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[本田泰人の眼]課題だらけのアイスランド戦。なぜ背後を狙わないのか。上田綺世が孤立したのは周りの責任だ

[本田泰人の眼]課題だらけのアイスランド戦。なぜ背後を狙わないのか。上田綺世が孤立したのは周りの責任だ


[国際親善試合]日本 1-0 アイスランド/5月31日/国立競技場

 アイスランドとの壮行試合を1-0で勝ち切ったね。僕がこの試合で何よりもポジティブに評価したいのは、すでに発表されているワールドカップメンバーで、冨安健洋がピッチに戻ってきて、しっかりと実戦をこなしたことだ。

 よくマスコミは「公式戦に出ていないから試合勘が」なんて言うけれど、あんなものは見当違い。代表クラスのレベルになれば、試合勘はすぐに取り戻せるし、大事なのはコンディションだけなんだよ。こうして日本のピッチに立って実戦を消化できた。おまけに板倉滉も一緒に戻ってこられたのは良かったね。

 やはり冨安がいるディフェンスラインは安定感がある。彼のスピードとカバーリング能力、危険を察知する力は、他のディフェンス陣とは明らかに違う。冨安が後ろにいてくれるだけで、日本の守備の安心感は世界基準になるんだ。ここがクリアされたのは、本番を前にして本当に大きな収穫だよ。
 
 一方、試合の内容に目を移すと、課題だらけのゲームだった。

 そもそも相手のアイスランドは、今回のワールドカップに出場しない国。そういう相手をホームに迎えておきながら、5-4-1で守備を固めるアイスランドのブロックを崩せず、たった1点を奪うのに試合終盤まで大苦戦しているようでは、本番で世界トップクラスと対峙した時にどうなるか。1-0というスコアの勝利は、手放しで喜べるようなものではなく、日本のシビアな現在地を示しているね。

 相手は日本がボールを持った時、そこまで速いプレスを仕掛けてこなかった。だから日本は良い状態でボールを持てていたんだよ。それなのに、なぜ立ち上がりからもっと相手の背後、裏を狙おうとしないのか。

 森保一監督もベンチから「背後! 背後!」って声を枯らして指示を出していたと思うけど、ピッチ内の選手たちは安全にボールを繋ぐことばかりを意識して、裏への狙いを途中で“キャンセル”しては横パス、バックパスのやり直しばかりを繰り返していた。

 これではテンポも上がらないし、相手のラインを下げることもできないから、中盤にギャップが生まれるわけがないんだ。

 実際、伊東純也や中村敬斗、久保建英といったアタッカー陣が裏へ抜け出すアクションを見せていたのに、そこへまったくパスが配給されなかった。強豪国やバルサのようなポゼッションのチームを見れば分かるけれど、彼らだって点を取っている場面では、実はボランチから背後へ1本、2本とシンプルなボールを入れて、3本目くらいで簡単に得点しているケースが多い。

 日本もそういうシンプルでテンポの速い攻め気をもっと出さなきゃダメだ。ただ回しているだけでは、相手にとって何の脅威にもならない。相手が慣れてきてからは、チャンスらしいチャンスも作れず、前線の上田綺世が孤立してしまったのは周りの責任だよ。
 
 こういう攻撃の停滞があるから、特に本番のオランダ戦では、綺麗にパスを回して、主導権を握るような理想のサッカーは一度、捨てるべきなんだ。オランダのような世界のトップを相手にそんな色気を出していたら、一瞬でやられてしまうよ。

 そして、ここからは守備の意識を高く持って、最初から5-2-3でガチガチに守り勝つ形に割り切るべきなんだ。ワールドカップは1失点しただけで、メンタルが崩壊しかねない場所だからね。

 今回からワールドカップは仕組みが変わり、ベスト32から決勝トーナメントが始まる。つまり、一発勝負の試合がこれまでより1試合、増えるわけだ。この過酷なトーナメントを勝ち上がるために、日本が目ざすべきは、まさに鎌田大地の頭脳を活かした、彼の所属するクリスタル・パレスのような手堅くオーガナイズされたサッカーではないだろうか。
 
 鎌田はパレスでカップ戦のタイトルを手にし、一発勝負のトーナメント戦における強さを証明してきた。そして彼には、ピッチ全体の状況を瞬時に把握し、ゲームをコントロールできるサッカー頭脳がある。

