大相撲夏場所は12勝3敗同士の優勝決定戦となり、小結・若隆景が25場所ぶりの賜杯を手にした。千秋楽は3敗の霧島、若隆景に加え、義ノ富士など平幕5人が優勝の可能性を持って迎えた大混戦が、懸賞が過去最多の3563本となった一因だろう。
「今年の初場所が過去最多でしたが、それを208本も上回りました。11日目に掲出された314本が、1日の本数としては最多。入場券は15日間、完売の札止めでした」(スポーツ紙記者)
その懸賞でドタバタがあったのは、12日目の5月21日だった。大関・琴桜の休場に伴い、美ノ海との一番にかけられていた懸賞26本のうち、5本が取りやめに。残り21本が「琴勝峰×霧島」「藤星雲×熱海富士」などにかけ替えられることになった。
この日は朝乃山も休場し、琴栄峰との一番にかけられていた懸賞もかけ替えや取り止めが発生。係のスタッフは大わらわだった。
「懸賞が増え、忙しくなりました。その上、休場によるかけ替えまで発生したとなると…」(前出・スポーツ紙記者)
懸賞の作業場は、西花道近くの升席下にある。主に呼び出しの若手が担当しているのだが、その人数は4人。キャリアの長い者が指示役となり、懸賞旗を「持ち帰り」「順番指定」「色指定」に分けて土俵を回る。
懸賞を担当する呼び出しによってやり方が違う
「持ち帰り」とは、懸賞主が複数の取組にかけているためにまた使うもの。「順番指定」はひとつの取組に企業が商品PRでかけており、「この商品が最初で、2番目はこれ。3番目は…」と出番順が決まっている。「色指定」は複数の取組にかけた懸賞主による、デザインの異なる懸賞旗のこと。「この取組にはこちらの色のもの。その次に使う色は…」との指示がある。
日本相撲協会関係者が解説する。
「懸賞を担当する呼び出しによって、やり方が違うんです。あらかじめ用意しておく呼び出しもいれば、あえて直前で用意する者もいます。指示役になった呼び出しにしても、指示に徹するタイプもいれば、自分で土俵を回った方が早いと言う者もいます」
ただでさえ忙しいのに、かけ替えまで発生したのだから大変だ。当然、そのかけ替えられた懸賞旗にも「順番」「色」の指定がある。失敗は許されない。
土俵裏が大喧騒となった12日目、琴栄峰が不戦勝で勝ちがつき、いったんは2敗で霧島と並んでトップに立った。12日目が千秋楽への大混乱につながった、と言えそうだ。懸賞の数が増えるのはいいことだが、場所途中でのケガは多方面に影響を与えるのだった。
(飯山満/スポーツライター)

