現場のドット率
伊賀 『The Stylist』を読んで、一番嬉しかったというか、頷いちゃったのが、フジテレビの月9『プライド』とか、TBSのドラマで木村拓哉さんのスタイリングをやったときの話でした。あの大久保さんですら、(他の演者を担当する衣装会社の)衣装さんたちに気を遣うんだ。目立たないようになるべくバスの端の席に座る、うんうん、わかります、わかります、みたいな(笑)。
大久保 やっぱり、伊賀くんもそう?
伊賀 もう、めちゃくちゃ気遣いますね。衣装さんやメイクさんは、女性の方が多いじゃないですか。僕の場合は、とにかく差し入れですね。せんべいとか、いろいろ持っていったり。
大久保 ははは。
伊賀 ドラマとか舞台の現場に出入りするようになると、だんだん大人になっていくというか。差し入れとかだけじゃなくて、自分の服装自体が変わってきませんか。いま、大久保さんが着てるドット(柄)のカーディガンを見て、思ったんですけど。僕も最近は、現場のワークウェア率が高くて。
大久保 自分が目立つのは違うから、モード(系)ではなくなってくるよね。ドットは無機質じゃないのに、わりとその場に溶け込みやすいデザインだと思う。
伊賀 ですよね。
大久保 大昔は、イタカジとか着てたけど。
伊賀 アルマーニ時代の大久保さんも好きでした! オールバックっぽい、撫でつけた髪型の頃、ネクタイのノットもめちゃくちゃ小さくてカッコ良かったな。
大久保 伊賀くんにもモード時代はあったの?
伊賀 アシスタントから独立したばっかりの頃は、初期の「NUMBER (N)INE」とかは「完全に俺のための服だ」って気分でした(笑)。
大久保 初期の「NUMBER (N)INE」は良いよね。そこから、どんなタイミングで脱モードになったんだろう。
伊賀 舞台とか映画の現場に出入りするうちに、自意識の在り方がだんだん変わっていったんだと思います。役者でもレギュラーの制作スタッフでもない人間が、舞台とか映画の現場にノースリーブのジャケットで出入りして、それで誰より目立つみたいなのは、まあ、カッコ悪いじゃないですか。そうなると結局、ツナギとかワークウェア。
大久保 今日のツナギも雰囲気あるね。
伊賀 これは、「Engineered Garments」のツナギです。
後編へつづく
取材・文/山田傘 撮影/高木陽春
『The Stylist: 伝説のスタイリスト 大久保篤志の人生と仕事論』(小学館)
大久保 篤志
2026/5/152420 円(税込)256ページISBN: 978-4093898508伝説スタイリスト大久保篤志の人生と仕事論 木村拓哉、真田広之、勝新太郎から木梨憲武まで……45年のキャリアを誇る〈伝説のスタイリスト〉が垣間見たスターたちの舞台裏と〈原宿カルチャー〉のリアルがここにある。 矢沢永吉やBOØWY、ヨウジヤマモト()を手がけた80年代、サザンオールスターズから小室ファミリー、Mr.Childrenとサヨナラした90年代。ドラマ『プライド』から始まる木村拓哉とのタッグ、緒形拳との最後の仕事も忘れがたい2000年代。 70歳となった今もなお、市川團十郎や葉加瀬太郎、相葉雅紀(嵐)が絶大な信頼を寄せるスタイリスト・大久保篤志の破天荒すぎる人生劇場!

