
シリーズ累計3000万部を突破する大人気作「魔法科高校の劣等生」の中でも屈指の人気を誇るエピソードが、劇場版「魔法科高校の劣等生 四葉継承編」として2026年5月8日より公開中。シリーズの転換点となる本作の主題歌「YES」を担当するのは、TVアニメ第1シーズンOPテーマ「Rising Hope」をはじめ、「魔法科」の激動の物語と共に歩んできたLiSAだ。これまで達也の背中を力強く押してきた彼女が、今回は深雪の秘めた想いに「120%」寄り添い、単独で作詞を担当。自身の過去ともリンクするという作詞の裏側や、タイトル「YES」に込められた壮大な“愛の肯定”、そしてソロデビュー15周年を迎えた現在の心境について、たっぷりと話を伺った。
■「Rising Hope」の先へ。達也の歌から、深雪の歌へのシフト
――「Rising Hope」、「Shouted Serenade」と、これまで「魔法科」のオープニングを激しく彩ってきたLiSAさんですが、今回のオファーを受けた際の率直なお気持ちからお聞かせください。
LiSA 正直、「Shouted Serenade」で出し尽くした感じがあったので、「私が『魔法科』について書けることってもうないよ」って思いました(笑)。
――「Shouted Serenade」は、「Rising Hope」に対する10年越しのアンサーソングとして完璧でしたからね。
LiSA そうなんですよ。この10年間、いろいろな現場で「『Rising Hope』のような曲を作ってください」ってオーダーされることが多かったんですけど、「そもそも『Rising Hope』って何なの?」っていうことを、田淵(智也)先輩や堀江(晶太)さんといっしょに紐解いていって、その答えが「Shouted Serenade」だったんです。だからこそ「またこの方向性でオーダーされたらどうしよう?」って思っていたんですけど、劇場版の物語を読ませていただいたら深雪の感情に深くフォーカスした物語になっていたので、「深雪ちゃんだったら書きたいことはあるぞ!」って(笑)。
――達也の歌から、深雪の歌へシフトしたわけですね。
LiSA はい。深雪が長年に渡って抱えている思いを解放させてあげられるような楽曲になるといいなと思いながら作らせていただきました。

■作詞は「120%深雪」。感情を溜め込んでいた昔の自分との共鳴
――作詞はLiSAさんがひとりで担当されています。「ずっと愛してしまうのは罪じゃないでしょ」など、深雪の心情がギュッと詰まった歌詞になっていますね。
LiSA ありがとうございます。この歌には達也の成分はなくて、完全に深雪の気持ちを綴った歌なので書かせてもらいました。
――深雪の感情には、どこまでシンクロして言葉を紡いでいかれたのでしょうか?
LiSA 書いている時は、私自身が120%深雪になっていました。ただ、最初にジミー ストーン監督から「『世界が終わってもあなたといたい』というぐらいの愛を歌ってほしい」とオーダーをいただいて。
――深雪は言いたくても言えない思いを溜め込んでいる状態ですよね。LiSAさんご自身は、感情を溜め込むタイプですか? それともすぐに伝えるタイプ?
LiSA けっこう溜め込むタイプですね。特にキャリア初期の頃はそれが顕著で、デビューできたことが嬉しくて、必要とされていることが嬉しくて、みんなが求める「LiSA像」が崩れることが怖くて何も言えませんでした。なにか喋るとボロが出るんじゃないかと(笑)。だから今回の作詞は、その頃の自分の感情と重ねて書いた部分もあります。
――昔の自分と向き合いながら書くというのは、精神的に辛くはなかったですか?
LiSA うーん、そんなことはないかな。今は経験を積んで、いろいろなことへの対応が上手になったというだけで、本質的には変わっていないところが多いんです。なので、分厚くなった皮膚をペリペリと剥がしていって、むき出しになった細胞を覗いて「あんた、本当はどうなの?」って自分に聞いてみるような、そんな感覚でしたね。

