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「あの人のシンボルだから」愛する男の局部を切断して持ち歩く女性の心理…阿部定の残忍な行為の裏にあった切実な女心

「あの人のシンボルだから」愛する男の局部を切断して持ち歩く女性の心理…阿部定の残忍な行為の裏にあった切実な女心

切り落とした局部を手元に置いておいた阿部定

こういったプレー自体は、別に珍しいことではない。SM遊びから死にいたった変死事件をいくつか検死した。ただ一般に思われているようなSM専門店では、この手の事故は、私が知る限り起きたことはない。

SMプレーの果てに事件になるのは、みな一様に、素人ばかりである。プレーに本気になってしまった結果、歯止めが利かなくなってしまうのだろう。逆に言えば、SMプレーの店は、どんなに本気っぽくやっていても、しょせん商売なのだ。

男性の局部を切り落とした以外のことは、昔のことで、うろ覚えだったので、これをいい機会といろいろ調べてみた。

驚くべきは、男が亡くなった後の阿部定の行動である。

一般に、彼女は、「男性のシンボルを切り落とした性的異常な女」として知られている。私もそうだとばかり思ってきた。しかし、調べてみると、そうではない。もっと複雑に入り組んだ事件だったのだ。

なんと彼女は男の陰部、睾丸と陰茎をすべて刃物で切り取って、持ち帰っていたのである。すなわち、陰部を切り取っただけでなく、自分の手元に置いておいたのだ。

後に阿部定はそれを持ち歩いていたところを見つかり逮捕されることになる。彼女の懐から男の陰部が出てきたのだ。捕まえた警察官もさぞや驚いたことだろう。

当時、日本中がこの猟奇事件に騒然となった。どちらかと言えば、嫉妬で切り落とした残虐な女というイメージだったが、それもいささか趣が違う。

「これは誰にも渡したくなかったんです。私の大好きだったあの人のシンボルですから」

そう阿部定は思っていたという。

阿部定のその後

裁判となったが、阿部定は行為の最中、主人に「もっと絞めろ」と命令されたから絞めていたことがわかり、過失致死となり懲役7年の判決を受けた。あくまでも過失であって殺人罪で刑務所に入ったのではない事実に注目したい。

しかも獄中の態度がよかったため、彼女は5年ぐらいで出所したという。その後、彼女は名前を変えるなどして隠遁生活を送っていた。

しかし当時のマスコミも、彼女を格好のネタとして見逃さなかったようだ。度々雑誌などで取り上げられ、そのうち自分の劇団を作り、事件を劇にして自ら演じたり、料亭を開くなどして余生を送った。料亭はかなり流行ったと聞く。大島渚監督の『愛のコリーダ』という映画はこの事件を題材にしたものだ。

昭和の初めに、女性が男性を殺し、その男性のシンボルを切って持っていた残虐な事件。

この事件はその衝撃的な部分が関心を引くので、今の世でも猟奇事件のごとく伝えられているが、実際は、過失致死で死なせてしまった「愛する人を誰にも渡したくない」ための行動であったのだ。

前述したように、私の検死経験の中でも、一例だけ女性が男性のシンボルを切った事件を扱ったことがある。

なぜわざわざ男性のシンボルを切り取ったのか。

この場合も、その理由がはっきりわからず、行為そのものを見ると残忍な猟奇事件に思える。

ところが当事者である犯人は、阿部定と同様、「好きな人、大切な人のシンボルだから、ほかの女性には触らせたくない」という女心で切断しているのである。恨みから及んだ犯行ではないのである。

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