プレミアリーグ最終節で、崖っぷちに立たされていた名門トッテナムが辛うじて生き残った。ホームでエバートンを1-0で下し、勝点2差でウェストハムを上回って17位の座を確保。クラブ史上屈辱的とも言える降格危機を、文字通り最終日に回避した。
米スポーツ専門チャンネル『ESPN』は、「トッテナムが、悪夢のシーズンの末に降格を回避」との見出しで、この異常事態を詳報。「トッテナムはようやく目を覚ました。夢遊病のように降格の崖へ向かっていたが、ロベルト・デ・ゼルビ監督とジョアン・パリーニャがチームを現実に引き戻した」と綴り、後者による42分の決勝点がクラブを救ったと伝えた。
しかし、同メディアは単なる美談では終わらせていない。昨季のヨーロッパリーグ(EL)制覇後、アンジェ・ポステコグルー退任、トーマス・フランク招聘、2億2000万ポンド(約473億円)超の大型補強などを経ながらも、再び17位に沈んだクラブの迷走を厳しく批判。「クラブ幹部はシャンパンではなく、ミネラルウォーターを飲みながら、ここ数年の失敗を徹底検証すべきだ」と断じた。
実際、フランク政権も2月には崩壊。その後に就任したイゴール・トゥードルも「火消し役」として迎えられながら、「火を消すどころかガソリンを注いだ」と酷評され、わずか44日、7試合、勝点1で解任された。そして緊急登板したのが、デ・ゼルビ監督だった。
英国の日刊紙『The Guardian』によれば、このイタリア人指揮官は試合後、「これは私のキャリアで最大の成果だ」と語ったという。「ブライトンでのEL出場も素晴らしかったし、マルセイユで2位になったのも大きな成果だ。しかし今日こそ、私のサッカー人生で最高の日のひとつかもしれない」とコメント。「愚かな人間は、過去を忘れる。しかし、価値のある賢い人間は忘れない。我々は、この失敗から学ばなければならない」と強調した。
さらに、「休暇に行く時間はない。今夜から、いや明日から再建を始める」と宣言。「10~12人は十分に戦える選手がいる。しかし、さらに“ファーストレベル”の選手を加えなければならない。我々はトッテナムであり、こんな苦しみ方をしてはいけない」と、補強の必要性にも踏み込んでいる。
一方、クラブ専門サイト『HOTSPUR HQ』は、この“奇跡の残留”を支えた功労者を選定。筆頭に挙げたのは、当然ながらデ・ゼルビ監督であり、「彼はチームの空気を完全に変えた。臆病なライオンになっていたベテランたちを再び“殺し屋”へ戻した」と絶賛。また、最終節で圧巻のパフォーマンスを見せたペドロ・ポロについては、「再び『スパーズ』の魂になった」と評価した。
決勝点奪取のパリーニャについても、「必要レベルの絶対的レギュラーではないかもしれないが、走り、戦い、重要な局面で結果を残す、こういうキャラクターは極めて貴重」と称賛。さらに、マティス・テル、ロドリゴ・ベンタンクールらも残留の立役者として挙げられている。
しかし、安堵感の一方で、クラブ内部には強烈な危機感も漂っている。『ESPN』によれば、DFミッキー・ファン・デ・フェンは試合後、「シーズン最終戦で残留争いをしているなんて受け入れられない。このクラブには信じられないほど素晴らしい選手たちがいる。最終日までもつれ込んだこと自体が恥ずかしい」と吐き捨てた。
デ・ゼルビ監督も、「私はこのクラブの苦しみを終わらせたい」と語り、「我々は11ポイントを7試合で積み上げた。選手たちは素晴らしいスピリットを見せた」と一定の評価を与えつつ、「来季はトップレベルのチームを作らなければならない」と改革を誓っている。
英国公共放送局『BBC』の論調は、さらに厳しかった。「スパーズは屈辱を回避したが、歓喜はすぐ怒りへ変わる」との見出しで、「『残留だ!』という、本来は弱小クラブのための歌をトッテナムが歌う光景は、クラブ全体に深く刻まれるべきだ」と皮肉を込めた。
さらに、「EL優勝は、昨季の亀裂を覆い隠していただけだった」と指摘。ヴィナイ・ヴェンカテシャムCEOやヨハン・ランゲSDら経営陣の責任、トゥードル招聘の失敗などを列挙し、「豪華なスタジアム、熱狂的サポーター、チャンピオンズリーグからの収入を持つクラブがなぜ、ここまで落ちたのか。その答は『悪い決断』だ」と断罪している。
その裏で涙を飲んだのが、ウェストハムだった。リーズに3-0で快勝しながら、トッテナム勝利によって降格が決定。『The Guardian』紙は、「これは執拗な経営失敗の必然的結果だった」と厳しく批判した。
同メディアは、「あなた方は我々の魂を、こんな場所のために売った」と歌うサポーターのチャントを紹介し、「ウェストハムは、自分たちが何者になろうとしていたかを忘れてしまったクラブだ」と断言。さらに、「プレミア残留争いとは、単に降格回避ではなく、『ロンドンで最も経営が酷いクラブ』の称号を避ける戦いだった」と辛辣な言葉を並べ、「なぜ降格したのか? 答は単純だ。容赦ない経営失敗、資源の浪費、低レベルな経営陣によるものだ」とし、デイビッド・サリバン会長ら首脳陣に矛先を向けた。
『BBC』は、今後の「ハマーズ」について詳細に分析。2023年のカンファレンスリーグ優勝からわずか3年での降格劇に、「新時代の幕開けに見えたものは幻想だった」と指摘している。
クラブは声明で、「我々はサポーターに応えられなかった。十分ではなかった」と謝罪。ただし、現実は厳しい。最新決算では1億400万ポンド(約224億円)の赤字を計上しており、降格で収入は50~60%減少すると見られている。
さらに、主将ジャロッド・ボーウェンの去就、マテウス・フェルナンデスの売却、大量の“高給取り”の整理など、難題は山積みである。同メディアは「プラハで歓喜していたサポーターたちが想像もしなかった挑戦が始まる」と締めくくっている。
構成●THE DIGEST編集部
【画像】北中米W杯 出場48か国決定! ベルギー、スペイン、フランス、アルゼンチン、フランス、イングランド…グループG~Lの24チームを一挙紹介!
【画像】北中米W杯 出場48か国決定! メキシコ、韓国、カナダ、ブラジル、アメリカ、ドイツ、オランダ、日本…グループA~Fの24チームを一挙紹介!
【画像】ロナウド、カーン、ベッカム、カンナバーロ、イニエスタ、モドリッチ、C・ロナウド、エムバペ、メッシ――サッカーW杯、歴代スター選手特集Part.2(2002年大会以降)

