
新宿歌舞伎町で育った新宿中央署の新人刑事・相葉四郎(水上恒司)。かつて暴走族の総長だった過去を持ち、その血の気の多さからたびたびトラブルを招いていた。そして、国際指名手配犯の村田蓮司(福士蒼汰)とキム・フン(オム・ギジュン)の行方を追う韓国警察庁の刑事チェ・シウ(ユンホ)。出会ったばかりの2人は反発し合うものの、村田とキムが歌舞伎町に潜伏しているとの情報を受け、急きょタッグを組んで捜査に乗りだす。やがて彼らは、集団強盗事件を発端に、武闘派ヤクザと歌舞伎町最大級のホストグループによる大規模な抗争へと発展していく事態に直面。
本作で初共演を果たした水上とユンホ。歌舞伎町を舞台に巨悪へ立ち向かうバディを熱演した2人が、互いの印象をはじめ、役づくりのために意識したことや撮影現場でのエピソード、息の合ったアクションシーンの裏側について語った。
■「今回はこれまでとは違うタイプの役だったので、従来のイメージを打破したかったです」(水上)

――お2人の共演は初めてだと思いますが、それぞれの印象を教えてください。
水上恒司(以下、水上)「いまの俳優業って、みんないい人ばかりで、それがベースであるということはあるんですけど、それを考えてもずば抜けていい人だと思います。本当に細かくスタッフさんやエキストラさんやキャストにも気を配られていたし、通行止めで通りすがる人に対しても細やかな配慮があって、そういう記憶を一番に思い出します」
ユンホ「ちょっと恥ずかしいですね。ありがとうございます。水上くんは、初めてお会いしたときは真面目な感じだったんですけど、撮影に入るとスイッチが入ってタフになります。そのギャップがすごくてどっちが本物なんだろうと思うくらい、切り替えがすごかったです。水上くんも周りのスタッフさんに対してすごく優しいし、決して上からじゃないんですけど、20代なのに仕事のことをちゃんと考えていました。すごく頼もしいなと思いましたし、水上くんが主人公を演じてくれて本当によかったです」

――今回、お2人共に、演じられた役が普段の印象と違いますよね。役のルックに関しては、アイデアを出されたんでしょうか?
水上「僕に関しては、役者としてこれまで様々な役をいただいてきましたが、今回はこれまでとは違うタイプの役だったので、従来のイメージを打破するために“鬼剃り”をしようということを提案しました。結局採用されなかったんですけどね。結果的に、地毛でいこうということで、ヘアメイクさんがアイパー(※M字型に頭を刈りあげるスタイル)というのをかけてくださったんです。この髪型もキャラクターを際立たせる要因になったんで、とてもいいものになったと思います」
ユンホ「韓国から日本に来た刑事なので、韓国っぽいスタイリングが見せられたらいいなと思ったんですね。韓国の刑事ってあんまりスタイリッシュじゃないので、そのリアル感が出るように考えました。そのほかにも、キャラクターについて監督とたくさんやりとりしましたね。実は元々チェ・シウというキャラクターはもっと無口でエリートなキャラクターだったんです。でも、彼が1人で日本に来るということを考えると、エリートなだけでなくて乱暴な性格も持っているんじゃないかと思って、キャラクターを作っていきました」

――こういった犯罪を追う刑事もの、ノワールのような作風にはもともと興味がありましたか?
水上「若い時って青春ものとか爽やかな作品に出る機会が多くて、なかなかこれまではこのような作品に関わることが少なかったんですけど、ノワールは個人的に気になっていたし、好きですね。いつかは政治ものにも出てみたいんです。でもそういうのって、中心になるのが40代、50代の俳優になると思うので、もうちょっと年齢が上になってからかもしれないんですけど、人間のダークサイドに迫った作品に出られたらいいなと思っています」
――ユンホさんは2021年のソロ曲「Thank U」のミュージックビデオが、こういうノワール的な感じで、ファン・ジョンミンさんとも共演されていましたね。
ユンホ「あのころは、新たな一面を見せたいということで、ああいう世界観に挑戦させてもらったんです。特にノワールというジャンルが好きということはなくて、いろんなことが体験できればいいなと思っているところです。最近、周りから『ユンホはホラーやスリラーも似合うんじゃない?』って言われるので、そういうものにも挑戦したいですし、僕の子どものころの夢が検事だったので、検事ものにも出てみたいですね」
■「韓国の国技であるテコンドーを活かしたアクションシーンにも注目していただきたいです」(ユンホ)

