政治のクラウドファンディングが、思わぬ方向に盛り上がりを見せている。火付け役の言葉が「淳也フォン」「かなえフォン」だと聞けば、政治の話とは思えないだろう。だがこれは中道改革連合をめぐって、ネット上で飛び交っている言葉なのだ。
コトの発端は、中道改革連合の泉健太衆院議員が5月20日にXに投稿したひと言だ。党のクラウドファンディングの返礼品として、抽選で小川淳也代表らから御礼の電話がかかってくる、という案だった。
「全員には無理だが、抽選で『淳也フォン』『かなえフォン』『階コール』『いさphone』…名前は任せるので、御礼の電話もかけてほしい」
と提案し「支援者と一緒に作る党なので」とコメントしている。
そもそもこのクラウドファンディングは、政治参加の新しい形として悪くない盛り上がりを見せていた。5月15日に開始され、当初の目標1000万円は初日に達成。22日朝の時点では支援総額7756万9000円、達成率775%、サポーター9742人にのぼった。1000万円の当初目標も、その後の3000万円のネクストゴールも、とうに超えてしまった。
返礼品の中身を見ておこう。1000円から5000円のコースは、小川代表と山本香苗代表代行のお礼メッセージ画像。1万円コースは写真入りメッセージカードとお礼状。複数のカードのうちどれが届くかは、ランダムだという。
ここまでは、寄付への返礼として常識の範囲内だ。色紙や礼状は、後援会の世界では昔からある。
空気が変わったのは、件の「電話」案である。抽選で代表らが直接電話をかける、という発想に「淳也フォン」「かなえフォン」という名が付いた。本人の下の名前に「フォン」をくっつけた、軽いノリのネーミングだ。もはや政治献金というより、推し活の指名争いのように見える。
元祖直電は「ブッチフォン」首相官邸から本人がいきなりかけた
もっとも、政治家から突然、電話がかかってくるという話そのものは新しくない。一定以上の年齢の読者なら、小渕恵三元首相の「ブッチホン」を思い出すだろう。首相官邸から本人がいきなり電話をかけるその行動は、1999年の新語・流行語大賞に選ばれた。
ただ、あれは小渕氏が思い立って勝手にかけるものだった。今回の「淳也フォン」には、抽選と返礼品という文脈が乗る。昔の「直電」が、令和のクラファンでは「特典」に姿を変えているわけだ。
クラファンページで小川代表は、憲法の理念と民主主義を守り、対立や分断ではなく対話と包摂で課題解決を目指す政治を掲げている。暮らしの中の声を政治に届けるため、現場を歩き、調査と議論を続ける資金が要る。掲げる理念は、いたって硬派だ。
ところが、そこに付いた特典は「淳也フォン」である。すでに9000人を超える支援が集まっていたところへ、これが加わった。実現すれば、寄付先の政治家から電話があるかもしれない。声が聞けて、名前を呼んでもらえるかもしれない。その光景は、握手会のチケットを握りしめる気分と、そう違いがないのではないか。
これは新しい政治参加の形なのか。それとも政治がファンクラブに近づいた瞬間なのか。「淳也フォン」が鳴る日には、その答えが少しだけ見えてくるかもしれない。
(ケン高田)

