ハンジ・フリック監督就任2年目のバルセロナは、ラ・リーガとスーペルコパ・デ・エスパーニャの2連覇を達成し、昨シーズンの国内3冠と合わせ、2シーズンで5つのタイトルを獲得した。一方で、コパ・デル・レイ準決勝で敗れたアトレティコ・マドリーに、チャンピオンズリーグ(CL)でも進路を阻まれ、ベスト8で敗退。これで欧州の頂点から11年間遠ざかる結果となった。
若いチームは、欧州最高峰の舞台を見据えたとき、何が欠け、何をなすべきなのか。 フリック監督は、「私たちには今後数年間にわたって戦える素晴らしいチームがある。しかし、移籍市場に向けて決断を下さなければならない。正しい決断をだ。愚かな真似は許されない。完璧な決断でなければならない」と補強の必要性を訴えた。現地で大きな議論を呼んでいるのが、この「愚かな真似」という言葉だ。
カタルーニャを拠点とするスポーツ紙『SPORT』のジョアン・マリア・バトレ氏は、その真意を汲んで次のように論を展開している。
「就任からの2シーズンにおいて、フリック監督はクラブの経済状況が大型補強を阻んでいる現実を受け入れ、チームを再構築してきた。他のメガクラブのような選手層の厚さはなく、カンテラの若手と限られた既存の戦力の質を巧みに操りながら舵取りを行なってきた。その功績は計り知れない。しかし、頂点を目指し、巨万の富を擁するパリ・サンジェルマン、マンチェスター・シティ、レアル・マドリーといったクラブとも対等に渡り合うためには、数は少なくても、ビッグネームの獲得が必要で、資金が乏しい以上、金をドブに捨てるような行為は許されない。指揮官が直近の記者会見で警告した通り、愚かな真似は絶対に犯してはならない」
この警告には、人員整理における実効性も含まれる。今シーズンはイニゴ・マルティネスの穴埋めに苦しみ、フェルミン・ロペスの売却話には指揮官がストップをかけた。資金調達のためにアレハンドロ・バルデ、ジュル・クンデ、ロナルド・アラウホといった選手の名前さえ売却候補に挙がる現状において、放出と残留の選別は慎重かつ大胆に行なわなければならない。
一方で、市場での節度を求めるのがクラブOBのカルレス・レシャク氏だ。「強化部の言うことに口を挟むつもりはないが」と前置きしたうえで、退団するロベルト・レバンドフスキの後釜となる9番の補強について釘を刺す。 「フェラン・トーレスは非常にうまくやっている。バルサの歴史において、メッシ、マラドーナ、クライフ、ロナウジーニョ、ロマーリオ、ロナウドら誰もが記憶に留める前線のクラックが存在したのは事実だ。しかし、彼らほどのネームバリューはなくとも優れた仕事をする選手も存在しており、手元にない資金を費やしてまでより良い何かを追い求めるのであれば、そうした選手たちを過小評価すべきではない」
ピッチ上の戦術面に目を向ければ、バルセロナ界隈で絶大な信頼を得るジャーナリスト、リカルド・トルケマダ氏は、CL制覇に固執するあまり現在の歩みを止める危険性を説く。 「道筋は、主導権を握る戦い方、リスクを冒す姿勢、攻撃的な配置、そして飽くなき競争心という、フリック監督のフットボールを通じて示されている。チームは一日が経過するごとに、より大きな舞台への備えを整えていくはずだ。今のバルサはラミネ・ヤマルをはじめ10代後半から20代前半にかけて素晴らしい若手が揃っている。成熟は安定をもたらし、経験は知見を与える。もしバルサがこの道から逸れなければ、すべては自然な成り行きとして手に入るはずだ。フットボールを進化させるのは義務だが、特異性や帰属意識は、決してCLの成功からのみもたらされるものではない。その誘惑は避けるべきだ。それはプロセスを長引かせるだけに過ぎない」
戦術アナリストのアルベル・ブラジャ氏は、この若いチームが宿す魅力を認めつつ、組織を大人の集団へと脱皮させる必要性を指摘する。 「フリック監督のバルサは、いま思春期にあり、成人することへの拒絶を示している。それは内面から湧き上がる感情、思春期特有の制御不能な衝動の中に存在している。クラブにとっての挑戦は、その純真なエネルギーを維持しながら、フットボールをより制御可能なものへと変えるための忍耐と、大人の振る舞いを加味することだ。忘れてはならない。バルサはまたしてもCLを逃した。しかし、彼らにはこのチームがある。世界を見渡しても、他のクラブにはそれがないのだ」
ビッグイヤー奪還への渇望から、ファンの間ではビッグネーム獲得を望む声が鳴り止まない。しかし今、首脳陣が最も肝に銘じるべきは、目先の成果を焦って自壊の引き金を引かないことだ。フリック監督が今夏の補強に関して発した言葉の重みは、これからのバルサが進むべき針路を明瞭に示している。
文●下村正幸
【動画】クラシコ勝利に導いたふたつのゴラッソ!
【記事】「それでも何かを起こすかもしれない」日本代表のW杯メンバー発表、海外ファンも大注目「ミトマがいなくても、やっかいな存在になる」「ナガトモは信じられない」
【画像】日本代表W杯メンバー決定! 久保建英、堂安律、中村敬斗、鎌田大地、上田綺世、伊東純也、佐野海舟、伊藤洋輝、鈴木彩艶ら26人の顔ぶれ