――『TOKYO BURST-犯罪都市-』は、アクションも魅力的な作品ですが、アクションシーンの思い出は?
ユンホ「リハーサルも結構、厳しかったですね。プロレスの技をやったり、ワイヤーアクションもあったりするし、『本当に大丈夫なのかな?できるのかな?』って思いました。でも、みなさんが情熱的にやっていたので、僕も負けたくないと思ったし、よいシナジー効果になっていたと思います」
水上「僕は『TOKYO BURST-犯罪都市-』の前にもアクション映画には出演していて、作品によってそのアクションの個性ってものがあると思います。そのなかでもなぜその拳を振るのかっていう理由がはっきりとおもしろく描かれていないといけないなと思っています。今回のアクションで印象に残っているのは、僕のキャラクターが石頭だってことですね。ヴィランの村田蓮司を演じた福士蒼汰さんとのアクションシーンでは、けっこう頭突きをするんですね。アングルによっては、ちゃんと頭を当てないといけないんですけど、頭突きって、目で距離を確かめにくいんですよ。だから、気を付けないといけないなと思いつつも、撮影の後半に福士さんに僕の頭が当たってしまったことがあって、その時はめちゃめちゃ謝りました。福士さんは大丈夫だよって言ってくれましたけど、僕の練習不足を実感してしまいました」

――水上さんは、本当に石頭なんですか?
水上「小さいころから、頭を打ったりする事故みたいなことはあって親からも心配されていたんですけど、それでもいまも元気ってことは、石頭にありがとうって感じですね(笑)」
――ユンホさんはアクションシーンはいかがでしたか?
ユンホ「僕の役は韓国の警察官なので、韓国の国技であるテコンドーを使ったり、回し蹴りをしたりすることが重要でした。僕自身、昔からキックボクシングをやっていたんで、内田監督と相談しながらアレンジを加えて演じました。回し蹴りをした時に少し滑ってしまって痛かったんだけど、大きな問題にはなりませんでした。結果的にはかっこよく撮れているので、ぜひそこにも注目して観ていただきたいですね」
■「共演者への“当たり前”のリスペクトが自然にできている現場でした」(水上)

――アクションの準備はどんなことをされたのでしょうか?
ユンホ「普段のアーティスト活動に向けた準備とは違いましたね。アーティストの時はダンスもあるので、ある程度スリムでいないといけない。でも今回は刑事役ですし、韓国から来ているという設定もあったので、そのために増量して『犯罪都市』シリーズのイメージに近い体を作りました。かなりたくさん食べたりしていたんですけど、それはなかなかキツかったですね」
水上「体重を増やすのはけっこうつらいですよね。僕は、これまでにも役作りで体重を増やした経験があるので、今回は限られた時間のなかでやれることをやっただけという感じですね。共演者のなかでも、福士さんの体作りはダントツで、ものすごくしっかり仕上げられていたので、本当に感服しました」
――アクションでなにか乗り越えたという部分はありますか?
水上「やっぱり頭突きですね。ふりかぶる時に、目で状況を見られないので、カメラがどこにあるのかわからない時もあるんですよ。内田監督からもうちょっと豪快に行ってほしいとリクエストされたこともありました。これまでにないことだったので、そこは難しかったですね」
ユンホ「僕の場合は、ナイフで刺されても戦い続けるシーンがあったので、『普通ならこんなの無理じゃないか?』と思って、どう演じればいいのか悩みましたね(笑)。でも、これはエンタテインメント作品だからこそ成立するものだと納得して演じました。敵役のキム・フンを演じたオム・ギジュンさんに何度も刺されるのに、最後には蹴りまであって…。『実際だったら人間、死んじゃうよな』と思いながら演じていましたけど、結果的には最高のシーンになったと思います(笑)」