 いわゆる“パレス流の5-2-3”は、オリバー・グラスナー監督がチームに導入した、高度に洗練されたプレッシングとゾーンディフェンスが強み。単に自陣に引いて守る5バックではなく、計算されたゾーンでスペースを消し、連動したハイプレスで相手の自由を奪い取る。

 ワールドカップでは、鎌田の戦術眼を頼りに、パレスのようにインテンシティを高く保ちながら、5-2-3でソリッドに守り、相手をハメ込んで少ないチャンスを確実に仕留める現実的なサッカーにシフトしていくのが、一番勝率が高いはずだ。

 そのためには中盤のバランスが鍵になる。ただ、チームの心臓である遠藤航のコンディションは、今回のアイスランド戦を見ていても、動きのスピードが足りず、正直かなり不安に映った。オランダ戦までにどこまで上げられるか。

 今回の26人の中に「守備のスペシャリスト」と言えるボランチは、遠藤と佐野海舟くらいしかいない。田中碧は、頑張ってはいるけれど守備職人とまでは言い難い。

 遠藤が下がって、瀬古歩夢がボランチでプレーしてアピールしていたけれど、オランダを相手に中盤をどう回すかは、かなりの不安が残る。だからこそ、ボランチにディフェンス力のある板倉を上げるか、あるいは瀬古をそのままボランチに据えるような、そんな泥臭い5-2-3が、オランダ戦のような本番ではリアルに必要になってくるし、今回の26人はおそらくそれができるように、センターバックの頭数を揃えているようにも感じられるね。
 
 本大会では厳しい戦いが予想されるなかで、僕が注目したいのは、塩貝健人だ。

 代表ではまだ、そこまで多くプレーしていない。でも、途中出場だったアイスランド戦を見て、ワールドカップのメンバーに選ばれた理由がよく分かった。短い出場時間でも、「俺は戦うんだ」「俺がやってやるんだ」という姿勢を全面に出して、泥臭く必死にスプリントを繰り返していた。

 どんなに相手に阻まれようが、愚直に前へ行く。プレー面での結果は出ていなくても、あのピッチに立った時の「戦う姿勢」という点においては、今の代表メンバーの中で間違いなく、彼が最も強く感じさせてくれたよ。

 かつての岡崎慎司を激しくしたようなタイプだね。主力組は、綺麗にボールを回すことばかりに固執せず、塩貝のこういう泥臭い姿勢をもう一度、見習うべきだ。

 ワールドカップでは15~16人の世界基準の主力と、彼らを支える泥臭いバックアップメンバーが一つになって“5-2-3の逃げ切り”が完成する。本番では、綺麗さではなく泥臭さが勝敗を分ける。落選したメンバーのためにも、選ばれた人間は自覚を持って、もう一度ネジを締め直し、オランダとの初戦に向かってほしい。
 
▼アイスランド戦の採点
スタメン)
GK 鈴木彩艶/6.0
DF 冨安健洋/6.5
DF 吉田麻也/6.0
DF 板倉 滉/6.0
MF 遠藤 航/5.5
MF 田中 碧/6.0
MF 堂安 律/6.0
MF 中村敬斗/6.5
MF 久保建英/6.5
MF 伊東純也/6.0
FW 上田綺世/6.0

途中出場)
DF 伊藤洋輝/6.0
DF 長友佑都/5.0
DF 瀬古歩夢/6.0
DF 菅原由勢/6.0
FW 小川航基/6.0
FW 後藤啓介/6.0
FW 塩貝健人/6.0
DF 渡辺 剛/6.0
GK 早川友基/-
DF 谷口彰悟/-
MF 佐野海舟/-

監督)
森保 一/6.0

【著者プロフィール】
本田泰人(ほんだ・やすと)/1969年6月25日生まれ、福岡県出身。帝京高―本田技研―鹿島。日本代表29試合・1得点。J1通算328試合・4得点。現役時代は鹿島のキャプテンを務め、強烈なリーダーシップとハードなプレースタイルで“常勝軍団”の礎を築く。2000年の三冠など多くのタイトル獲得に貢献した。2006年の引退後は、解説者や指導者として幅広く活動中。スポーツ振興団体『FOOT FIELD JAPAN』代表。

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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