北海道旭川市の橋の欄干から当時17歳の女子高校生を川に転落させ水死させたなどとして殺人、不同意わいせつ致死、監禁の3つの罪に問われた同市の無職、内田梨瑚被告(23)の裁判員裁判が5月25日、旭川地裁(田中結花裁判長)で始まった。
内田被告は監禁罪については認めたものの、殺人ついては「殺意はなかったし、橋から落としていない」と否認。不同意わいせつ致死については「服を脱がせたことと落下して死亡したことに因果関係はない」と罪状の死亡に関わる部分を否認した。
「旭川のズブズブ感が出ていておかしな街だなと感じて…」
この事件を巡っては、内田被告が舎弟扱いしていた共犯の女(21)が既に服役中(懲役23年)で、主犯の内田被告が殺害に直接関与していたことを証言していたことから注目を集めていた。
女は事件当時は未成年だったが、旭川地検が改正少年法に基づき起訴時に「小西優花」という実名を公表している。内田被告の公判にはこの小西受刑囚に加え、女子高生を監禁していた車に同乗していた少年Xと少女Y、さらに内田被告の母親も証人尋問に出廷する。
午前10時半の開廷に合わせ、同8時半から始まる傍聴整理券の交付のために朝早くから大勢の人が集まった。一般傍聴席23席に対して傍聴希望者は313人。傍聴希望者たちの思い思いの声を聞いた。
「車で1時間半かけて札幌から来ました。出身が旭川なので傍聴したいと思いました。裁判では、できる限り真実が明らかになることを願っています」(札幌市在住・30代女性)
「姉と一緒に来ました。裁判の傍聴は初めてです。本当に凶悪で残忍な事件が地元で起こったことに衝撃を受けたので。被告には、はっきりと自分の罪を認めてほしいと思います」(旭川市在住・30代女性)
「車で1時間かけてきました。世間を賑わせた事件なので、傍聴したくて『舎弟』の裁判の時にも6回並んだんですが1回も当たらなくて、今日こそはという気持ちです。
私はカヌーをやっていて、神居大橋の下の石狩川を通ったことがありますが、落ちたら這い上がるのは困難な急流の難所です。今回の裁判で、真実に少しでも近づけたら良いなと思います」(美瑛町在住・70代男性)
「この事件は惨すぎます。一人の女の子の一生と、自分の一生を無駄にしていますから。被告が妻子持ちの警察官の不倫していたということも、旭川のズブズブ感が出ていて、おかしな街だなと感じます。
バックに警察がついているので、気が大きくなったんでしょうね。たった一枚のSNS上の写真が原因で起きたこともあり、SNSの怖さも明らかにした事件だと思います」(旭川市在住・50代女性)
「どう落とし前つけんの」「じゃあ家族ごとつぶしていいの」
多くの人が注視する中、午前10時26分に入廷した内田被告は白色シャツに黒色スラックス姿で、黒髪を後ろでお団子結びで束ね、口元は白いマスクで隠している。
約170センチの長身でほっそりとしており、小西受刑囚の裁判の証人尋問の時に見せた鋭い視線は影を潜め、表情からは長期の勾留による疲労を感じさせた。
被害者遺族関係者席に座る女性の手元に持っていたピンク色の風呂敷は写真立ての形に膨らんでいた。遺影を手に傍聴に臨んだことを察知した傍聴席は、緊張感に包まれた。
裁判員に続いて両陪席を従えた裁判長が入廷し、開廷を宣言。証言席に起立を促された内田被告はマスクを取って傍聴席の遺族に一礼、本籍地や職業などの確認を求める裁判長の人定質問に「はい」と消え入るような声で答えた。
検察官が朗読した起訴状によると、内田被告は小西受刑囚らと2024年4月18日深夜から同19日未明にかけ、当時17歳だった留萌市の女子高生Aさんを車に監禁して暴行、裸にして動画撮影などをしながら旭川市神居古潭地区の神居大橋の欄干に座らせて「落ちろ」「死ねや」などと暴言を浴びせて石狩川に転落させ、溺死により殺害した。
罪状認否で内田被告は「私に殺意はありませんでしたし、橋から落としてもいません。その他残りについては、弁護人にお任せします」と証言。弁護人は監禁については争わないとしたものの、不同意わいせつ致死については「わいせつ行為と死亡の因果関係について争います」とした。
検察側の計8項目に及ぶ冒頭陳述の要旨は以下の通りだ。
【1 事案の概要】
被告と他3名はAさんが被告人の画像をSNS上に無断で掲載したことに因縁をつけて、車に乗せ、助けを求めたり逃げようとしたAさんを暴行して4時間にわたって監禁した。
被告は小西受刑囚とAさんを全裸にさせて欄干に座らせて謝罪している様子を動画撮影するなどわいせつな行為をした。被告らを極度に畏怖していたAさんに殺意をもって、再度欄干に座らせ暴言を浴びせ、何らかの有形力を行使し、直下を流れる石狩川に転落させた。
【2 事件関係者の関係性】
小西受刑囚は当時19歳、Xは当時16歳の男性で無職、Yは当時16歳の女子高校生だった。小西受刑囚は以前、自身の交際相手とのトラブルを被告に仲裁してもらったことで被告に恩義を感じていた。X、Yともに被告は2024年4月に知り合い、YとAさんはSNS上のつながりがあった。
【3 監禁に至る経緯等】
2024年4月18日午後8時31分ころ、AさんはSNS上で掲載されていた被告がどんぶりから箸で麺を持ち上げている画像を転載した。Yからの連絡で無断使用を知った被告はSNSを使用して、Aさんから示談金として50万円の支払いを要求。
Xに暴力団を装わせてAさんに「どう落とし前つけんの」と電話で脅させ、自らも「じゃあ家族ごとつぶしていいの」と脅迫。その後、Aさんと留萌市内で会う約束をし、午後10時18分頃、軽自動車にXを乗せて旭川市内を出発した。
【4 監禁の犯行状況(コンビニ到着まで)】
午後11時37分頃、留萌市の道の駅で合流したAさんが現金を持っていなかったことに激昂した被告は、車内でAさんの携帯電話を没収し、車外に逃げ出そうとしたAさんの顔面を殴打。
小西受刑囚に連絡して口止めの誓約書を用意させたうえ、旭川市内の小学校の駐車場で同19日午前1時21分ごろ、Aさんに土下座させ、謝罪する様子を携帯電話で動画を撮影。同2時33分に小西と合流、その後、求めに応じてXを帰宅させた。その間、車中で小西受刑囚とともに、Aさんを脅してアルバイト先を自身の携帯電話にメモさせた。

