中東の戦火から飛び火した石油・ナフサ危機は、物資不足やインフレという形で日本の家計を直撃している。6月にはスナック菓子や納豆などの900品目超の食品が値上げを控えているが、天井知らずの物価狂騰は我が国だけの悩みではない。海外に視野を広げれば、「節約」は国際トレンド。世界中に生活苦をサバイブする知恵が散らばっているのだ。
「今夏、光熱費の値上げは覚悟しなければなりません」
こう断言するのは経済ジャーナリストの荻原博子氏だ。中東情勢の緊迫により、エネルギー輸送の要衝・ホルムズ海峡は実質封鎖状態。高騰中の原油や液化天然ガスなどの調達コストが、6月の電気料金からダイレクトに反映されてしまうというのだ。
「家庭用の電気料金は『燃料費調整制度』で、2カ月前までの過去3カ月の平均燃料価格から調整額が算出されています。つまり、6月は今年1〜3月の平均燃料価格が適用されてしまうので、米国とイランの戦争で3月に上昇した燃料費が各家庭の電気代に転嫁されてしまうわけです。これから7月、8月とさらに値上がりするのは言うまでもないでしょう」(荻原氏)
まして夏場は冷房需要で電気代が爆増するタイミング。このままでは、熱中症警戒アラートならぬ“電気代警戒アラート”が、日本中で悲鳴のように鳴り響くのは避けられないだろう。
そんな悩ましい現実を少しでもマシにする「ライフハック」をご存じか? それは日本から約9000キロ離れたドイツの伝統的な節約術である。ドイツ在住の日系メーカー駐在員が語る。
「『カルテスエッセン』という冷たい食事を意味するドイツの夕食スタイルは、光熱費を大幅に削減できます。ドイツでは昼に温かい食事を食べますが、朝と晩はスライスしたパンにハム、チーズなどを並べるだけ。これにサラダやピクルスが付け合わせに出てくる程度の簡素な食事が朝晩の定番なのです。調理にコンロや電子レンジを使わないので、光熱費がほとんどかかりません」
酷暑を乗り切るためにはドイツ式の“冷食”が肝となるだろう。同時に、ドイツで施行されている「閉店法」なる法律にも注目したい。飲食店やガソリンスタンドなどを除いて、小売店や商業施設は月曜日から土曜日は夜8時〜翌朝6時、日曜日と祝日は終日にわたって営業が禁止されている。
「ドイツ人には計画的な買い物の習慣が身についているようです。一見すると不便に思えるかもしれませんが、夜間や休日に小売店が営業していないのはデメリットばかりではありません。むしろ、時間内で買い物を終わらせるために、目的外の売り場を回る余裕がなくなるので無駄遣いを減らす効果に期待できます。1956年に制定された法律が現存しているのは、倹約家が多いと言われるドイツ人と利害が一致しているからかもしれませんね」(荻原氏)
世の中、利便性ばかりが正義ではないのだ。

