球界OB江本孟紀氏が好き放題に球界を叩き斬る月イチ連載「エモやんの月刊野球放談」。そんな江本氏も舌を巻くのが現在の阪神の強さ。今回、珍しく“ある選手”を絶賛。そして、昨年はパが圧倒した交流戦をどう占う……?(前後編の後編)
阪神首位の立役者をエモやんはこう見た
――セ・リーグはやはり阪神が強いですね! とくに髙橋遥人投手が3試合連続完封勝利を挙げるなど大活躍です。
江本孟紀(以下、同) 現時点で彼が日本ナンバー1ピッチャーだろうね。ただね、“その一年だけ日本一の球を投げていた”なんてピッチャーは腐るほどいるんだよ。大事なのはこれを継続できるかどうか。
実際、髙橋はこの6年間は故障ばかりしていて大して勝ててないでしょ。俺に言わせればケガは勲章じゃなくて恥。だからそれをこれから払拭しなくちゃいけない。
――江本さん好みの先発完投型でもありますしね。
基本、投手は完投すべきなんだけど、状況に応じて降ろすときは降ろさないと。この前の登板(5月22日対巨人戦)は7回まで引っ張って打たれてたでしょ(6回3分の2を4失点で降板)。
それまで1年間働いたことない投手がシーズン序盤で4完封していて、あの試合は7-1という展開だった。俺はその試合、ラジオの解説をやってて6回で降ろしたほうがいいってずっと言っててほぼその通りになった。首脳陣も休ませ方を考えないかんね。
――髙橋投手の何がすごい?
手離れがよくてコントロールが安定してることかな。江夏(豊)と同じで、力感なくいつでも外角低めでストライクが取れる。あとはスタミナ次第。
――打者でいうと、佐藤輝明選手も打率.381、12本塁打37打点(5月26日時点、以下同)と現在三冠王という圧倒的成績。去年までと何が違う?
インローのクソボールを振らなくなった。去年はそこを全部手を出して体が泳いでいたのが、今年は見極められるようになったのが大きい。もともといいものを持っていたのだから、投手としてはとても厄介な存在になった。このまま三冠王を獲る可能性は十分あるよ。
――もし三冠王を獲ればメジャー球団も黙ってないでしょうね。
問題はそれなんだよね。育っても結局出ていっちゃう。村上(宗隆)も向こうでホームランランキング首位だし、今なら高い値がつく。佐藤は去年オフにフロントと交渉が長引いてたから、そのあたりの契約をしっかり見直したはず。佐藤は今季が阪神ラストイヤーになるかもね。
「立石は森下以上」
――移籍といえば、NPBが国内FAにおける人的補償の撤廃を検討していることを明かしました。
人的補償なんて必要ないよ。選手は商品なんだから球団が買ったならそれまでのこと。なんで買ったほうが売ったほうに補償しないといけないのか。俺なんて(東映から南海、その後は阪神と)2回も売られてるからね(笑)。俺の年俸は大して上がらないのに。
――生え抜きを是とする風潮はありますが、江本さんのように環境が変わって花開くパターンもありますしね。
ひとつのチームにずっといるよりもいろんなチームに在籍した経験があったほうが、視野や見識が広がるから移籍は全然悪いことじゃない。
――そういう意味では辞任した阿部前監督の巨人#3の話題になりますが、巨人の監督も生え抜き至上主義を止めたほうが強くなりそうと思っちゃいます。
そうなんだよ。だから俺みたいな年寄りをベンチに入れろっていつも言ってる(笑)。
――そして、阪神といえばドラ1ルーキーの立石正広が5月19日に初出場してから、打率.402(※5月26日試合開始前時点)と絶好調です。
もしかしたら森下(翔太)よりスイングが速いかもしれんね。立石が3安打したとき(5月22日対巨人戦)にラジオ解説してたんだけど、スイングが違った。アマチュアのときにチラッと見たときからスイングが図抜けてた。
打席での順応力も高いし広角にも打てるし、すごい選手になるポテンシャルを持ってるよ。
――江本さんがここまで褒めるのも珍しいです。やはり今年も阪神が強そうですね。
阪神は3番4番5番(森下、佐藤、大山)の中軸が固まってるのが強い。2番中野(拓夢)も入れたら2~5番が固定できてる。あとの1番、6~9番はどうとでもなる。例えるなら2~5番がプレミアム席で、あとの打順は自由席みたいなもんだから(笑)。
近本(光司)がケガでいなくなっても中軸がしっかりしてるから、競争の中でいろいろな選手が試せて、その結果、立石みたいな活きのいい若手が出てきたってことでしょう。