■昔の私なら歌えなかった。サビで「抜く」新たな歌唱表現
――サウンドは高木一成さん作曲、江口 亮さん編曲によるロックバラードです。A・Bメロの静けさからサビで一気に展開する構成で、LiSAさんの持ち味である爆発力はもちろん、丁寧な表現力が光っていて感動しました。
LiSA 嬉しいです。個人的には、こういうストレートなバラードが一番難しいと思っているんです。一人で大切に感情を抱え込んでいるAメロ・Bメロの温度の低い感じと、葛藤しながら叫び出したい気持ちを吐露するエネルギッシュなサビ。そこのギアチェンジをいつもより大きめにするのがすごく難しくて。昔の私だったら、きっと歌えなかったなとも思います。
――レコーディングを通じて、特に印象に残っているフレーズなどはありますか?
LiSA 落ちサビの「あなたに あなたに あなたに あなたと」の、最後の「あなたと」の部分ですね。ここはあえてフッと「抜く」表現をしているんですけど、いつもの私だったら地声でバーンと張っていたと思うんです。でも、そこをあえて抜いてラスサビへ向かうというのは、今までの私にはあんまりなかったアプローチかなと思います。


■「YES」に込めた愛の肯定
――曲名は「YES」と非常に明快ですが、この短い言葉に込めた意味を教えてください。
LiSA これは映画のストーリーにも関わることなのであまりハッキリとは言えないんですけど、深雪にはずっと抱え込んできた想いがあるじゃないですか。それを達也がどういう形で受け止めてくれるのか、その瞬間の気持ちを私なりに解釈した結果、それが「YES」という言葉だったんです。
――すでに完成映像をご覧になっているということですが、個人的に印象に残ったシーンなどはありますか?
LiSA やっぱり、深雪がそれまで溜め込んできた感情をぶつけるシーンが印象的で、すごい長台詞なんですけど、早見(沙織)さんのお芝居が本当に素晴らしくて。あと、おば様(真夜)と深雪の会話のシーンで、背景のライトがすごく神々しくて、ただでさえ可愛い深雪が超絶綺麗で、ずっと見ていたい気持ちになりました。
――四葉家本家の照明とは、またマニアックなところを見ていますね。そう言えばキャストの皆さんも「唐突に旅館みたいな部屋が現れる」とか「謎のエレベーターがある」など、ツッコミを入れて盛り上がっていました。
LiSA あはは(笑)! そういうツッコミどころって結構「魔法科」の魅力だったりしますよね。分かります。

■感情をコントロールできる大人に。ソロデビュー15周年の現在地
――今年でソロデビュー15周年となりますが、デビュー当時と比べて「大人になったな」と感じる部分はありますか?
LiSA あります。黒髪だった頃の写真を見ると「まだ少女だな」って思いますもん(笑)。でもいちばん大人になったなと思うのは、自分の感情のコントロールがちゃんとできるようになったこと。「今は感情を出さないほうがいいな」とか、逆に「このステージではすべてを解放するぞ」とか、少しはTPOをわきまえられるようになりました(笑)。
――そう言えば、それこそデビュー当時にインタビューさせてもらった時などは、よく泣いていましたよね。
LiSA そうなんですよ。いろいろな感情が抑えられなくて、当時はあちこちで泣いていました。すみませんでした(笑)。
――いえいえ。そんなLiSAさんも、今や世界中で活躍されるロックヒロインとなりました。今年の15周年、さらには20周年に向けてのお気持ちを聞かせてください。
LiSA とりあえず、この15周年は全力で駆け抜けたいなと思っています。20周年に向けては……目の前の出会う人たちに精一杯誠実に向き合いながら、ステージにも向き合いながら一生懸命やっていれば、気づけば自然と20周年になっているような気がします。
――では最後に、劇場版の公開と「YES」を楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。
LiSA 深雪が背負う役割や責任を果たさなきゃいけないという気持ちと、お兄様を想う気持ちに挟まれて苦しんできたことを知っている人からすると、今回の劇場版はより感動的なラストになるんじゃないかと思っています。基本的には兄妹の愛の物語なので、その結末と「YES」に込めた思いを、ぜひ劇場で受け取ってください。
――ありがとうございました。
◆取材・文=岡本大介


