テニス界のレジェンドであり、長年にわたって男女平等の実現に尽力してきたビリー・ジーン・キング氏が、82歳で大学の学位を取得した。
キング氏は5月18日、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校(CSULA)の卒業式に出席し、歴史学の学士号を授与された。首には「学生アスリート」、そして「G.O.A.T.(史上最高)」と書かれた金色のストール。壇上からテニスボールを観客席へ放って、会場を沸かせた。
彼女が同大学に入学したのは1961年。当時は「ロサンゼルス州立大学」という名称だった。在学中の18歳で「ウインブルドン」女子ダブルスを制するなど頭角を現し、プロテニスに専念するため64年に大学を離れた。
その後は、コート内外で女子スポーツ界の転換点を次々に作ってきた。四大大会で計39勝(シングルス12勝、女子ダブルス16勝、混合ダブルス11勝)を挙げ、73年には女子テニス協会(WTA)を創設。同年には男女間の賞金格差是正を訴えながら、ボビー・リッグスとの「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」に勝利し、女子スポーツの歴史を大きく動かした。
数々の闘いと激動を経験してきた彼女だが、学位取得への思いは消えていなかった。約1年前、卒業まで残り1年分の単位しかないことを知り、復学を決意。オンライン授業を受けながら、歴史研究や論文執筆に取り組んだ。
しかも彼女が学んだテーマの一部は、自身が切り開いてきた歴史そのものだった。性差別を禁じたアメリカの教育関連法「タイトルナイン」やLGBTQ+を巡る運動について分析する論文も執筆。WTA公式サイトによれば、“自分自身が授業の教材になっていた”という、極めて珍しい学生生活だったという。
卒業式では、こんなジョークで会場を笑わせた。
「皆さんの卒業クラスの一員としてここにいられることを光栄に思います。イェーイ、ベイビー、たったの61年よ!」
消防士の父と専業主婦の母のもとで育ったキング氏は、自身が家族で初めて大学を卒業する人間だとも明かしている。
また、同校を選んだ理由についても語った。当時のコーチであるスコッティ・ディーズ氏が、男女を分けずに練習させていたからだ。
「テニスで勝つための彼らのアプローチは、当時としては革命的でした。今日でさえ、ディビジョン1や2の大学テニスチームの大半は、男女が一緒に練習することはありません」
さらにキング氏は、12歳の頃にテニスクラブで白人しかいない状況に違和感を抱いた経験が、自身の原点だったと振り返る。
「『他の人たちはどこにいるの?』と私は自問しました。その日から、私は全ての人々のための平等と、誰も排除されない社会の実現に人生を捧げました」
テニス界と社会の歴史を動かしてきた82歳は、最後に後輩たちへこう呼びかけた。
「楽しんで。恐れずに。そして歴史を作ってください」
構成●スマッシュ編集部
【画像】大学卒業の喜びと意義を綴ったキング氏のX投稿
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