――オム・ギジュンさん、福士さんとは、相反する立場にありましたが、現場ではどのような雰囲気でしたか?
水上「僕が一番年下なので、みなさんいいお兄ちゃんって感じでした。現場で皆さんをリスペクトするのは当たり前のことなんですけど、その“当たり前”がちゃんと自然にできている現場だったと思います」
ユンホ「出演者のみなさんが一生懸命で、本当にいい映画を作りたいという一体感がありました。それは、内田監督や水上さんの力だとも思います。それと福士さんがずっと韓国語を勉強して積極的に話しかけてくれて。オム・ギジュンさんは韓国で有名な俳優ですが、すごく優しくしてくれましたし、キャラクターに集中している姿を見て勉強になりました。一緒に演じられて光栄でしたね」
――敵対している役だと本番前にあまり話さないとかはあるんですか?
ユンホ「撮影が始まる前は話しましたが、スイッチが入るとちょっと話さない空気になったりもしました。オム・ギジュンさんとも、いつもは仲良くしているんですが、戦うシーンの時は、ちょっと離れたほうがいいのかなって思って距離をとったりしました。でも、撮影が終わるとまた戻るんですよ。やっぱりオム・ギジュンさんは僕にとってよき兄貴って感じですね」
水上「どんな作品でも、僕は基本的にあまり現場でしゃべらないほうなんです。今回も、共演者の皆さんが先輩ですし、現場にも慣れてる方が多いですし、そんななかで僕があんまりしゃべるわけにもいかないなという思いがありました。それに、自分がやるべきことに対して、足りないことがあると思っているので…。まあそういう基本的なスタイルはありつつも、アクションシーンの時なんかは、コミュニケーションをとらないと成り立たないので、そういう部分ではコミュニケーションを積み上げながらやっていました」
■「歌舞伎町での大規模ロケ、僕にとってはすべてが初めての体験でした」(ユンホ)

――この映画の見どころとして、歌舞伎町を封鎖しての大規模ロケがありますよね。その時の印象的なエピソードはありますか?
水上「日本映画史上初めて旧アルタ前を封鎖して、800万円をばら撒くという挑戦的な撮影をしました。しかも、10日前まで撮影できるかどうかもわからなかったんです。こういう撮影に関わることができて光栄だなと思いました。いまはCGでやることもできるけれど、俳優としては、実際に生きた場所で撮影できるのは、なによりも得難いことです。撮影スタッフやコーディネーターの方々の功績なので、そちらにも関心を向けていただけたらうれしいなと思います」
ユンホ「旧アルタ前での撮影に参加した人の数がすごく多いので、この人数の人たちにどうやって指示を出したり、統制したりするんだろうかと思いました。しかも撮影でばら撒いたお金が全部本物だったんですよ。でも、最終的にそのお金をすべて回収できたので、本当にすごいなと思いました。僕にとっては、すべてが初めての体験でした」

――お2人は、本作のアソシエイトプロデューサーであるマ・ドンソクさんにはお会いになられたのでしょうか?『犯罪都市』シリーズの世界を背負う感覚はありましたか?
ユンホ「僕はあまりお話はできなかったんですけど、撮影前に挨拶はしました」
水上「僕はお会いしてはいないのですが、これまでの作品に対して意識はしていましたし、その世界観を背負うべきなのは僕たちなんだという気持ちもありました。でも、気負いすぎてもいい方向にはいかないと思うので、いい意味で周りの方にゆだねながら、自分のやるべきことをまっとうするようにしました」
ユンホ「僕は日本映画に出演すること自体が初めてなので、皆さんに迷惑をかけないように頑張ろうと思っていました。『犯罪都市』シリーズは、韓国でも大きなブランディングができている作品ですし、本作はそのユニバースを引き継いだ作品です。だから、ここで『犯罪都市』の新たなストーリーに挑戦しているんだっていう覚悟を決めて楽しく撮影に臨んでいました」
取材・文/西森路代
