NASA(アメリカ航空宇宙局)は2026年5月26日(日本時間27日未明)に記者会見を行い、月面基地計画に関連する最新情報を報告しました。
最初期の3つのミッションを発表
NASAの月面基地計画はフェーズ1からフェーズ3までの3段階に分かれていますが、今回の会見ではフェーズ1の最初期の3つのミッション「ムーンベース」1〜3についての発表がなされました。
ムーンベース1は、ブルーオリジン社の無人月着陸機「エンデュランス(マーク1)」によって、月の南極地域にあるシャックルトン・コネクティング・リッジへ複数のペイロード(貨物)を届けるものです。
ブルーオリジン社はNASAのアルテミス計画で、宇宙飛行士を月面に送り届けるためのHLS(有人月着陸システム)を開発しています。ムーンベース1では、HLSでのリスク軽減のための技術実証を行います。ムーンベース1は史上初の民間資金による月着陸ミッションで、2026年秋の打ち上げを目指しています。

ムーンベース2では、アストロボティック社のグリフィン着陸機を使い、これまでで最大となる500kgをこえる商業ペイロードが月面に運ばれます。ペイロードには、月面車(LTV)のプロトタイプとなるアストロラブ社の「FLIP(FLEX Lunar Innovation Platform)」が含まれています。将来、宇宙飛行士が月面を広範囲に移動し、物資を運搬するための技術実証が目的のミッションです。着陸場所は月の南極地域にあるノビレ・クレーター。2026年末までの打ち上げを目指しています。

ムーンベース3は、月面に関する科学的理解を促進することに重点を置いたミッションです。着陸機はインテュイティブ・マシーンズ社のNova-C「トリニティ」が使われます。
主な科学ペイロードは「ルナー・バーテックス」で、月面にある「スワール」と呼ばれる周囲より明るい渦巻状の模様について調査します。スワールは、何らかの理由で太陽風の影響が及んでいない場所だと考えられており、その起源や磁気異常との関連を解明することが期待されています。なおムーンベース3での着陸場所は南極地域ではなく、月の「嵐の大洋」にある「ライナーガンマ」と呼ばれる地域にあるスワールです。
ムーンベース3はまた、国際的な協力体制を象徴するミッションにもなっており、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)やKASI(韓国天文研究院)のペイロードも搭載されます。ムーンベース3も2026年末までの打ち上げを目指しています。
民間との新たな契約も発表
会見では、民間企業との新たな契約締結などの発表も行われました。それらは将来の有人での月面活動に不可欠な移動能力や輸送インフラに関するものです。
まず、LTV(月面車)を開発する企業として、アストロラブ社とルナー・アウトポスト社の2社が選定されました。

アストロラブ社は、自社の「FLEX」アーキテクチャをベースにした車両CLV-1(Crewed Lunar Vehicle)を開発します。重量は約950kg、平坦な場所では時速約10km以上を出すことができる車両となります。自律走行や遠隔操作も可能。宇宙飛行士2名の搭乗や物資の運搬などを目的とするとのことです。
ルナー・アウトポスト社の月面車「ベガサス」は、かつてのアポロ計画の技術を継承しつつ、最新の自動運転技術を備えたものになるとのことです。時速14.5km以上での走行ができ、最長で1年間、運用が可能としています。

LTVを月面へ届ける輸送着陸機については、ブルーオリジン社が選定されました。同社の「ブルームーン」マーク1を使って、アストロラブ社やルナー・アウトポスト社のLTVを月面へ届けます。この輸送は、有人着陸へ向けた技術実証も兼ねています。
会見では、月の南極地域を調査する4機のドローン「ムーンフォール」を月まで届けるミッションに関する契約も発表されました。ファイアフライ・エアロスペース社が開発する「エリトラ・ダーク」でドローンを地球から月まで運び、月面上空50kmで放出・展開します。現時点では2028年の打ち上げが予定されています。
なおムーンフォールは、NASAのJPL(ジェット推進研究所)が開発中のミッションです。急斜面や水の氷があるとみられる永久影の場所など、ローバー(探査車)ではアクセスしにくい(アクセスできない)場所の調査などを行います。
NASAは2026年3月に、有人での月着陸を目指す「アルテミス計画」や月面基地建設への新戦略などを発表しています。それらについてくわしくは、次の記事をご覧ください。→「NASAが描く月への未来図 アルテミス計画から月面基地建設へ」

今回の会見では、地球周回軌道での宇宙船と月着陸船のドッキング試験などを行うアルテミス3が2027年半ば、有人月着陸を目指すアルテミス4は2028年に打ち上げることを目標としていることも語られました。また、月面基地に関する公式のウェブサイトが公開されたことも発表されました。その新たなウェブサイトでは、NASAの月面基地計画の詳細や最新情報を知ることができます。→「Moon Base - NASA」
NASAのジャレッド・アイザックマン長官は会見で、「アメリカは再び月へと戻ります。今度はそこにとどまるためです」と、アポロ計画以来の月への帰還が、一時的な訪問ではなく持続的な拠点構築であると語りました。月面での持続的な有人活動は、さらなるフロンティアである火星への道を切り開く準備にもなります。
(参考)
10枚の写真で振り返るアルテミス2ミッション
オリオン宇宙船で撮影された地球、月、船内画像112枚の時系列スライドショー
(参照)NASA、Moon Base News Conference (May 26, 2026) - YouTube

