
横尾初喜監督の最新作、映画「いろは」が、5月22日(金)より全国公開される。主演は、唯一無二の透明感で観る者を惹きつける俳優・川島鈴遥が務め、姉役を圧倒的な存在感を放つ実力派俳優・森田想が演じる姉妹の物語。
本作は、長崎県佐世保市出身の横尾監督が、「こはく」「こん、こん。」に続き、再び故郷を舞台に描くロードムービー。将来への不安を抱えながら実家の茶舗を手伝う内向的な妹・伊呂波(川島)と、5年ぶりに帰郷した自由奔放な姉・花蓮(森田)が、「赤ちゃんの父親捜し」という数奇な旅を通して、互いの孤独と向き合っていく。
この度、一筋縄ではいかない姉妹の関係を初共演で演じた川島と森田の二人にインタビューを実施。撮影現場で感じた横尾監督のこだわりや、複雑な役どころの解釈、ロケ地・長崎での思い出深いエピソードについて語ってもらった。
■“ただそこにいる”ことへの挑戦。対照的な二人が選んだ役作り
――ロードムービーという形式で、姉妹の心の機微が繊細に描かれた作品ですが、最初に脚本を読んだ時の印象はいかがでしたか?
川島:台本を読んだ時点で、姉妹がどんな風に変わっていくのかを追い続けていく構成が、すごく心に来る作品だなと感じました。特に後半にある防波堤のシーンを読んだときは、「心に溜めていたものをどれだけ出せるかが、この作品の勝負だ」と感じて。プレッシャーもありましたが、大事に演じたいと強く思いました。
森田:伊呂波と花蓮という、キャラクターの違いが明確に描かれていた点が印象的でした。最初は反発し合っていますが、最終的に防波堤の長いシーンで分かり合うというゴールがしっかりあったので、そこに行き着くまでの旅や会話を一つ一つ積み上げないと、最後の説得力がなくなってしまうなと。ある種の心地よい緊張感を感じながら読み進めていました。
――役作りにおいて、意識されたことはありますか?
森田:姉妹がまさに「静と動」の関係だったので、伊呂波が動かない分、自分は現場で自由に動こうと思っていました。台詞と一緒に、体が動きたいと思ったら動いてみる。あとは、花蓮が翻弄されるダメ男たちに合わせて、服装や話し方を変えていく作業は、面白がりながらやっていましたね。
川島:私は伊呂波のキャラクターを大事にしつつ、実際に長崎へ行って空気を感じることを大切にしました。監督からは「技術に頼らず、ただそこにいることだけを徹底してほしい」と仰っていただいていて。何かを足そうとするのではなく、素直にその場にいる、という意識で現場に立っていました。
――横尾監督とは、演技について具体的にどのようなディスカッションをされましたか?
川島:現場でのお芝居の指導というよりは、撮影前に監督やプロデューサーさんとお話しした内容が大きかったです。お芝居の話というよりは「私はどういう人間なのか」という、内面を根掘り葉掘り聞いてくださって。そのエッセンスを役に入れてくださったのだと感じています。
森田:感情をどこまで出すかといったニュアンスの話は現場でもしましたが、撮影に入る前の顔合わせで掴んでいただいた空気感が作品の土台になっていたと思います。
――撮影の数日前から長崎に入られたそうですが、ロケでの思い出はありますか?
川島:監督に商店街などを案内していただいて、土地の空気を感じる時間を作っていただきました。食べ物では「ハトシ」にハマってしまって…今作のオーディション後に合格祈願で長崎に行った時に出会って、撮影中もずっと探し求めていたんです。海老をパンで挟んで揚げたものなんですけど、ようやく出会えた時は幸せでした(笑)。

■「泣くシーンじゃないのに涙が…」圧倒された表現力
――今回が初共演となりますが、お互いの第一印象はいかがでしたか?
川島:私はもう、ずっと憧れの存在でした。オーディションの時に「お姉ちゃん役が森田さん」と聞いていたので、絶対にこの役を掴みたい!と意気込んでいたんです。撮影中も、森田さんの声と目に圧倒されてしまって。泣くシーンじゃないのに涙が溢れてきて、監督に「まだ早いよ」と止められることもありました(笑)。
森田:りりかちゃん(川島)がそうやって溢れさせてしまう姿を見て、本当に素直な方だなと思っていました。伊呂波が抱えるストレスが、ト書きにない感情として出てくる。そんなピュアな反応をしてくれる彼女と徐々に姉妹らしい会話が増えていったことは、演じていてとても楽しかったです。
――撮影を通して、お互いの現場での過ごし方に発見などはありましたか
川島:私はスタッフさんの近くにいることが多かったんですけど、想さんはモニターの近くで集中して役と向き合っている時間が多くて、そのスタイルがすごくいいなと思いました。人と話すことで落ち着くこともあるんですけど、逆にペースが掴み切れなくなることもあったので、「かっこいい、真似しよう!」と思っていました(笑)。
森田:私は逆に、りりかちゃんが主演として現場の皆さんと積極的にコミュニケーションを取ってくれていたから、自由にさせてもらっていたなと。スタッフさんとの「〇〇組」という一体感をりりかちゃんが作ってくれたので、甘えさせてもらっていました。
――正反対の性格をした姉妹ですが、ご自身はどちらに親近感を覚えますか?
森田:私は伊呂波ですね。必ず誰もが通過するあの多感な時期特有の、上手く処理できない感情を経験してきたから、「今、頑張れ!」って応援したくなる可愛らしさがあるなと思います。
川島:私は、花蓮かもしれません。愛想よく振る舞うことを特技にして生きてきたからこそ、本当は逃げ出したいのにこのスタイルを崩せない、変われない……という彼女の葛藤には、すごく共感しながら演じていました。
――最後に、これから映画をご覧になる方へメッセージをお願いします。
川島:この作品は、何かの「始まり」を描いています。映画を観た後に、皆さんの足取りが少しでも軽くなったり、「明日も頑張ろう」と思っていただけたら嬉しいです。
森田:自分の心を上手く出せない悩みを持っていたとしても、長崎の風景を巡る旅を通して、少しずつトゲが柔らかくなっていくような、優しい映画です。幅広い世代の方に届くことを願っています。


