年々、形骸化が進む宮崎フェニックス・リーグを危惧する声が、球界内で高まっている。10月6日に開幕して10月27日まで、NPB12球団のほか、オイシックスやくふうハヤテ、四国アイランドリーグ、独立リーグ、韓国プロ野球が参加して行われているが、本来の意味合いとは違うものになりつつあるのだ。
スポーツ紙デスクが現状を説明する。
「元来は教育リーグ。教育リーグとは過ぎたシーズンを反省し、チームや個人の問題点を洗い出すもの。さらには来季に向けて、公式戦で出番の少なかった若手選手を積極的に起用し、試合を通じて育てていく。若手にとっては大きなチャンスで、フェニックスでの活躍が首脳陣の目に止まり、来春キャンプでの1軍メンバー入りが叶うかもしれない。ところが近年はチームによって、その若手のチャンスががもぎ取られていますからね。これでは教育リーグの意味をなさないですよ」
若手のチャンスがないとはどういうことか。球界OBがあとを引き取って言う。
「クライマックス・シリーズに出場するチームに関しては、完全に1軍メンバーの調整の場になっているわけです。例えば日本一奪回を目論む阪神は、投手では湯浅京己や桐敷拓馬、正捕手の坂本誠志郎までもメンバー入りして、試合に出る。確かに早く優勝が決まり、CSファイナル・ステージまで時間があるチームにとって、公式戦終了からCSまでの期間の調整は難しい。実戦勘をなくさないために試合に出ることは必要でしょう。でもその分、若手のチャンスがなくなるということを忘れてはいけない」
下剋上を期す巨人は戸郷翔征や横川凱、岸田行倫らが参戦。連続日本一を狙うDeNAは故障明けの牧秀悟、藤浪晋太郎がメンバー入りしている。
パ・リーグではソフトバンクが今宮健太、山川穂高を出場させて調整の意向を固めている。
確かにプロ野球は勝利優先。1位と2位では雲泥の差があるが、教育リーグの場にそれを持ち込むのは少し違う。
「公式戦とCSの間が空きすぎるのが問題なら、日程を詰めればいい。メジャーだって162試合終了後、1日空いただけでポスト・シーズンがスタートしている。日本でもできないことはないですよ」(前出・球界OB)
目先の優勝は重要だが、常勝チームを作るために、若手の育成を疎かにしてはいけない。
(阿部勝彦)

