
「泣き言を言いながらプレミアから去っていくよう」ウェストハムの2部降格が決定。英国人記者が感じる危機感「クラブの未来を大きく変えてしまう」【現地発】
5月24日、私はプレミアリーグ最終節のウェストハム対リーズのゲームを取材するため、前者の本拠地ロンドン・スタジアムを訪れた。
プレミアリーグでは今週のミッドウィークにアーセナルのリーグ優勝が決まった。一方で、今回の最終節では、もうひとつの大きなテーマがある。18位ウェストハムと17位トッテナムによる残留争いだ。
長年、イングランドのフットボールを見てきた私は、降格争いが嫌いではない。もちろん、当事者のクラブやそのファンにとっては悪夢以外の何物でもないだろう。しかし、優勝争いや欧州のカップ戦出場争いに絡めないクラブにとって、シーズン終盤の1試合1試合に“意味”が宿るのは、この残留争いなのである。
中位で終わるシーズンに高揚感はない。だが、降格争いには極限の緊張感がある。プレミアリーグで、本当の意味での生き残りを懸けた戦いとなるのだ。
もし降格すれば、その影響は計り知れない。かつてのプレミア王者レスターが3部にまで転落した姿を我々は目撃している。降格は単なる“カテゴリー変更”ではない。クラブの未来を大きく変えてしまう。
選手たちは移籍できる。しかし、クラブで働くスタッフはそうはいかない。試合運営やメディア対応に携わるスタッフの姿を見るたびに、来季には彼らが職を失っているかもしれないという現実が頭をよぎった。降格は、多くの人の人生をも変えてしまうのだ。
この日、ホームで戦うウェストハムのファンは圧巻の声援でチームを迎え入れた。私の記憶では、ここ数年で最も大きなチャントだった。だが、肝心の選手たちのパフォーマンスは、その期待に応えるものではなかった。
前半はスコアレスで終了。さらにハーフタイムには、トッテナムがエバートンを1-0でリードしているという情報が場内に伝わる。スタジアムの空気は一気に重くなった。
後半に入っても、ウェストハムに“降格寸前のクラブ”らしい必死さが見えない。私には、まるでプレミアから泣き言を言いながら去っていくチームのように映った。
それでも65分、タティ・カステジャノスのヘディング弾で先制すると、ロンドン・スタジアムはようやく熱狂に包まれる。
さらに78分、キャプテンのジャロッド・ボーウェンが追加点。ロスタイムにはカラム・ウィルソンもゴールを奪って3-0で快勝。そしてファンの視線はトッテナムの試合へ向けられていた。しかし、トッテナムもそのまま1-0で勝利。この瞬間、ウェストハムの降格が決まった。
もちろん、この日の結果だけが原因ではない。問題はシーズンを通して続いた低調なパフォーマンスそのものだ。
ファンの中には「チャンピオンシップ(イングランド2部)のほうが勝てる試合が多くて楽しい」と前向きに語る者もいる。確かに、今季プレミアリーグで味わった失望を思えば、そう感じる気持ちも理解できなくもない。
だが、私はそうは思わない。ウェストハムはプレミアにいるべきクラブだ。そして、このロンドン・スタジアムは、本来、もっと大きな舞台の熱狂に包まれているべき場所だと信じている。プレミアへの早期復帰を願っている。
文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)
著者プロフィール
スティーブ・マッケンジー/1968年6月7日、ロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースでプレー経験がある。とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からのサポーター。スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝した。現在はエディターとして幅広く活動。05年には『サッカーダイジェスト』の英語版を英国で出版した。
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