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大雨が降ると富士山は「身長が数センチ伸びる」と判明

大雨が降ると富士山は「身長が数センチ伸びる」と判明

Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

富士山は、日本でもっともよく知られた山です。

しかしその高さは、私たちが思っているほど完全に固定されたものではないようです。

北海道大学の研究チームは、富士山の山頂や周辺に設置された電子基準点のデータを解析し、大雨の後に富士山の山頂付近が数センチほど隆起することを明らかにしました。

つまり富士山は、台風や線状降水帯による大雨を受けると、一時的に「身長が伸びる」ような変化を見せるようです。

ただし、これはマグマが上昇して噴火に近づいているサインではありません。

研究チームはこの現象を、地下水によって起こる「冷たい膨張」として捉えています。

研究の詳細は2026年4月28日付で学術誌『Geology』に掲載されました。

目次

  • 大雨のあと、山頂近くは隆起し、遠くは沈む
  • 富士山を押し上げたのは、マグマではなく地下水

大雨のあと、山頂近くは隆起し、遠くは沈む

富士山は「水の山」としても知られています。

富士山の斜面には大きな川がほとんど見られません。

その理由は、降った雨が地表を川として流れ下るのではなく、火山の溶岩層のすき間に染み込み、地下を通って山麓へ流れていくためです。

富士山の水が、やがて湧き水や湖、滝として姿を現すのは、この地下の水の通り道があるからです。

研究チームは、国土地理院が富士山周辺に展開している電子基準点の上下の動きを調べ、気象庁のアメダスによる雨量データと比較しました。

電子基準点は、測位衛星からの電波を受け取り、地面の動きをミリメートル単位で測る観測装置です。

その結果、台風や線状降水帯によって大雨が降った後、山頂に近い観測点では数センチ程度の隆起が見られました。

一方で、富士山から離れた山麓や周辺地域では、逆に数センチ程度の沈降が起きていました。

同じ大雨なのに、山の中心に近い場所は持ち上がり、遠い場所は沈むのです。

遠い場所の沈降は、雨水そのものの重みによって地面が押し下げられる「荷重変形」と考えられます。

富士山を押し上げたのは、マグマではなく地下水

では、なぜ山頂付近だけが大雨のあとに隆起するのでしょうか。

チームは、その原因を富士山の地下に広がる水の通り道に求めています。

富士山をつくる新しい時代の溶岩層には、水を通しやすい部分があります。

大雨で大量の水が染み込むと、この透水性の高い層や浅い帯水層が水で満たされ、わずかに膨張します。

その膨張が地表を押し上げることで、山頂付近の電子基準点に数センチの隆起として記録されたのです。

いわば富士山は、大雨を吸い込んだ地下の水脈によって、一時的に内側からふくらむような反応を示したことになります。

ただし、この膨張は長く続くものではありません。

大雨が終わると、隆起や沈降は数日ほどで回復します。

つまり富士山が「伸びる」といっても、雨水による一時的な変化であり、山そのものが恒久的に高くなるわけではありません。

この発見が重要なのは、富士山が活火山だからです。

火山では、噴火の前に地下のマグマが上昇し、山体がふくらむことがあります。

これは噴火予知において重要なサインです。

しかし今回の研究は、富士山ではマグマとは関係なく、大雨だけでも数センチ規模の山体膨張が起こることを示しました。

噴火前兆としてのマグマによる膨張は「熱い膨張」です。

一方、今回見つかった雨水による膨張は「冷たい膨張」です。

どちらも観測上は小さな隆起として現れる可能性があります。

だからこそ、富士山の監視では、山がふくらんだという事実だけでなく、それが雨の後に起きたのか、どの観測点で起きたのか、どのくらいの時間で元に戻るのかを丁寧に見極める必要があります。

富士山は1707年の宝永噴火以来、300年以上噴火していません。

そのため、次の噴火への備えは社会的にも重要な課題です。

今回の研究は、富士山の変形をより正しく読み解くための新しい手がかりを与えてくれます。

大雨のあとに富士山が数センチ高くなるという現象は、一見すると小さな変化です。

しかしその小さな上下動の中には、地下水の流れと火山監視をつなぐ、大きな意味が隠されていました。

富士山は、ただそこに静かに立っているだけではありません。

雨を吸い込み、地下で水を動かし、わずかに膨らみながら、私たちに地球の内部で起きる変化を知らせているのです。

参考文献

大雨が降ると富士山は数センチ高くなる~噴火前に起こる膨張との区別が重要~
https://www.hokudai.ac.jp/news/2026/05/post-2283.html

元論文

Heavy rains inflate Mount Fuji, central Japan
https://doi.org/10.1130/G54450.1

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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