップを重ね着する」というものである。
番組は当のくまだにインタビュー。「時代がくまだまさしに追いついた」とご満悦の様子で、そのファッションが生まれた背景を、
「当初はこの長袖1枚だけだったんですよ。1枚だけ着てる時に乳首が出すぎてしまいまして…」
実はコンプライアンスを考慮した上での苦肉の策だった、とを明かしたのである。
VTR途中で、取材を担当した上垣皓太朗アナによる「街には個性豊かなくまだまさしがたくさん」というナレーションが入り、スタジオは爆笑していた。
しかし、この「くまだまさしコーデ」が「ビスチェレイヤード」(「それって着る順番を間違えたの?」と言いたくなる、ブラジャーみたいなのをトップスの上に重ねて着るファッション)とどう違うのかがわからない。
いずれにしても、これを「おしゃれ」という若者たちから、おじさんやおばさんのファッションをとやかく言われたところで、蚊ほどにも思わなくていいなと、思った次第。
(堀江南/テレビソムリエ)

