
本作は、是枝裕和や西川美和のもとで監督助手を務めてきた孫が自身のオリジナル脚本を映像化した長編監督デビュー作。朝鮮半島をルーツに持つ14歳の少女ソヒ(恒那)は、朝鮮学校に通い、部活で朝鮮舞踊に打ち込む日々を送っている。ある日、日本学校との交流会で日本人の未来(梨里花)とK-POP好きという共通点で仲良くなり、ソヒは少しずつ“外の世界”と繋がりを持っていく。そんななか、2人は推しのK-POPアイドルのライブチケット代を稼ぐために、ソヒの家にある不用品をフリマサイトで売ることに。そこで意外にも高値で売れたのは、朝鮮学校の校長である父サンジュ(井浦新)が持っていた北朝鮮のCDだった。それに味をしめたソヒたちは、サンジュが祖国の北朝鮮から授与された“勲章”までも売ってしまう。
このたび解禁されたのは、ソヒや未来を関わりを深めていく大人たちを演じる新キャスト。K-POPをきっかけに仲良くなったソヒと未来が足繁く通う甘味屋の店主さっちゃん役を演じるのは数々の映画、ドラマ、バラエティで存在感を放ち続けているYOU。本作ではどこか子どもたちと同じ高さに立っているような自由さを持ちながらも、時に大きく包み込むような頼もしさを感じさせる、駄菓子屋のさっちゃんを自然体で演じている。
未来の祖父を演じるのは、映画やドラマ、ステージで唯一無二の存在感を放つきたろう。少し頑固で職人気質な一面を持ちながらも、その厳しさの奥に不器用な優しさをもつ存在としての祖父を体現。未熟なソヒと未来を静かに導き、家族のぬくもりと確かな支えを感じさせる存在として物語を支えている。
焼肉店を営むソヒの叔父を演じたのは、繊細さと確かな存在感を併せ持つ演技で人物たちの現実を静かに立ち上げてきた山中崇。本作では家族を支える側としての余裕と温かさを持つ叔父役として、ソヒたちを少し離れた場所から見守る、大人ならではの包容力で作品に軽やかな空気をもたらしている。
ソヒの祖母演じるのは、1967年のデビューから映画界で長年にわたって活躍し、確かな存在感で数々の作品を支えてきた白川和子。本作では、多くを語らずとも家族を静かに見守り、そこにいるだけで安心感を与える祖母を演じている。
ソヒと未来がある出来事をきっかけに訪れるバーのマスター役を演じるのは、人物の背景や存在感をにじませる演技で数々の作品に強烈な印象を残してきた黒田大輔。そしてソヒがよく行く乾物屋「丸萬商店」の店主を「PACHINKO」や「TOKYO VICE」をはじめ国内外の作品で活躍するソウジ・アライが演じている。
あわせて公開された本予告では、K-POP好き同士として友人の未来と笑い合いながら過ごす、ソヒの等身大の日常と、朝鮮舞踊に真っ直ぐ向き合う凛とした姿が映しだされる。一方で、朝鮮学校の校長として生きる父サンジュとの、分かり合えなさも徐々に浮かび上がっていく。父の大切なものを売ってしまったソヒが、さまざまな大人たちと出会いながら見つけていくものとは。無邪気さ、未熟さ、そして瑞々しさ。誰もが通り過ぎてきた青春の一片を思い起こさせるような映像となっている。

さらに写真家の石田真澄が手がけたアザービジュアルも到着。やわらかな光の中で、思春期の葛藤と刹那をすくい取るように、ソヒのまとう静かな空気と瑞々しさが写しだされている。
朝鮮半島にルーツがある人々の等身大の暮らしや思いを描いた本作。繊細な映像が映しだす物語を映画館で味わってほしい。
■<コメント>
●YOU(さっちゃん役)
「ものすごく暑かった現場で、監督がその想いを一つ一つ丁寧に形にしてゆこうとする姿、もう全てを理解し、いつものようにじっくりと狙いを定め一寸の狂いもなく舐めるように(笑)取り納めてゆく山崎さんがいらして、真っ白な子鹿のようなソヒは、その時期の少女の全てを纏っていて。始終キラキラとした清流が流れているような駄菓子屋の風景は、それだけで感慨深いものでした。全編に描かれているであろう、監督の想いや、役者さんたちの表現に触れるのがとても楽しみです。その一欠片に携われたこと、心から感謝しております。楽しみです!ありがとうございます!」
●きたろう(未来の祖父役)
「脚本を読ませてもらって、ぜひ参加したいと思った。テーマに真正面から向かう姿勢に心打たれた。在日コリアンの少女と日本の少女の友情が実に透明だ。理由なき差別は二人にしか止められない。現場で、カット割りがカメラマンと話し合いになり、孫監督の譲らない頑固さが素敵で可愛かった」
●ソウジ・アライ(乾物屋の店主役)
「脚本を受け取ったその足でロケ地の三河島を訪ねると、懐かしさを感じた。多文化共生を象徴するような子どもたちのグループが自転車で駆け抜けた。主人公ソヒがよく買い物にくる丸萬商店は、そんな地域で愛されしっかりと根を張っていた。日本の豊かさ、多様性の美しさを、自然体で伝えてくれるこの街にもトロフィーを!」
●黒田大輔(バーのマスター役)
「人種や国境や性別関係なく、ただただ普通に思い悩んだり喜んだり憤ったり楽しんだりしながら、生活している人たちのひとときを覗き見させていただきました」
●山中崇(ソヒの叔父役)
「『オレ、在日なんだよね』高校生の頃、幼なじみの友人がふと話してくれた。当時の僕は、その言葉の重さをよく分かっていなかった。あれはきっと、とてもナイーブで勇気のいる告白だったのだと、後になって気づいた。きっと大切な友だちだと思ってくれたから話してくれたんだ。そう感じた時、心の奥でじんと震えるものがあった。作品を観ながら、そのことを思い出していました。舞踊を踊る生徒たちの笑顔がみずみずしさであふれています。現実と向き合いながら芽吹いたその笑顔は、観る人たちにもきっと勇気を灯してくれると思います」
●白川和子(ソヒの祖母役)
「異国の地で、甘いも酸いも知り抜いた、ハンメ(祖母)の余裕ある生き方を、私なりに演じることができたと思います。それは四十年以上続いていた、在日の友人とのおつきあいがあったからです。生き方の姿勢、人生における決断など波乱万丈の人生から多くのことも学べたからです。その友人も旅立ちましたが、『トロフィー』に出演させていただき、恩返しができました。孫監督本当にありがとうございました」
文/サンクレイオ翼
