「みやざきフェニックス・リーグ」で「事件発生」だ。目下、阪神は10月15日から始まるクライマックスシリーズ・ファイナルステージに向け、フェニックス・リーグとファーム施設のSGL尼崎スタジアムに分かれて調整を続けている。10月8日には才木浩人が宮崎入りし、そのまま西武戦に先発登板した。
6回76球を投げ、無安打無失点。今季はイマイチだったフォークボールの軌道修正ができ、CSファイナルに期待が持てそうな感じだった。
試合は2-1で阪神が勝利。フェニックス・リーグは本来、若手育成の舞台であり、2軍打線が相手であれば、才木が圧倒して当然だ。しかしこの試合で存在感を示したのは、西武先発の冨士大和。阪神打線を相手に7回被安打4の2失点。敗戦投手にはなったが、
「えっ、これが高卒の育成1年目?」
という驚きの声が、阪神ベンチから出たほどだ。
冨士は埼玉県の大宮東高校から育成ドラフトで1位指名された変則左腕。腕の振りはスリークオーター気味で、右足が胸部に付くほど高く上げ、「体は縦回転なのに腕は横から」に見える独特の投球スタイルなのだ。時々ではあるが、投球モーションに入る前に両腕を横に広げ、胸部を開くような仕種を見せる。
昨年夏の甲子園大会埼玉予選(大宮東VS山村学園)で、この冨士の投球を見た野球担当記者はこう言うのだ。
「『胸部を開く仕種』が変則と言われる所以なんです。冨士は投球モーションでも胸部を開くことを意識しているそうです。それによって肘の位置が下がり、スリークオーター気味の投げ方になります」
球速は140キロに届かない。ゆったりとしたフォームで、リリースの瞬間に力を入る投げ方だ。そのため、体感では実際の数字以上のスピードを感じるのではないだろうか。
近本光司、森下翔太、佐藤輝明、大山悠輔はこの日の試合には出ていない。CSでのベンチ入りを目指す中堅や若手中心のメンバーとはいえ、高卒1年目の育成投手に翻弄されたのだから、やはり阪神ナインは緊張感を取り戻していないようである。
「2軍施設でも平田勝男2軍監督が、エラーや悪送球が続く若手を叱責する場面が見られました」(在阪メディア関係者)
来季、冨士が支配下登録を勝ち取るかもしれない。冨士のような「幻惑投法」といえば、巨人も今季最終戦で平内龍太がアンダースローを織り交ぜ、バルドナードもサイドハンド気味の新投法を公開した。巨人がCSファーストステージを勝ち上がるとすれば、「幻惑」がトレンドになりそうだ。
(飯山満/スポーツライター)

