炎上するとわかっていても言いたい
──『報道ステーション』時代には、キャスターとして日々伝えなければならないニュースは、ほとんどが人の欲の成れの果てで、ネガティブな要素が強いですよね。精神的に食らってしまうことはありませんでしたか。
確かに、ニュースというのはほとんどが誰かの不幸を伝えるものです。みんな一緒に生きてきたはずなのに不幸な事件や事故によってその群れを離れなければならなかった人、あるいは命を落とさなくても、冤罪によって人生の大半が潰されてしまった人など、さまざまな人の姿を見てきました。
心がざわついたことは何度もあります。けれども、キャスターとして感情に飲み込まれてしまうと、伝えるべきことを見失ってしまう。だから、どこかで自分を冷静に保つようにはしていましたね。
ただ、番組のなかで僕が発した意見によって怒る人はいっぱいいました。そういう意味での食らうことはありました。
──たとえばどんなことで食らいましたか。
2012年に韓国の窃盗団によって、対馬(長崎県)の寺社から仏像と経典が盗み出される事件がありました。返還を求めても、当初は先方が応じない局面が続いた。そのニュースを伝えた時のことです。
僕が好きな仏教に関することなので、つい言ってしまったんですよ。「仏教ってのはそもそも生きる上で物質世界にとらわれている、その執着をダメだよっていう教えでもあるんですけどね」と。
さらにメディアが悪いのは、仏教の教えが書かれた経典よりも、商品価値のある仏像が盗まれたことを大きく取り上げていたんです。仏教の禅語には「本来無一物(ほんらいむいちもつ)」といって、あらゆる価値への執着を捨てるという大切な考え方があるのに、ですよ!
するとお寺からも怒られたし、視聴者からもかなり怒られました。「日本のものを盗られたのに、何を『そのままでいい』みたいなことを言ってるんだ」と。
──当然、反発が予想される中で、言いたい欲が抑えられなかった。
突き詰めると、食らいたいから言ったのだと思います。言いたい欲、自分の考えをさらけ出したい欲に向き合ったのがキャスター時代だったのかもしれません。すべては因果応報で、行動の結果は返ってくるんです。たとえば、欲に負けて公園で性器を出して歩けば必ず捕まる(笑)。人間の世界とは、そういうものでしょう。
#2に続く
取材・文/黒島暁生 撮影/濱田紘輔
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