MOVIE WALKER PRESSでは、映画公開にあわせて来日した、ジョン・ファヴロー監督に直撃インタビュー。伝説のクリエイターも参加したモンスター撮影の裏側や、ファヴロー監督が考えるこの時代だからこその“映画体験”の大切さを気さくに語ってくれた。
■「私たちはモンスターが大好きで、まさにモンスター映画をつくりたかったんですから!」
――ドラマシリーズの「マンダロリアン」は日本のカルチャーの影響を大きく受けていることでも知られています。今回の映画版におけるそういった要素があれば教えてください。
「ディン・ジャリンと闘う賞金稼ぎ、エンボのキャラクターはクロサワ(黒澤明)の『七人の侍』(54)に出てくる無口なスゴ腕剣士“キューゾー(久蔵/宮口精二)”をモデルにしています。エンボはアニメの『クローン・ウォーズ』シリーズ等に登場していますが、実写映画では本作が初めてですからね。みなさんもすでにご存じのように、そもそも本シリーズにはサムライ映画の影響が大きく、戦士と子どもの組合せは『子連れ狼』です。私たちも最初、ペドロ(・パスカル)にはクロサワの『用心棒』(61)を観ておいてと頼みましたから。

もうひとつ、言っておきたいのはマカロニウエスタンです。とりわけ(セルジオ・)レオーネの『荒野の用心棒』(64)、『夕陽のガンマン』(65)、『続・夕陽のガンマン』(66)の三部作。これはジョージ(・ルーカス)に大きな影響を与えていて主演のクリント・イーストウッドはボバ・フェットのベースになっています。私たちのディン・ジャリンの造形にも影響があるということです。本作を語る時は、サムライ映画とマカロニ・ウエスタン、このふたつを忘れてはダメなんです」
――本作には既成のキャラクター、シリーズで人気の高いキャラクター等はほとんど登場していません。また、驚くほどモンスターが多く、もうモンスター映画といっていいくらいだと思いました。ここまで振り切るには勇気が必要だったのでは?

「モンスター映画というのはうれしい言葉ですよ。(日本語で)アリガトゴザイマス(笑)。私たちはモンスターが大好きで、まさにモンスター映画をつくりたかったんですから!『スター・ウォーズ』のことをよく知らない新しい観客を呼び込みたかったし、これまでにない新しいアドベンチャーを見せたかった。“ベイビーヨーダ”のことはちょっとだけ知っているけど、というくらいの観客に興味をもってもらいたかったんです。その分、ストーリーはとてもわかりやすいものにして、ディテールや技術にはとことん凝ってオタク向けにしました」
――オタク向けを意識したというのは、モデルアニメーションを使ったりしたことですね?
「そうです。私はモデルアニメーションが大好きで、『エルフ~サンタの国からやってきた』(03)にも使っています。自作では常に使いたいと思っている技術なんですが、もちろん『アイアンマン』シリーズのように、そうはいかない映画もある。でも『スター・ウォーズ』にはちゃんとつながりがあります。監督として『スター・ウォーズ』がおもしろいのは、そういう伝統的な技術と最新の技術を混ぜられるところにもあるんです。同じシーンにパペットとCGIのキャラクターが共演できるのが『スター・ウォーズ』の魅力だと、私は思っていますから。それに、そういう伝統の技術を使うことによって、日本のワビサビ的な世界も表現できるのかもしれないって思うんですよ。

もうひとつは私の個人的な思い出です。私が『スター・ウォーズ 新たなる希望(エピソード4)』(77)を父と一緒に観たのは10歳くらいでした。そのときの『スター・ウォーズ』とつながることができる。『スター・ウォーズ』は私と映画を結び付けてくれた作品なので、こうやってそのシリーズに愛情を注げるなんて、本当に最高です」
――クレジットに、『エピソード4』から『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還(エピソード6)』まで、AT-ATやトーントーン等のモデルアニメーションを担当した伝説的クリエイター、フィル・ティペットの名前があったのは偶然ではなかったんですね。感動しました!
「それはよかった!彼には、ハット・ツインズの宮殿入口の左右にいた護衛ロボットのモデルアニメーションを担当してもらいました。もちろんデザインも彼です。フィルがモデルアニメーションを担当した『ロボコップ』シリーズのED209にちょっと似てるでしょ?

