●じわじわと縮む 「年末」と「春」の売れ行き
ここでいうインクジェットプリンターは、プリント・コピー・スキャン機能を備えた複合機を含み、その複合機がインクジェットプリンター全体の9割以上を占める。「BCNランキング」で2023年3月のインクジェットプリンターの販売台数を1とした指数を見ると、年間で最も多く売れる12月は、23年1.78、24年1.58、25年1.27と、2年間で0.51ポイント低下した。はがき代の値上げや企業の経費削減による年賀状離れが影響しているようだ。
一方、新生活シーズンの3月は、24年1.00、25年1.01と横ばいを維持。しかし、26年3月は0.87と、減少に転じた。とはいえ、前年12月と3月の指数の差は0.78、0.57、0.40と年を追うごとに縮小し、変化の兆しが感じられる。日本郵便は24年10月に値上げした郵便料金の改定を検討すると発表しており、さらなる年賀状離れは不可避。将来的に、12月と3月の売れ行きがほぼ並ぶ可能性もゼロではないだろう。
「BCNランキング」によると、26年3月のインクジェットプリンターの販売台数1位はエプソン「EW-056A」、2位はキヤノン「PIXUS TS3730(PIXUSTS3730BK
)」、3位はエプソン「EW-456A」。いずれもA4対応・4色インク・実勢価格1万円前後のシンプルな複合機だ。上位5機種のうち「EW-456A」と「DCP-J529A」以外は、両面自動印刷・2Way給紙に対応しておらず、その分、価格は手ごろだ。
小学生の子どものいる記者は、A4対応のインクジェットプリンターを所有している。数年前に2万円台で購入した、5色インク・両面自動印刷・2Way給紙対応の複合機だ。ライフスタイルの変化から、年賀状を含む写真印刷やレーベル印刷はしないと分かったため、買い替え前の機種よりあえてスペックの劣る機種を選んだ。実際に使ってみて品質に特に不満はなく、インクタンク交換時の分かりやすさから、満足度は最も高い。
12月とその前後の月の販売台数の伸びから見ても、市場は依然として年賀状需要に支えられているが、子どものいる家庭では、春の新生活シーズンこそ、プリンターの購入を検討してはどうだろうか。理由は、家庭内での情報共有には、オンラインより一覧しやすい紙のほうが適しており、オンラインで届く資料や書類などを紙でプリントするために、自宅にプリンターがあったほうが便利だからだ。
小学校からの連絡はまだ紙が中心だが、一部はスマホアプリに移行している。塾や習い事では、すでにオンラインが主流であり、ログイン後の「マイページ」でしか確認できない情報も増えている。その情報を家族全員で共有するには、スクリーンショットか印刷が必要であり、オンライン化が進むほど、むしろ自宅プリンターの重要性は増している。
印刷はコンビニのマルチコピー機でも代用できるが、個人情報を含むデータの持ち運びが必要になり、移動の手間や紛失リスクが伴う。中学や高校、大学と進学するにつれ、課題提出などのため印刷が必要な機会が増え、なかには「自宅での印刷ありき」の手続きもあるという。学校のデジタル化は、家庭の協力なしに成立しないのだ。
●A3対応プリンターの販売動向に変化 3月が前年12月を逆転
自宅プリントで悩ましいのが用紙サイズだ。インクジェットプリンターはA4が主流だが、大判の参考書や過去問題集、楽譜などを原寸大で印刷したい場合は、A3・A3ノビ対応(以下A3対応)のインクジェットプリンターやレーザープリンターのほうが適している。
26年3月のA3対応インクジェットプリンターの販売台数1位は、エプソン「PX-M6011F」、2位・3位には、同じくエプソンの「PX-M6010F」と「EP-982A3」が並んだ。なお、ColorioシリーズとなるA3対応の「EP-982A3」は、後継機種が発売済みのため、メーカーサイトで「在庫限り」と案内されている。
A3対応機は12月と3月の二つの販売のピークがあり、26年3月は25年12月をわずかに上回り、過去3年で初めて逆転した。こうした新生活需要とみられる動きが、メインのA4対応機にも波及するのか、今後の動向に注目だ。(BCN・嵯峨野 芙美)
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