
ゲームは、今や多くの人にとって身近な娯楽です。
友人と遊ぶ場であり、ストレスを発散する場であり、ときには日々の疲れを忘れさせてくれる小さな避難所にもなります。
しかし、その「避難所」がいつの間にか生活の中心になり、学校や仕事、睡眠、人間関係を押しのけてしまうこともあります。
スペイン・バレンシア大学(Universidad de Valencia)の研究チームは今回、若年成人におけるインターネットゲーム障害の有病率を調べるため、過去の研究を統合するメタ分析を実施。
その結果、18〜35歳の若年成人では、平均して6.1%がインターネットゲーム障害に該当することが示されました。
研究の詳細は2026年3月の学術誌『Addictive Behaviors』に掲載されています。
目次
- 「たくさん遊ぶ人」ではなく「やめられず生活が壊れる人」
- 若年成人の6.1%、ゲーマーに限ると8.1%に
「たくさん遊ぶ人」ではなく「やめられず生活が壊れる人」
インターネットゲーム障害と聞くと、「ゲームを長時間遊ぶ人のこと」と思うかもしれません。
しかし、この障害の核心は、単純なプレイ時間では決められません。
重要なのは、本人がゲームをコントロールできなくなり、その結果として生活に実害が出ているかどうかです。
たとえば、常にゲームのことを考えてしまう、遊べないと落ち着かない、満足するためにより長く遊ぶ必要を感じる、減らそうとしても何度も失敗する、といった状態が問題になります。
さらに症状が進むと、ゲームは少しずつ睡眠、勉強、仕事、運動、趣味、人間関係の時間を奪っていきます。
最初は「少し息抜きするだけ」だったはずのゲームが、次第に日常生活のあちこちを侵食していくのです。
特に問題なのは、ゲームが現実のストレスから逃げる手段になりながら、そのゲーム自体がさらに大きな問題を生み出してしまう場合です。
この状態では、ゲームは単なる娯楽ではなく、本人の生活を狭める要因になってしまいます。
今回の研究が注目した若年成人は、大学生活、就職、自立、人間関係の変化など、大きな環境変化を迎えやすい時期にあります。
そのため研究チームは、この年齢層がインターネットゲーム障害に対して特に脆弱である可能性に注目しました。
若年成人の6.1%、ゲーマーに限ると8.1%に
研究チームは、複数の科学研究データベース(Web of Science、Scopus、PsychInfo)を用いて、関連する研究を探しました。
対象となったのは、18〜35歳の参加者を含み、インターネットゲーム障害の有病率を報告している英語またはスペイン語の研究です。
最初に見つかった出版物は1411本でした。
そこから条件に合うものを絞り込んだ結果、最終的に93本の研究が分析に含まれました。
参加者数は合計14万9601人にのぼり、平均年齢は23〜24歳、女性の割合は約51%でした。
これらの研究結果を統合したところ、若年成人におけるインターネットゲーム障害の有病率は6.1%と推定されました。
さらに、対象者の集め方によって数値は変わっていました。
ゲーマーだけを対象にした研究では有病率は8.1%で、ゲーマーと非ゲーマーを含む混合サンプルでは5.47%でした。
つまり、ゲームを実際にプレイしている人だけに絞ると、インターネットゲーム障害に該当する割合はさらに高く見積もられるのです。
ただし、この6.1%という数字は、そのまま「若者の6%が確実にゲーム依存」と断定できるものではありません。
チームは、有病率が使われた診断尺度や研究の質、サンプルサイズによって大きく左右されることも示しています。
特に、参加者数が少ない研究やバイアスのリスクが高い研究では、有病率が高く出やすい傾向がありました。
また、女性参加者の割合が高いサンプルでは有病率が低くなる可能性も示されましたが、この差は統計的に強く断定できるほどではありませんでした。
興味深いことに、ゲーマーのみを対象にした研究に限ると、インターネットゲーム障害の有病率は近年上昇している傾向も見られました。
チームは、その背景として、競技性の高いオンラインゲームの広がりや、マイクロトランザクション、ルートボックスのような課金要素が関係している可能性を挙げています。
ただし今回の研究だけで、それらが直接の原因だと断定することはできません。
あくまで、現代のゲーム環境が問題あるプレイ行動を助長している可能性がある、という解釈にとどまります。
ゲームは、本来なら楽しみや交流を与えてくれる文化です。
しかし、やめたいのにやめられず、生活の大切な部分がゲームに置き換わっていくなら、それは単なる趣味の範囲を超えています。
今回の研究は、若年成人の約6%前後に、そうした問題を抱える人がいる可能性を示しました。
大切なのは「何時間遊んだか」だけを見ることではありません。
ゲームを終えたあと、自分の生活が広がっているのか、それとも少しずつ狭くなっているのか。
その変化こそが、ネットゲーム障害を見極める重要なサインなのかもしれません。
参考文献
More than 6% of young adults suffer from Internet Gaming Disorder, global study reveals
https://www.psypost.org/more-than-6-of-young-adults-suffer-from-internet-gaming-disorder-global-study-reveals/
元論文
Prevalence of Internet gaming disorder in young adults: a systematic review and meta-analysis
https://doi.org/10.1016/j.addbeh.2025.108576
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

