
金田喜稔がアイスランド戦を斬る!「勝てたのは合格点。久保とFW陣のコンビネーションの質を高めることが、本大会で得点を奪う重要なカギに」
[国際親善試合]日本 1-0 アイスランド/5月31日/国立競技場
北中米ワールドカップ前の壮行試合。日本代表はアイスランド代表と国立競技場で対戦し、87分の小川航基の得点で1-0の勝利を収めた。
壮行試合の評価は、全体的に難しい。アイスランドはそこまで強い相手ではないし、もう少し格上のチームとのマッチメイクも選択肢にあったかもしれない。
ただ、冨安健洋のコンディションの確認や、約3か月半ぶりに実戦復帰した遠藤航の回復具合もチェックしたい。ワールドカップ初戦まで2週間しかないため、怪我のリスクを避けて、疲れも残したくない。
そして何より、選手全員のモチベーションを上げた状態でワールドカップへ向かいたい。国立競技場に足を運んでくれたファンの前で、引き分けや負けは許されない。さらに、コーナーキックなどのセットプレーは対戦国に分析されるため、手の内もすべてを見せるわけにはいかない。
このような状況下で、勝てたのは合格点をあげてもいいと僕は思った。
チームにとっても大きな安心材料になったはずだ。特に冨安や遠藤がある程度、プレーができるメドが立ったのも含めて、ワールドカップに向けた良いスタートが切れたと言えるだろう。
ワールドカップでは、いくつか新しいルールが導入される。アイスランド戦はそれらを体感する良い機会になったよね。
新ルールのなかで特に重要なのが、前後半にそれぞれ3分ずつ設けられる給水タイム(ハイドレーションブレイク)だ。これは単なる水分補給ではなく、戦術を確認させて、選手同士でコミュニケーションを取るための重要な時間になる。
この2回の時間とハーフタイムを使って、監督やコーチの指示を受けて、選手たちがいかに的確に修正できるか。給水タイムを上手く使えるチームが、ワールドカップで勝ち残っていくだろう。
また、選手交代時の10秒ルールも重要だ。今回、アイスランドがこのルールをよく理解していなかったのか、彼らはペナルティを受けた。その結果、一時的にフィールドプレーヤーが1人少ない状況でプレーする時間が生じて、その間に失点した。
もし、本大会で日本が同じ過ちを犯せば、強豪相手には致命的な事態を招きかねない。スローインの5秒ルールも含め、こうした細かなルールへの対応をチーム全体で徹底する必要がある。
さらにワールドカップでは、暑さが大きな敵になる。1994年のアメリカ大会で、僕は実際に現地に行ったけど、あの暑さでアグレッシブなプレッシングを続けるは不可能だよ。現在は当時よりも、さらに気温が上がっているはず。そのため、本大会では多くのチームが引いて守り、少ない手数で攻め切るカウンターを狙うことになるだろう。
アイスランド戦に関しては、前半の日本はボールを保持しながらも、相手の堅い守備をなかなか攻略できずに決定機を作れなかった。もっと縦パスが欲しかったけど、横パスが多く、ボールスピードも遅かったため、相手のスライドが間に合ってしまっていた。
相手の守備を崩し切れない展開が続いていたが、久保建英は違いを見せていた。ワンタッチの縦パスなどで、効果的に変化をつけようとしていた。
でも、結果的にフォワードの上田綺世や小川には繋がらなかった。その理由は、彼らが久保からのパスのタイミングに気づけていなかったからだと思う。反応が完全に遅れていたよ。久保のパスが通っていたら、局面はまったく変わっていただろう。
このコンビネーションの質を高めることが、本大会で得点を奪うための重要なカギになる。久保のパスを上田や小川、後藤啓介や塩貝健人らフォワード陣が正確に受ける。そこに伊東純也や中村敬斗など、3人目の選手が絡んで攻撃の起点を作っていく。
この形をゴール前でできれば、攻撃の選択肢は一気に広がる。これらの課題を、本番までの準備期間で修正してほしいね。
課題はあったけど、収穫もあった。日本が終盤に見せた、ボランチ1枚を残して前線の枚数を増やす3-5-2のような形を試したことだ。このシステムは、どうしても点が欲しい時間帯のオプションとして、チームのバリエーションを増やすうえで、有益なトライだったと思う。
そうしたポジティブな面があったとして、それでもやはり今回は、怪我の影響で本大会のメンバーに選ばれなかった三笘薫はもちろん、所属チームの事情でアイスランド戦には帯同しなかった鎌田大地の不在は、やはり大きかった。
三笘は1人で、2人の相手を引きつけられるし、スピードも決定力もある。鎌田は持ち前の頭脳を活かして、チームの攻撃をよりスムーズにできる。彼らがいないため、リズムが悪くなるのは、ある意味で仕方ない部分でもあった。
左シャドーで三笘の代役を務めた伊東は善戦していた。だけど、彼の本来の持ち味のクロスを活かすには、右サイドでプレーさせた方が良いと僕は思った。
もちろん、左シャドーができないわけではない。でも、右サイドでプレーした方が、高精度のクロスや豊富な選択肢、スピードを引き出せる。もしくは、右のシャドーで先発した久保と左右を入れ替えても良いよね。
ワールドカップまで、残された時間は少ない。選手たちにはまず、コンディションを最高の状態に持っていってほしい。そして、日本の最大の強みであり、世界トップレベルと言っても過言ではないチームの結束力を武器に、初戦のオランダ戦に臨んでほしい。
メンタルやフィジカル、そして戦術。そのすべてを最高の状態にして、本大会で戦ってくれることを期待しているよ。
【著者プロフィール】金田喜稔(かねだ・のぶとし)/1958年2月16日生まれ、68歳。広島県出身。現役時代はドリブルの名手として知られ、中央大在学中の1977年6月の韓国戦で日本代表デビューを飾り、代表初ゴールも記録。『19歳119日』で記録したこのゴールは、現在もなお破られていない歴代最年少得点である。その後は日産自動車(現・横浜FM)でプレーし、1991年に現役を引退。Jリーグ開幕以降はサッカーコメンテーター、解説者として活躍している。
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