
「全員でチームをつくる楽しさがある」関東大学2部で奮闘する立教大サッカー部は“名門復権”を果たせるのか「好人材がうちを選んでくれるようになった」
今季、100回の節目を迎えた関東大学サッカーリーグは、1~3部までの36チームが参戦して開催中だ。今シーズンふたたび2部に復帰した立教大は、勝野洸平新監督を招請し優勝と1部返り咲きを狙う。複数のJリーグクラブでコーチなどを経験した36歳の若き指導者の下、かつての名門が輝きを取り戻せるか。
渡辺正と横山謙三は揃って日本代表監督を務め、現役時代は鈴木良三とともに東京、メキシコ両五輪に出場。鈴木保は日本女子代表を率い、ワールドカップで優勝する礎を築いた。4人とも立教大サッカー部OBにして、日本サッカー殿堂掲額者である。このほか日本代表の国際Aマッチ41試合に出場した川上信夫、同30試合の高森泰男も卒業生だ。
関東大学リーグ1部を3度制し、初優勝した1954年には全日本大学選手権との2冠を獲得。渡辺と鈴木良を擁した59年は関東大学リーグで全勝優勝を遂げ、69年度の第49回天皇杯全日本選手権では、準々決勝で3位の八幡製鉄、準決勝で優勝した三菱重工という日本リーグ(JSL)の上位勢を連破して準優勝するなど、才能豊かな選手を多数抱える大学サッカー界の強豪だった。
ところが70年に関東大学リーグで3度目の頂点に立ったのもつかの間。翌年2部に降格すると、77年には2部で最下位と不振を極めて東京都大学リーグにまで陥落し、低迷期が長らく続いた。
そこで2015年、再建を託された倉又寿雄監督が就任。Jリーグ・FC東京でトップチームの監督とヘッドコーチ、U-18監督や育成部長などを歴任し、現役時代はJSLの日本鋼管で天皇杯を制している。指揮を執って3年目の17年、41年ぶりに関東大学リーグ2部へ復帰。22年に東京都大学リーグに落ちたが、1年で戻ってきた。
20年から総監督に就いた倉又氏は「当時は監督業の傍ら、高校年代の試合を視察し有望選手の発掘にも力を入れました。新入生は当初、高体連の選手が大半でしたがJリーグの指導者にも知人が大勢いたので、少しずつアカデミー出身者も揃ってきました」と述懐する。
ただ立教大はスポーツ推薦がなく、アスリート選抜入試で3、4人が合格するくらいだという。倉又総監督は「高校の成績に英検、サッカーの技量という3つの条件をクリアした選手に声を掛け、受験してもらうやり方を今も続けています」と述べ、「それでも最近はプロ志願者が増え、好人材がうちを選んでくれるようになりました」と喜ぶ。
立教大スポーツウエルネス学部は24年3月、J3大宮アルディージャ(当時)と地域振興やスポーツ振興などで協力し合う協定を締結。今回の新監督選定については、大宮と契約を交わす勝野氏を最有力候補とし、倉又総監督が三顧の礼を尽くして合意に至った。「誠実な人柄だし、サッカーについて深く考えられる。監督は未経験だが、挑戦したいという希望があったのでお誘いしたんです」と経緯を説明する。
勝野監督は大宮ジュニアユースの一期生で、ユースを経て東洋大でプレー。卒業後は母校のコーチを皮切りに大宮U18やトップチームの各コーチを担当し、J2ヴァンフォーレ甲府のスカウト、昨季はJ3ギラヴァンツ北九州でトップチームのコーチを務めた。
複数のJリーグクラブから勧誘されたなか、立教大を選んだ決め手は何だったのか?
「Jリーグを優先して考えていましたが、立教さんからお話をいただき、監督をやってみたかったこともあり、迷った末に決めました。去年、北九州で監督が体調不良になり、私が代行で(第7節の)ザスパ群馬戦で指揮を執って勝ったんです。あの時の思いや感覚も忘れられず、チャレンジしたくなったのが理由です」
大宮の基盤をつくったピム・ファーベーク監督の参謀だった中村順コーチらの薫陶を受けたことで、今でもその精神と価値観を大事にしているそうだ。「サッカーはエラーを重ねながら修正し、チームで成長していくことが重要と教えられました」と回顧する。
就任に際しては選手らに①自己形成②志の共有③縁、という3つの提言をした。自分を知って長所を伸ばす努力を継続し、うまくなるために全員が同じベクトルを向き、ここで出会った縁を大切にしようと熱弁を振るった。良き習慣が身に付けばチーム内に規律が生まれ、サッカーを通じて勝利より大事な価値観を育むことができる、というのが新監督の哲学でもある。
現在第9節を終えて4勝5敗の暫定6位。ホームでは負けなしだが、敵地で全敗の上、悪い時間帯での失点やもったいない敗戦もある。
拓殖大戦は前半3分と後半6分、明治学院大戦は後半29、41分に失点し、前節の城西大戦は後半追加タイムのオウンゴールで敗れた。立正大戦は2-1で勝ったものの、試合終了間際に1点を返され、首位・産業能率大戦は、先制した4分後に追い付かれて計3点を失った。主将のCB吉田喬(3年・JFAアカデミー出身)は「試合の終わり方が甘い。上に行くにはここを改善しないといけません」と直面する課題を挙げる。
立教大に進んだ理由を尋ねると「高いレベルでやれるし英語もしっかり学べます。選手、指導者として海外で活躍する夢を実現するために入学しました」と説明。勝野監督については「向上心のあるメンバーが多いなか、選手思いの指導者が来てくれたのはすごくプラスになる」と笑顔でうなずいた。
背番号10のエースFW石川颯(3年・大宮アルディージャU18出身)も歓迎する。「勝野さんは自分が高校1年の時の担当コーチで、理念や考え方を理解しているのでやりやすい」と話す。サッカーと学業を両立するのが進学した理由だ。2部優勝と1部昇格に向け、「個人的には個で打開できる力を付けて怖い選手になり、組織では勝負強さが欲しい。ボールが切れた後の切り替えを改善したい」と歯切れよく話す。
前半戦は残り2試合で終了し、後期は9月23日に開幕する。勝野監督は「先手を取って主導権を握る戦いをしたい。優勝ラインは勝点43あたりだと思うので、それにはグループでもっと失点を減らさないといけない」と述べる。
倉又総監督の「どうやって強くするかをみんなで考え、全員でチームをつくる楽しさがうちにはある」との言葉が印象深い。そんな思いをチームで共有し、令和の黄金期到来へと夢は膨らむばかりだ。
取材・文●河野 正
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