
第166回直木賞と第12回山田風太郎賞をW受賞し、「このミステリーがすごい!」第1位ほか史上初4大ミステリー大賞を制覇した同名小説を映画化した本作。主人公となるのは、暴虐な織田信長のやり方に反発し、籠城作戦を決行した荒木村重(本木)。村重は妻の千代保(吉高)を心の支えに、城と人々を守ろうと苦心していたが、そんな時、城内である少年が殺される事件が発生。村重は牢屋に囚われた危険な軍師、黒田官兵衛(菅田)と共に謎の解決に挑む。

キャスト陣は、城型にくり抜かれたパネルから笑顔で登場。会場が熱気に包まれるなか、荒木村重を演じた主演の本木は「いよいよ公開まで、ひと月を切りました」と声を上げ、「苦労した撮影の記憶が、徐々に薄れていく日々ではありますが、いまはただただ、この作品と黒沢監督に出会えたことの感謝が日々膨らんでおります」と晴れやかな表情を見せた。軍師、黒田官兵衛を演じた菅田は、地下牢に幽閉された役を演じたとあって「こんなに気持ちいい外で」と野外イベントへの喜びを吐露。「(現場では)ほぼ本木さんとしか会っていなかったので、豪華な皆様と会えて、僕も“キャー”という気持ちでいっぱいです」と楽しそうに語った。

荒木村重の妻・千代保を演じた吉高は、「うれしい!」と満面の笑み。すると村重の側近として家臣たちを束ねる荒木久左衛門役の青木も「うれしい!」、村重に忠義を示す腹心である乾助三郎役の宮舘も「うれしい」と続いて笑いを誘うなど、冒頭から会場は明るいムードいっぱい。宮舘は「今日という日を楽しみにしてまいりいました。お互い、楽しみましょう」と力を込めた。

豪華キャスト陣と映画を作り上げた黒沢監督は「初めて時代劇を撮りました」と切り出し、「映画は、大勢の人間で作るものです。スタッフ、キャストのみんなが集まって作るものですが、今回ほどキャストの力がものすごく大きかった映画は初めてでした」と告白。「時代劇は、俳優の奥の方に小さく映っている人まで、みんなが衣装を着て、メイクをして、その時代の人になりきって。その時代に生きた、ある人間の存在感を表さないと成立しない。非常に難しい、でも楽しい映画作りでした」と充実感を握りしめながら、「画面の隅々まで、みんながある時代の、ある人間を精一杯に表現してくれました。それがこの映画に力を与えてくれました。皆さん、本当にありがとうございました」とキャスト陣に心からのお礼を述べた。

第79回カンヌ国際映画祭のカンヌ・プレミア部門に選出され、本木、菅田、青木、宮舘が、黒沢監督と共に現地入りを果たしたことも話題となった。
本木は「黒沢さんのヨーロッパでの人気はすまじいものがある。ものすごく、信頼度と期待度が高い。それに支えられて、私たちも堂々と参加できた」としみじみ。「外国で観ると、歴史的な建造物の美しさ、黒沢さんの長回しなど独特なカメラワークがより美しく、印象に残った」と同時に、「お客さんが惹きつけられているのを肌で感じた」と特別な熱気を浴びたという。「すべてが貴重な経験。『黒牢城』にとって、ものすごくいいスタートが切れた」と感激しきりだった。

菅田も「日本の映像や景色、建造物がバッと映った時に、お客さんが息を呑む空気が伝わってきた」と同調。「すごく誇らしい気持ちになった。細かいお芝居にも笑いが起きたり、息の音が聴こえてきたり、いろいろなものを超えて伝わっているのがうれしかった」と手応えを口にすると、青木も「監督の熱烈なファンがいて、その空気を一身に浴びた。拍手のなか着席させていただいて、観終わった後も拍手で迎えていただいた。最高の経験でした」と感慨を噛み締めつつ、この日も公式ショップで購入したカンヌ映画祭のブローチや靴下を身につけてきたと、笑顔でグッズをお披露目していた。

宮舘は、カンヌのフォトコールでさまざまなポージングを披露して会場を沸かせ、大きな注目を集めた。「僕も初めて行かせていただいた。日本から行くからには『黒牢城』の魅力、そして日本映画のすばらしさ。そして監督とキャストの方々と共に存分にアピールしに行くという意味でも、微力ながら力を出したつもりではあるんですが。どうだったんでしょうか…」と宮舘が心配すると、本木が「想定外の爪痕を残しましたよね!あれがあって、世界中に『黒牢城』が印象づいた」と大絶賛。「助三郎!せーの!」と声をかけて宮舘と一緒に華麗なターンを繰り出すひと幕もあり、これには会場も大盛り上がり。菅田が「練習した?なんでそんなにそろっているの?すご!」と驚くなか、宮舘は「まさか一緒にターンを…」と感無量の面持ちを見せた。さらに本木は「助三郎!せーの!」と勢いづき、もう一度、宮舘と一緒にターン。観客から、拍手と歓声を浴びていた。

また「心を読め」という本作のコピーにちなみ、「一番心が読めなかった人は誰?」という質問があがる場面もあった。

青木は「殿。本木さん」と答え、「さっきのターンだって、殿がやりますか!?心が読めないというか、心がいくつもある」と宮舘と息ぴったりのパフォーマンスを見せた本木の振る舞いにびっくり。宮舘も「本木さん」と回答し、「同じシーンを多く撮らせていただいた。その時は殿と家臣して役に入りきっているんですが、カットがかかると“舘様”って。僕のことをニックネームで呼んでくださる。ギャップがあって、いまはどっちの本木さんなんだろうと思った。心が読めない」と撮影を振り返った。本木は「本当にハートがいい」と宮舘の人柄に惚れ惚れとしながら、「監督に映画の感想を聞いた時に、最初に“助三郎、すごくよかった”と。忠誠心がすごく自然に表れていると言っていた」と黒沢監督のお褒めの言葉を紹介。宮舘は「ありがとうございます」と興奮気味に語っていた。

そして村重からの取り調べに答える事件の目撃者・雑賀下針役の柄本も「本木さん」と名前をあげた。撮影時とその合間のギャップがあることに触れつつ、「こっちでじーっとしていたと思ったら、おもむろに歩いて行って、舘様とキャピキャピ写メを撮っていたり。ミステリアス。青木さんが言った通り、たくさん心がある」と分析。「本木さん」と続いた秋岡四郎介役のユースケは、「映画ではカットされているんですが、馬で疾走するシーンがある。そこでダイナミックな落馬をされた。緊張感が走るなか、“ごめんなさぁーい!”、“すいません!”、“もう1回!”って」と周囲が心配するなか、明るい声で謝った本木に驚愕したとのこと。「その後にもう一回やったら、また落馬したんです。結構、派手な落馬を2回して、全然平気で」と裏話を明かすと、本木は「ばっさりカットだった」と苦笑いを見せていた。
取材・文/成田おり枝
