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「できないことをできるようにしないと同じ状況が続いていく」“2026年型・今永昇太”を模索しながらの悪戦苦闘<SLUGGER>

「できないことをできるようにしないと同じ状況が続いていく」“2026年型・今永昇太”を模索しながらの悪戦苦闘<SLUGGER>

カブスのクレイグ・カウンセル監督が、今永昇太のことを語りながら2001年のワールドシリーズMVP=カート・シリングの名前を出したのは5月27日水曜日、ピッツバーグに遠征中のことである。

「投手の中には、被本塁打がプロフィール(全体像)の一部になっている投手もいる。昇太やジェイモー(ジェイムソン・タイオンの愛称)の投球を語る時......私はいつも(ダイヤモンドバックス時代の同僚)カート・シリングを引き合いに出すのだけれど、カートはよく本塁打を打たれるが、大事な場面ではとてもアグレッシブに投げて素晴らしい仕事をした。昇太も、津城はとても良い仕事をしている。それこそは彼のような投手が、自分のプロフィールからそれ(被本塁打)を消し去ることができるヒントの一部なんだよ」

 シリングは現役時代、ダイヤモンドバックスやレッドソックスで3度のワールドシリーズ優勝に貢献した名投手だが、サイ・ヤング賞投票で2位に入った01年にはリーグ最多の37被本塁打を記録している。

 持ち球は、4シーム・ファストボール=真っすぐとスプリット。スライダーやカーブもよく投げたが、キャリア中期から三振の多くが、真っすぐとスプリットのコンビネーションに依存していたことを考えると、球速こそ違うが今永と似た部分もある。 当時も今も、本塁打が問題となるのはそれが大量失点につながった場合のみだ。今年の今永は、最初の9登板で被本塁打5本で防御率2.32だった。

 ところが、5月18日の首位攻防ブルワーズ戦で2本塁打を許して8失点、続く24日のアストロズ戦では3被本塁打で7失点で防御率が一気に4点台まで上昇した。29日に敵地で行われたカーディナルス戦でも、6回途中で3被本塁打で5失点したのだから、誰がどう見たって苦戦している。

「この3試合に関しては、やっぱり勝敗のターニングポイントを......まあ勝つか負けるか2分の1として、すべてそのターニングポイントを拾えずに来てしまってる」

 カーディナルス戦の直後、今永はそう言った。

「今までできていたことができなかったから打たれてる、ではなくて、できないことをこれからできるようにしないと、このまま同じ状況が続いていくと思う。今まで自分ができてないことをできるようになるような取り組みを、これからやっていく必要がありますね」 思い出されるのは昨季のこと。

 最初の8試合で防御率2.82と好調だったが、左太腿裏の怪我で1ヵ月以上戦列を離れながらも、復帰後の5試合で防御率1点台(シーズン通算では2.41だった)と完全復活したように見えた。ところが、そこから終盤までの12試合で、防御率5点台(年間では3.73)と徐々に調子を崩していった。

 それを踏まえてオフの間、下半身のトレーニングに勤しんで左右の足の出力の均等化を図り、結果的に球速が上がって球質も向上したため、今季序盤の成功につながった――そんな風に克服したはずの課題が、たったの3試合で覆されてしまったのだから、ファンならずとも心配になってくる。

 ただし、今が昨季終盤と同じような状況なのかと言えば、そうは思わない。

 悪戦苦闘しているこの3試合、彼は3本の3点本塁打を打たれる致命的なミスを犯す陰で、2シームで内野ゴロ併殺を取ったり、かつてはカウント球でしかなかったカーブで凡打に仕留めたりと、今までにないShota Imanagaを垣間見せている。 トミー・ホットビー投手コーチは、カーディナルス戦の前、こう言っていた。

「(ブルワーズ戦もアストロズ戦も)空振りが全然取れなかったとか、ハード・コンタクト(時速95マイル=約153キロ以上)ばかりだったというわけじゃないんだ。実際には空振りも多く取れたし、ウィーク・コンタクトも多かった。ほんの数本のハード・コンタクト、ビッグスウィングが結果的に痛手=本塁打になってしまった。良い球を投げているのにいくつかのミスで大怪我をしたというだけのことだが、それは本当にフラストレーションのたまることだ」

 だから、今永のみならず投手コーチ、分析担当の人々が同じ視線で対策を練り続けているわけだ。

「どうしてその数少ないミステイクが大きな代償を支払うことになったのか。そうしたことが予め予測できるとは言わないし、その理由は『もう少しインサイドに投げていれば』とか、『何球かブレイキング・ボールを混ぜていれば』とか、一次元的なことではない。たとえ右打者が多い打線だったとしても、彼の4シームやスプリットはとても有効で、もう少しレパートリー(持ち球)を効果的に使うことが大事なんだと思う」 データ全盛の時代にあって、ミーティングで綿密に話し合われた相手打者の攻略法と、投手や捕手の直感のバランスが難しい。今永は今季序盤、ピッチコムを自分発信にしていたが、今はこう言っている。

「最近は自分でやってないと言うか、やれてないと言うか。(配球は捕手との)共同作業ではあるんですけど、もっと自分の考えを貫いてもいいと思うんで、それはここ2試合の反省点でもある。過去2打席はデータ通りに抑えられたのに、ミーティング通りだったのに打たれてしまうこともあるし、周りも納得するような抑え方をしないといけないので、なかなかそこの難しさはある」

 メジャー3年目を迎え、今永はすでにすべての球団に認知されている存在であり、球種や球筋どころか、配球すらも研究され尽くしている。裏をかくのも、裏の裏は表と行くのも、結局はイタチごっこみたいなものである。

 だからこそのメジャーリーグ=本場米国のプロ野球なのだが、前出のように、彼が時折見せる、「2026年型Shota Imanaga・改」のような投球には、登板結果のみを報じるニュースでは語り尽くせない何かが潜んでいると思う。

 それはまるで、すべてがクリックすれば、今の悪戦苦闘を克服するどころか、とんでもない好投が出来る。そんな予感に満ちているようなのだ。 もちろん、努力しているからと言って、必ずしも上手くいくとは限らない。

 裏をかくのも、裏の裏は表と行くのも、イタチごっこみたいなもの。

 結果がすべてのプロ野球だ。プロセスが評価されるのは、誰もが認める数字を残してこそであり、それは彼が一番よく分かっている。

「結局、打たれて最後に責任を取らなきゃいけないのは自分だから」と今永は言う。

「自己中心的になってもいい場面と、チームのことをしっかりと考えなきゃいけない場面とを、時には分けて考えなきゃいけない。今は結果的に、投げどころが良くないという共通の反省点がある。自分の意思で投げたボールをミーティング通りの場所に投げたら抑えられると思うんで、いいバランスで投げていきたい」

 近道も抜け道もない、艱難辛苦のメジャーリーグ3年目。

 今はただ、真正面からぶつかる覚悟を決める左腕を、信じるのみだ――」。

文●ナガオ勝司

【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO【画像】大谷真美子さんら世界の美女がずらり! 常勝軍団ドジャースの名手たちを支える“ゴージャスでセレブな妻&パートナー”を一挙紹介!
配信元: THE DIGEST

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