
■舞台デビューを経て、J・A・バヨナ監督作『インポッシブル』に出演
1996年に英国ロンドンで生まれたホランドは幼少の頃からダンスを習っていた。これが役者デビューのきっかけとなる。12歳の時、ダンスの才能が認められ、映画『リトル・ダンサー』(00)に基づくミュージカル「Billy Elliot the Musical」の端役で初舞台を踏み、のちに主人公のビリーという大役を得ることに。持ち味でもある身体能力の高さは、この頃からダンスによって培われていたのだ。
2年弱の舞台経験を経て、2011年にはスタジオジブリ作品『借りぐらしのアリエッティ』(10)の英国公開版で、オリジナルでは神木隆之介が声優を務めた翔の英語吹替を担当。12年にはJ・A・バヨナ監督のスペイン映画『インポッシブル』に出演し、映画俳優の道を本格的に歩み始める。2004年のスマトラ島沖地震を題材にした実話に基づくディザスタードラマで、ホランドはユアン・マクレガーとナオミ・ワッツ扮する夫婦の長男を演じ、津波によって家族が離ればなれになりながらも強くあろうとする少年の成長を体現。続く2013年のイギリス映画『わたしは生きていける』(13)では、第三次世界大戦下に置かれた少年を演じ、繊細な個性を発揮して知名度を上げていく。

■『白鯨との闘い』でハリウッドに進出
これらのステップを経て、2015年に『白鯨との闘い』でハリウッド映画に進出。こちらもサバイバル主体の作品で、19世紀のクジラ漁に出た船乗りたちの実話に基づいており、ホランドは最年少クルーを熱演している。先輩船員たちと共に大海原に取り残され、飢えに苦しむという設定。このため、ホランドは食事制限をしてガリガリに痩せた体を作ったというから驚きだ。撮影時は食べ盛りの17歳。この頃からすでに役者として肝が据わっていたのだ。

■新スパイダーマン俳優として世界的にブレイク!
そして、2016年にはMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)に参入。その初登場は『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)で、演じたのはアベンジャーズの最年少メンバー、スパイダーマンこと高校生のピーター・パーカーだ。

とにもかくにも、新スパイダーマン俳優となったホランドの名は世界的に知られるようになり、『スパイダーマン:ホームカミング』(17)、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(18)、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(19)と同役を演じ続け、押しも押されぬスター俳優に。パンデミックのさなかに公開された『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21)がホランド版「スパイダーマン」の前2作を大きく上回る全米興収を上げたことは、その証明だ。

このほか、『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』(16)、『カオス・ウォーキング』(21)、『アンチャーテッド』(22)とアクションアドベンチャー作品への出演は少なくない。が、ホランドの強みは、単にアクションを演じるだけでなく、キャラクターに確かなドラマを宿らせること。「スパイダーマン」シリーズにしても、作品を追うごとにピーターの成長がはっきりと見て取れた。

アクション映画以外では、『エジソンズ・ゲーム』(19)で発明王エジソンの若き右腕にして、のちに電力実業家となる実在の人物サミュエル・インサルに扮している(エジソン役はベネディクト・カンバーバッチ)。アクティブなホランドもよいが、同作における知性的で落ち着いた雰囲気もまた魅力的だ。

■これからのトム・ホランドにも期待!
駆け足でホランドの歩みを振り返ってきたが、最後に新作『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』と『オデュッセイア』で演じる役について触れておきたい。前者は言うまでもなくピーター・パーカー役で、高校から大学へと進学しているようだ。ホメロスの叙事詩に基づく後者では、マット・デイモン演じる古代ギリシャ神話に登場するオデュッセウス王の息子テーレマコス役。いずれもアクション色が強く、また若々しいホランドの個性が映える作品となることは間違いない。

169cmという身長は欧米の俳優にしては小柄だが、映画の世界でここまで成し遂げてきたことはとてつもなく大きい。今後のホランドの大仕事に注目を!
文/相馬学
