じゃがりこがきっかけで生まれたコーナー
そのメールを読んで、水川が怒りはじめました。
「お前、遅刻したくせにじゃがりこ食うな!」
その怒りは発言とともにどんどんエスカレートしていきます。
「遅刻してんのに味のするもん食うな。反省してる人間はじゃがりこ買わないんだよ!」
なんで遅刻した人間が新幹線でじゃがりこ食ってんだと。遅刻した人間らしく静かに反省してろと。そういう主張なんですけど、これは本当に子どもの主張というか、論理もなにもない動物的な怒りです。反省することと、じゃがりこを食うことは、結びつけて考えることじゃない。まったく関係ないことですから。
遅刻するなっていうキレ方だったらわかります。ちゃんと起きろとかね。でも遅刻したやつが新幹線でじゃがりこ食うなって、これはもう暴論ですから。どういう意味? 本当に首をかしげますよ。
だってねえ、じゃがりこ食わなかったら私、劇場に間に合うんですか? じゃがりこ食わずに反省した雰囲気をだしていたら、新幹線のスピードがあがるんですか? そんなシステムありませんよ。ちゃんと決められたスピードで走って、時間通りに到着するわけです。
じゃがりこ食ってようが食っていまいが、正座してようが寝てようが、私が乗ってるのぞみの速さは変わらないんですよ。ただのやつあたりです、水川がしてるのは。
そもそも、私は反省していますからね。大阪の劇場のスタッフのみなさん、一緒に出演する芸人さん、マネージャー、もちろん相方の水川にも、全方位に対して申し訳ないと思っています。それなのになんでじゃがりこ食っただけで、こんな怒られなきゃならないんでしょう。
この日から、TBSラジオ「空気階段の踊り場」に「なんか怒られました」のコーナーができました。私が新幹線でじゃがりこ食ってたらなんか知らないけど水川に怒られた、というような話をリスナーに投稿してもらうものです。このときから今までずっと続いているコーナーです。
あれから4年たちましたけど、水川はまだ納得してない。やっぱり暴論を振りかざす人って他の人の意見をきけないんですね。あいつはいまだにたぶん自分が正しいと思ってます。あいつが自分の間違いに気づくまで「なんか怒られました」は続くんだと思います。
没頭飯
鈴木 もぐら
2026/3/301,650円(税込)183ページISBN: 978-4591189290\空気階段・鈴木もぐら、「食」を通して自身を語る初の単著/
【内容紹介】
飯を語ることは、己を語ること――「食」に対する探求心と愛が凝縮された大人気連載を書籍化。父親・母親との思い出から、部活動、股関節手術、交友関係まで、「食」を通して著者の人生が垣間見られます。語り下ろしエッセイ3本、書き下ろしエッセイ4本も追加収録。2023年にダイエット成功後、我慢せず食べたものをXで紹介し話題を呼んだ「復讐」投稿も収録。装画・挿画は大橋裕之氏(漫画家)。
【目次】
■脳が「うまい」に支配される
■唐揚げ、米、つけあわせ、奇跡のリズム
■チン管問題
■北海道マウントをとられた夜 ――――オズワルド畠中の得意げな顔
■じゃがりこは太陽
■なにがどううまいのか、わからない、でもうまい「高円寺飯」
■サカナマフィアの影
■父親のまなざし
■「ずずずず」と「どぅるん」が卵かけご飯の醍醐味である
■高円寺居酒屋24時間ループ
■母と怒りとポークソテー、三位一体の味
■目、唇、歯、舌……うまさのバトンがつながっていくラーメン二郎
■おなじメンバー、おなじ話 ――――鬼越トマホーク・坂井さんとの日々
■瓶ビールの流儀 ――――岡野陽一さんの場合
■雀荘飯
■全芸人が感謝している喫茶店
■本物のハンバーガー ――――ミネタさんが教えてくれた味
【「はじめに」より抜粋】
ふと、「この本は、なんのために書いているのだろうか?」との問いが、頭に浮かんできた。飯を愛する読者の方のお役に立てれば、入院中に暇に駆られている方の暇つぶしになれば、この本で皆さんの飯を少しでも楽しくできたら、様々な答えが浮かんできたが、まず頭に浮かんだ答えは、こんなものであった。
「私はうまいもんを食うために生まれてきた!」
と叫ぶ母に、あなたから生まれた証として、私からこの本を贈る。

