まさか、兄弟そろって大相撲五月場所の千秋楽(5月24日)に、「変化」で勝ち星を挙げるとは…。甲山親方を父親に持つ、幕内・藤ノ川と幕下優勝を飾った碇潟の“齋藤兄弟”である。
まず、兄の藤ノ川は立ち合いから勢いよく向かってきた若元春を素早くかわした。藤ノ川は今場所の番付が前頭筆頭ながらも身長177センチ、体重121キロの小兵力士。角界きっての怪力力士相手だけにまともに組むのは分が悪いと判断したのだろうか。叩き込みで勝利して星勘定は7勝8敗。来場所の三役昇進こそ逃したが、番付を大きく下げるのを防いだ。
弟の碇潟は幕下優勝決定戦で幕内経験者の天空海を相手に素早く動いてはたき込んだ。こちらも身長174センチ、体重126キロの小兵力士。今場所の幕下優勝決定戦は6勝1敗で並んだ7人によるトーナメントとなった。スポーツ紙デスクが振り返る。
「卑怯」ではなく「ワザ師」と呼ばれる
「初戦の相手は大森。昨年の全日本相撲選手権大会で準優勝した“男前ルーキー”が得意としている右手上手を取られれば、そのまま投げられたのでしょうが、逆に碇潟が右を刺した状態で一方的に吊り上げて勝利しました。続く、夢道鵬には立ち合いから顔面に突っ張りを入れられるも上手に体を入れ替え、その勢いのままに相手の体を土俵外に押し出してしまいました。天空海との取り組みは完全に意表を突いた“妙技”でした」
碇潟は取り組み後のインタビューで、「天空海さんとやるなら、2日前から立ち合いを決めていて、絶対に決まるだろうなと思った」と笑顔だった。
立ち合いの「変化」は横綱、大関や大型力士がやると相撲ファンから「卑怯」だとバッシングの対象になりかねない。一方で、小兵力士の場合は「ワザ師」だと称賛の声が飛ぶ。いわば「変化」は小兵力士に許されたものとも言えるだろう。これからもライバルの意表をついて土俵を盛り上げてほしい。
(五代晋作)
平成ひとケタ生まれのゆとり世代。プロ野球や大相撲をメインにスポーツを取材する。密かなライフワークは日本の映画&ドラマ鑑賞。動画配信サブスクが手放せない。

