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観光客を避けるように「水中洞窟に隠れる」アザラシを確認

観光客を避けるように「水中洞窟に隠れる」アザラシを確認

※ 画像はイメージです/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

透き通った海に囲まれたギリシャの無人島では、観光客が美しい海や洞窟を求めて集まります。

しかしその陰で、ひっそりと居場所を変えていた動物がいました。

チチュウカイモンクアザラシです。

このアザラシは世界でも特に絶滅が心配されているアザラシの一種で、かつては開けた浜辺で休む姿も見られました。

ところが人間の活動が増えるにつれ、彼らは人目につきにくい洞窟へと身を隠すようになったと考えられています。

ギリシャ・フォルミクラ島で行われた今回の研究では、チチュウカイモンクアザラシが観光客の多い夏の時期に、水中からしか入れない「泡の洞窟」を頻繁に利用していることが確認されました。

研究の詳細は2026年4月28日付で学術誌『Oryx』に掲載されています。

目次

  • 観光地の海で、アザラシはどこへ消えたのか
  • 「乾いた浜」ではなく、濡れた洞窟で眠っていた

観光地の海で、アザラシはどこへ消えたのか

フォルミクラ島は、ギリシャの内イオニア海諸島にある無人島です。

透明度の高い海、泳ぎやすい入り江、豊かな海洋生物によって、観光客にも人気の場所となっています。

そして、この島を訪れる人々にとって大きな魅力の一つが、チチュウカイモンクアザラシの存在です。

チチュウカイモンクアザラシ/ Credit: ja.wikipedia

しかし、アザラシにとって人間の接近は必ずしも歓迎できるものではありません。

チチュウカイモンクアザラシは本来、海岸に上がって休み、毛皮を乾かしたり、体温を調節したりする動物です。

ところが人間の活動が増えると、開けた浜辺は安全な休息場所ではなくなっていきます。

実際、現在のチチュウカイモンクアザラシは、人目につきにくい海食洞を利用する傾向が強いとされています。

フォルミクラ島でも、観光客がアザラシに近づこうとしたり、アザラシが休む洞窟を訪れたりすることが問題になっていました。

そこでイタリア・スイス・スペインの国際研究チームは、アザラシが実際にどの場所を使っているのかを確かめるため、島の洞窟にカメラを設置。

1台は、これまでアザラシが観察されていた主要な洞窟に置かれました。

もう1台は防水ケースに入れられ、隣接する「泡の洞窟」の入口付近に設置されました。

泡の洞窟とは、水中の通路を潜らなければ入れない、内部に空気のたまったドーム状の空間です。

外からは目立ちにくく、人間が気軽に立ち入ることも難しい場所です。

研究チームは、2020年7月の短期間と、2021年6月から10月までの期間を合わせ、合計141日間にわたってアザラシの利用状況を記録しました。

「乾いた浜」ではなく、濡れた洞窟で眠っていた

調査の結果、アザラシたちは主要な洞窟よりも、「泡の洞窟」をはるかに多く利用していました。

141日間の観察期間のうち、主要な洞窟でアザラシが確認されたのは30日でした。

一方、泡の洞窟では119日も確認されました。

つまり、アザラシたちは観察期間の大部分で、水中からしか入れない隠れた空間を利用していたことになります。

泡の洞窟の中で見られた行動は、主に休息でした。

【水中の洞窟を利用するアザラシの画像がこちら】

アザラシは水面に浮いたまま目を覚ましていたり、水面で縦向きに眠っていたり、あるいは海底で動かずに眠っていたりしました。

私たちは「眠る」と聞くと、陸に上がって横になる姿を思い浮かべがちです。

しかしチチュウカイモンクアザラシには、水中で休んだり眠ったりする行動が知られています。

今回の観察は、泡の洞窟が単なる通り道ではなく、実際に休息場所として使われている可能性を示すものです。

ただし、ここで重要なのは、泡の洞窟がアザラシにとって理想的な場所とは限らない点です。

チチュウカイモンクアザラシにとって、乾いた浜に上がれる場所は、休息や体温調節の面で重要です。

泡の洞窟には乾いた上陸場所がないため、出産や子育てに適した場所とは言えません。

それでも頻繁に利用されていたのは、人間から見つかりにくく、近づかれにくい構造だったからだと考えられます。

観光客が増える夏の海で、アザラシたちはより静かな避難場所を選んでいたのかもしれません。

この発見は、アザラシの保全にとっても重要です。

これまで、生息地として価値が高い洞窟は、乾いた浜や上陸場所を備えたものが中心に考えられてきました。

しかし今回の研究は、たとえ上陸場所がなくても、泡の洞窟が「人間から逃れるための休息場所」として重要になり得ることを示しています。

特に観光地では、こうした目立たない水中空間も保護対象として考える必要があるのです。

美しい海を訪れる人間にとって、アザラシとの出会いは忘れられない体験かもしれません。

しかしアザラシにとっては、その視線や接近こそが、静かな眠りを奪うものになっている可能性があります。

海の青い洞窟に隠れて眠るアザラシの姿は、人間が「見たい」と思う自然と、動物が「見られたくない」と感じる自然の距離を、静かに教えているのです。

参考文献

Rare seals hide in underwater bubble caves to escape tourists
https://phys.org/news/2026-05-rare-underwater-caves-tourists.html

元論文

Sealed serenity: use of underwater bubble caves as refuge against disturbance by Mediterranean monk seals
https://doi.org/10.1017/S0030605325102718

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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