欧州サッカーの頂点を決めるチャンピオンズリーグ(CL)決勝が現地5月30日、ハンガリー・ブダペストのプスカシュ・アレーナで行なわれ、フランス王者のパリ・サンジェルマンが1-1からもつれ込んだPK戦(4-3)の末にアーセナルを下し、大会2連覇を達成した。
開始6分にカイ・ハバーツのゴールでアーセナルが先制したものの、65分にウスマンヌ・デンベレがPKを決めてパリSGが追いつき、「ビッグイヤー」の行方は11メートルの対決に委ねられる。アーセナル(後攻)2人目のエベレチ・エゼが枠を外すと、続くパリSGの3人目ヌーノ・メンデスが止められて振り出しに。その後4人が成功した後、最後のキッカー、ガブリエウ・マガリャンイスのシュートがクロスバーを越えた瞬間、英国の日刊紙『The Guardian』が「サッカー界全体を魅了した大一番」と評した一戦に幕は降ろされた。
スペイン人指揮官としては、1955-56、56-57シーズンのホセ・ビジャロンガ(レアル・マドリー)以来となる連覇を果たしたルイス・エンリケ監督は、「両チームとも勝利に値したかもしれないが、シーズン全体を通して見れば我々が優勝に値した」「開始直後の失点で苦しめられた。アーセナルは低いブロックを敷き、非常にフィジカルが強く守備も優秀だった」「連覇は信じられない偉業だが、クラブとサポーターに相応しい結果」とのコメントを残している。
一方、あと一歩のところで欧州王座を取り逃がしたミケル・アルテタ監督は、「痛み(Pain)」という言葉から会見を始め、「さらに上のレベルに到達したいなら、重要な決断を下さなければならない。我々は非常に野心的で、素早く、賢く動く必要がある」とコメント。すでに視線を来季以降に向けている。
各国メディアも、この劇的な決勝を大きく取り上げた。英国の日刊紙『The Sun』は、ガブリエウのPK失敗によって勝敗が決したことで「Gabri-Hell(ガブリ地獄)」という強烈な見出しを打ち、「敗者として記憶される選手が、この日のアーセナルで最も優れた選手だったのは残酷だ」と、最終ラインで奮闘したブラジル代表CBを擁護した。
英国の日刊紙『The Times』紙は「アーセナルは不運だったわけではない。チャンスをほとんど作れず、ボールも持てなかった」と指摘し、「パリSGこそ世界最高のチームであり、欧州は相応しい王者を得た」と評した。英国メディア『The Telegraph』も、「アーセナルは勝とうとするより、負けないことを優先していた」と自国チームに対して厳しい見解を示し、先制後も攻勢に出ず、1点を守ろうとした姿勢が敗因だったと分析している。 イタリアのスポーツ紙『Gazzetta dello Sport』は、「王朝は続く」とタイトル防衛を果たしたパリSGを絶賛。「120分を通じて試合を支配した以上、PK戦決着でも優勝は当然だった」と評価。またスペインのスポーツ紙『MARCA』は、「キリアン・エムバペ(現レアル・マドリー)退団後に不安視されたプロジェクトをルイス・エンリケが輝かせた」と称え、「王朝を築く準備が整ったチーム」と結論づけた。
米スポーツ専門局『ESPN』は、より詳細な戦術分析を展開。パリSGが74%のボール支配率、シュート21本対7本、ゴール期待値1.77対0.44と、ほぼ全ての数字で対戦相手を上回った点を強調。「PK戦までもつれたとはいえ、サッカーの内容だけを見れば、正しい勝者だった」と断言。特にジョアン・ネベス、ヴィティーニャ、デジレ・ドゥエら中盤の働きを高く評価し、試合途中のポジション変更や交代策によってパリSGが徐々に主導権を握ったと分析している。
その一方で、アーセナルの戦略にも一定の理解を示した。早い時間帯に先制したことで、守備ブロックを敷いて相手の体力を削ろうとした。しかし、同点とされてからはPK戦に持ち込むというプランは「ほぼ成功していた」という見方だが、延長戦に入るまでにブカヨ・サカ、ハバーツ、マルティン・ウーデゴーら主力PKキッカーをベンチに下げた結果、最後はガブリエウが5人目を務めなければいけなくなった点を悔やんだ。さらに、シーズン63試合目という過密日程の影響もあり、層の厚さは向上したものの「あと一歩足りなかった」と総括した。
ただし、アーセナルの「時間稼ぎ」には苦言も呈しており、「スローインやゴールキックで試合を止める場面が目立ち、90分間で約26分もプレー再開を遅らせた」と指摘。「守備の芸術性は認めるが、時間稼ぎや過剰なアピールはクラブの評判を損なう」と論じている。
賛否渦巻いたアーセナルの戦い方について、クラブ専門サイト『PAIN IN THE ARSENAL』は擁護論を展開。「ガンナーズ」のボール支配率24.7%は、2003-04シーズン以降のCL決勝では最低のものだったが、「それは敗北を避けるためではなく、勝利するためのゲームプランだった」と主張。普段は支配率56%超を誇るチームが、あえて守備重視に切り替えたのは、欧州最強の攻撃陣を擁するパリSGへの対策であり、「昨季決勝で5失点したインテルのようにならないため、アルテタ監督は理想より現実を選んだ」。
最後にフランスの日刊紙『Le Figaro』は、数字で今回の決勝を振り返っている。記事によれば、パリSGはCL史上9番目の連覇クラブとなり、ルイス・エンリケ監督はクラブ史上最多となる12個目のタイトルを獲得。また、今季の総得点45は1999-2000シーズンのバルセロナに並ぶ大会記録だった。
一方、無敗を維持しながらPK戦で涙をのんだアーセナルは、欧州制覇を経験しないままCL通算240試合に到達し、「ビッグイヤーを掲げたことがないクラブとして最多の試合数」という不名誉な記録も更新することになった。
構成●THE DIGEST編集部
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