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「黙っていると、無口な少年時代に戻される」古舘伊知郎がしゃべり続ける理由、そして今も消えない死への恐怖

「黙っていると、無口な少年時代に戻される」古舘伊知郎がしゃべり続ける理由、そして今も消えない死への恐怖

解脱はできなくても、死の恐怖とは共存できる

──死がある意味で原動力になることもありますよね。たとえば、「死にたくないから頑張る」というような。

そうですね。われわれはどうしても「死んだら終わりだ」と考えてしまうから、資本主義の奴隷になって、金を儲けなきゃ、生産性を上げなきゃ、今度の書籍も売上を作らなきゃ(笑)……となってしまうのだと思います。僕も視聴率の世界で生きてきましたから、痛切に思うわけです。

けれども、競争社会からいい意味で離脱する生き方も確かにあるわけです。それが解脱というものですが、僕はいまだに死を怖がっている。なかなか解脱はできない。ただ、死を怖がっていることは自覚して、死の恐怖と同居できるようにはなりましたね。

──そういえば、書籍に寄せられる人生相談でも、悩みを解消するのではなく、悩みとともに生きていくことの大事さを伝える回答がありましたね。

まさにそこに繋がると思います。闘悩(とうのう)することは必ずしも最善ではなくて、むしろ自我を小さくすることで悩みと共存していくほうがいいと僕は思っています。「悩んでいるけどしょうがないじゃない」と、自分を突き放すことも必要ですよね。

本当は「悩みが全部解決します」と言い切ったほうが、書籍としては売れるのかもしれないけど。この本は劇薬ではない。だから、爆発的には売れないでしょうね(笑)。

──最後に、死に方は選べないとしても、古舘さんが「こう死にたい」と思う理想があったら教えてください。

おっしゃる通り、死に方を選ぶことはできません。こう死にたいということさえ、ひとつの欲ですよね。しかし理想をあえて申し上げることはできると思います。

昔の高僧がいつものように山寺を出て、ゆっくり山道を歩いて、ちょっと疲れたのか樹木の小枝に手をついて歩くように死んでいた――というのは憧れがありますよね。歩きながら死んでいた、あるいは死にながら歩いていた、というように生死の境を隔てない死に方です。

ただ、人間は身体の細胞から何から変わっていくものですから、同じ人間でも昨日と今日の自分は違います。だから僕は、死ぬときのことは死ぬときの自分に任せようとは思っています。

トークライブなどでは、かっこよく「ステージの上で死にたい!」などと宣っていますが(笑)、本心としてはそういったところでしょうか。

#1はこちら

取材・文/黒島暁生 撮影/濱田紘輔

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