3歳ダート3冠競走の最終戦、10月8日の第27回ジャパンダートクラシック(JpnⅠ・大井)を逃げ切ったナルカミには恐れ入った。すんなり逃げられれば勝ち負け可能とはみていたのだが、あのナチュラルライズを3馬身も離して勝つとは…。
ともあれ、ナルカミのみならず、田中博康厩舎の勢いには驚くばかり。7月2日に帝王賞(JpnⅠ)をミッキーファイトで、8月16日にドーヴィルのギヨームドルナノ賞(GⅡ)をアロヒアリイで、9月2日に盛岡の不来方賞(JpnⅡ)をナルカミで、10月3日に毎日王冠(GⅡ)をレーベンスティールで、そして10月8日にはジャパンダートクラシックをナルカミで勝利。
これで分かるように中央、地方、そして海外で重賞を毎月、勝利している。それも芝、ダートを問わずに。
田中師は史上最年少の31歳で調教師となったが、2018年に厩舎を開業して5年間は、重賞勝ちできなかった。それが2023年以降は毎年6勝している。いったいなぜか。
まず言えるのが、勉強熱心ということだ。競馬関係者に「若手調教師で勉強熱心なのは誰か」と尋ねると、真っ先に挙がるのが田中師だ。騎手時代も海外に出向いて競馬を学んでいたが、その姿勢は調教師になっても変わらない。常にグローバルな視点で競馬を見ているのだ。それでなくては1勝馬のアロヒアリイをフランスの重賞に使ったりすることはできない。そしてなんと言っても、ダート最強馬レモンポップとの出会いが大きかった。
「レモンポップの活躍によって、ゴドルフィンとの関係は一段と強固になった。ナルカミが2戦目で大敗するや、すぐに坂口智康厩舎から田中厩舎に転厩させたのは、そのいい例です。そしてオーナーの期待にきちんと応えてみせるのだから、たいしたもの。走らせる馬の3頭に1頭は2着まで入るわけで、もう美浦を代表する調教師と言っていい」(トラックマン)
今週は東京で日曜1頭、月曜1頭が出走予定。日曜は9R・鷹巣山特別(2勝クラス、芝1600メートル)にキングノジョーが、月曜は6R・新馬戦(牝馬限定、芝1800メートル)にバルボアパークが挑む。騎手は2頭ともルメールだ。
キングノジョーは4着となった今年1月の京成杯(GⅢ)で1番人気に推されたように、能力は重賞クラス。ここでは負けられない。バルボアパークは牝馬ながら、500キロ近い大型馬。まだ馬体を持て余し気味だが、調教時計は悪くない。18頭のフルゲートなので、スタートが鍵となりそうだ。
では、グッドラック!
(兜志郎/競馬ライター)

