玄関で渡された小さな紙袋
夕方になり、帰り支度を始めました。義母は玄関で見送りながら、ふと思い出したように小さな紙袋を取り出しました。淡い水色の紙袋で、上のほうに細い紐の結び目が見えました。「これ、お土産。家で開けてね」そう言って、義母は娘の手にそっと握らせました。娘は受け取ったまま、何も言わずにうなずきました。「ありがとうございます」と私が代わりに頭を下げると、義母は笑顔でうなずいてくれました。帰りの電車に乗ってから、娘がその紙袋をずっと握りしめていることに私は気づきました。
そして...
「お母さん、これ……」。娘が窓際の席で紙袋を私に差し出しました。中から出てきたのは、淡い藤色の合格祈願の御守り。そして二つ折りのメモ。広げると、丁寧なペン字でひとことありました。「むりしすぎないでね。おばあちゃんも、毎日応援しています」。娘は私の顔を見ずに、窓の外を見ながらつぶやきました。「あの神社、電車で2時間かかるって、お父さんが言ってた」。 玄関でこぼした本音と、握りしめていた紙袋。どちらも娘の本当の気持ちなのかもしれない、と思いました。電車のなかで、明日義母に電話をしようと心に決めました。あの御守りのことについて、ありがとう、と伝えたいから。
(40代女性・パート)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
