熾烈を極めるAI開発競争から一歩抜け出すべく、IT業界の巨人たるGoogleが超高性能モデルを発表した。日本時間5月20日の年次開発者会議「Google I/O 2026」で明らかになったのは、最新AIモデル「Gemini 3.5 Flash」だ。
Geminiアプリのデザイン刷新や、個人向けAIエージェント「Gemini Spark」の投入と並ぶ目玉として紹介された新モデルは、Googleが「最速級」と位置づける次世代AIである。
米メディアによれば、Googleは3.5 Flashについて、出力速度が他の最先端モデルの4倍に達し、エージェント処理やコーディング性能でも従来モデルを上回るという。
もはや「質問に答えるチャットボット」ではなく、秘書、調査員、プログラマーを兼ねる「個人用AI社員」に近づいたモデルだが、見逃せないのが価格の急上昇だ。
Googleの開発者向け料金表によれば、Gemini 3.5 Flashの有料API料金は100万トークンあたり入力1.50ドルで、出力は9.00ドル。前世代のGemini 3 Flashが入力0.50ドル、出力3.00ドルだったことを考えると、実に3倍の値上げである。
数年後には月に数十万円を支払える人だけが最新版を使用
ITジャーナリストが解説する。
「これまでAI各社はユーザーを囲い込むために、赤字覚悟の価格競争を続けてきました。しかし最先端モデルを動かすには半導体、データセンター、電力が桁違いに必要になる。Googleほどの巨大企業でも、いつまでも格安で提供するのは難しい。今回の3倍価格は、AIが『安くて便利な道具』から『高価な専門インフラ』へ移り始めたサインなのです」
この値上げは開発者だけの問題ではない。今後、最先端AIをフル活用できるのは大企業や富裕層だけで、一般個人は無料版や旧世代モデルに押し込められる可能性が指摘されている。
前出のITジャーナリストが踏み込んで言う。
「数年後には月数千円のAIでは仕事にならず、月数十万円を払える人だけが最新AIを使える時代になる可能性は高い。AIを使える人と使えない人では文章作成、プログラミング、調査、投資判断まで、生産性がまるで違ってくる。これはスマホやパソコンの格差より深刻です」
AIが特権階級だけのものになりつつあるのだ。
(川瀬大輔)