ほら、メイキングの映像を見せますよ(といって自身のスマートフォンの映像を見せてくれる)。これは初期段階で、どんどんレベルアップして行ったんです。フィルはなかなかタフなクリエイターなんですが徐々にノッてくれて、モデルアニメーションでは難しい、モデルと実写の人間との合成も上手にこなしてくれました。とても楽しい仕事になったし、私は大満足しています」
■「みんなで集まって話題を共有することの大切さを知って欲しい。それができるのが映画だと思います」

――本作ではディン・ジャリンとグローグーの寿命の差が話され、さらにグローグーの成長を物語るようなエピソードもありました。これからどこまでふたりの冒険を描く計画なのでしょうか?
「その辺はまだ決めていないんです。グローグーがどこまで成長するか、私にもわかりません。実のところ、そういう部分に関してはデイブ(・フィローニ/本作の製作総指揮&共同脚本を担当したルーカスフィルムの現社長)といろいろと話し合っている最中です。彼は『スター・ウォーズ』のより大きなビジョンをもっていますからね」
――本作ではマーティン・スコセッシが声優として参加しています。しかも、あなたが『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(18)で声を担当した種族と同じアルデニアンです。このキャスティングについて教えてください。

「俳優としての私は、自分が演じるキャラクターとのつながりを強く感じるタイプです。だから、そもそも大ファンで、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(13)の時役者として仕事をさせてもらったこともある私は、このキャラクターは彼にピッタリじゃないかと考えたんです。マーティンのキャラの名前は“ヒューゴー・デュラン”。私が『ハン・ソロ』で声を当てたのは“リオ・デュラン”。ふたりは親戚同士という設定にしています(笑)。もうひとつの共通点はフードトラックです。これは私の『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』(14)につながっているんですよ」
――映画をスマートフォンで観る等、エンタテインメントが個人で消費され、劇場での映画体験が薄れつつあります。そういう時代の変化も意識して本作をつくったのしょうか。
「昔は家族みんなで劇場に行っていたし、一家に一台しかテレビがなかった。だからみんなで同じ番組を観ていましたよね。しかし現在は、それぞれがスマホで楽しむ時代。とても孤立化していて、みんなで映画を楽しむという体験が特別になった印象です。おしゃべりをする時もオンラインでやったりするわけですが、やはり実際に会ったほうがいいと思いませんか?みんなで集まって、実際に話題を共有することの大切さを知って欲しいし、それができるのが映画だと、私は思います。

ロス(ロサンゼルス)には古い映画を上映している映画館が結構あって、その観客には意外なくらい若い人が多いんです。みんなでワイワイしながら映画を楽しんでいるようです。そういう状況をみると、確かに技術は日進月歩を続けていますが、人間というのは根本的にはそれほど変わっていないのではないでしょうか。例えば日本では、いまでもちゃんと伝統が受け継がれていますよね?安上がりに済ませようとか、時間を節約しようとかではなく、たとえ時間がかかってもこだわりをもって特別なものにしたいと思っている。そういうスタイルの大切さに、若い人もちゃんと気づき始めているんだと私は思っているんです。
だから私はこの映画を、みんなが集まって劇場で観たいと思ってくれるような作品にしたかった。私たちは本当に情熱を傾けて本作をつくりました。そういう想いや情熱って、やっぱりスクリーンから滲み出るんだと思うんです。だから私は、みなさんが劇場に来てくれると信じています!」
――「スター・ウォーズ」の創造主、ジョージ・ルーカスは本作をもう観ましたか?もし観ているのならどんな感想を?
「いや、まだ観てないんです。ジョージはいま、ロスにオープンするミュージアム(ルーカス・ミュージアム・オブ・ナラティブ・アート/9月22日開館予定)でとても忙しくて。でも、彼にはこんなアドバイスを貰いました。『若いオーディエンスを意識しろ。“神話”は、これから成長する若者に向けて語るものだから。彼らには、同じ間違いを繰り返さないよう先祖から学ばせなければいけない。その一方で、彼らの目を離さないようエキサイティングな要素もマストだ。ストーリーはシンプルにまとめ、教訓は普遍的なものがいい。そして、メッセージは“希望”ということを忘れるな』。

ちっちゃくて脆そうであっても強い心をもっていればデス・スターだって壊せる、それが『スター・ウォーズ』です。私は本作で危険な世界を描いたわけだけど、そこに大きなメッセージを込めたつもりです。ジョージから伝授された“希望”をね!」
取材・文/渡辺麻紀
