5月31日、3歳世代の頂点を決める日本ダービー(GⅠ、東京・芝2400m)が行なわれ、激しい競り合いの末に単勝1番人気のロブチェン(牡3歳/栗東・杉山晴紀厩舎)が優勝。史上25頭目の春季クラシック二冠馬となった。手綱をとった松山弘平騎手、杉山調教師はともにダービー初制覇。走破時計(良馬場)は2分22秒7だった。
アタマ差の2着には皐月賞(GⅠ)の14着大敗から巻き返した4番人気のパントルナイーフ(牡3歳/美浦・木村哲也厩舎)が入り、鞍上のアグレッシブな騎乗で途中から先団に付けた11番人気のバステール(牡3歳/栗東・斉藤崇史厩舎)が3着に健闘した。3連単の払戻金は4万7050円(140番人気)の中波乱となった。
青葉賞(GⅡ)を勝って臨んだ3番人気のゴーイントゥスカイ(牡3歳/美浦・上原佑紀厩舎)は後方から追い込んだが4着まで。皐月賞の2着馬リアライズシリウス(牡3歳/美浦・手塚貴久厩舎)は直線で不利を受けたこともあって7着に沈み、皐月賞3着で5番人気のライヒスアドラー(牡3歳/美浦・上原佑紀厩舎)はラストで脚が上がって8着に終わった。
2着との着差は小さかったが、堂々たるレースで先団をまとめて差し切ったロブチェンの強さが強く深いインパクトを残したダービーだった。
スタートするや飛び出したのはメイショウハチコウ(牡3歳/栗東・牧浦充徳厩舎)で、直後にリアライズシリウス、アスクエジンバラ(牡3歳/栗東・福永祐一厩舎)、ライヒスアドラーが付ける。先団の6番手という好位置をパントルナイーフが占めると、それを前に見る9番手あたりをロブチェンが追走。ゴーイントゥスカイは後方の15番手に控え、バステールは最後方の18番手を進んだ。
大きな動きが出たのは向正面の半ば。1000mの通過ラップが1分00秒7というスローペースを察した川田将雅騎手がバステールを馬群の外から一気に前へ誘導。2番手まで位置を上げて勝負に出た。それを受けてリアライズシリウスは先頭を奪い、馬群は徐々にペースを上げながら最終コーナーを回り、左右に広がりながら勝負の直線へと向いた。
逃げ込みをはかるリアライズシリウスが頑張るが、それを交わしてバステールが先頭へ。最内からはライヒスアドラーが先頭に迫るが、外から併せ馬のような形で猛然と追い込んできたのはロブチェンとパントルナイーフ。2頭はバステールを交わし、火の出るような叩き合いを演じながら馬体を併せてゴール。結果、最後にひと伸びを見せたロブチェンがアタマ差で勝利を掴んでいた。
皐月賞で逃げ切り勝ちを収め、今回は控えた中団からの差し切りでクラシック二冠を制したロブチェン。肝の座った騎乗でダービージョッキーの称号を掴んだ松山騎手はインタビューで、「レースプランとしては、もう少し前で流れに乗りたいという気持ちはあったのですが、17番枠のぶん、ポジションとしては思ったより後ろになりました。そこでしっかり(頭を)切り替えて、最後に脚を使えるというのを信じて騎乗させていただきました。その力をしっかり発揮してくれて、着差はわずかでしたけれども、勝ち取ってくれて、本当にそれはロブチェンの強さだと思います」と答え、大方の予想とは違ったレース内容を振り返るとともに愛馬を称えた。
父のワールドプレミア(父ディープインパクト)は現役時、菊花賞(GⅠ)、天皇賞(春)(GⅠ)を制した名うてのステイヤー。種牡馬となった初年度の2022年は53頭と交配し、登録された頭数は25。ロブチェンはそのなかの1頭で、キタサンブラックら名だたる種牡馬陣を相手にクラシック二冠馬を送り出す快挙を成し遂げた。ちなみに新種牡馬による二冠制覇は1994年にブライアイズタイム産駒のナリタブライアンが達成して以来32年ぶり、史上3頭目のこととなった。
ワールドプレミアの元にはロブチェンが昨年のホープフルステークス(GⅠ)を勝ってから、種付料の手頃さ(2025年は受胎条件で50万円)もあって交配の申し込みが急増。昨年は22頭まで減っていた交配頭数だが、今年はゆうに100頭を超えているという。ディープインパクトの後継種牡馬としてどこまで成績を伸ばせるかに注目が集まる。
このあと、菊花賞(GⅠ)へ進んでクラシック三冠を狙うかどうかについて問われた杉山調教師は「オーナーと相談してからになりますが、馬にお願いしますと言っておきます」と前向きにコメント。折り合いに難が無く、自在性に富んだ競馬ができるロブチェンは、父が菊花賞馬という血統も後押ししているだけに、2020年のコントレイル以来6年ぶり、史上9頭目の三冠馬誕生が期待される。
わずかに競り負けて2着となったパントルナイーフだが、皐月賞の惨敗から立て直してきての復活走は見事のひと言だ。昨年11月の東京スポーツ杯2歳ステークス(GⅡ)を勝った時点ではクラシック戦線でトップクラスの評価を受けていた本馬。その後、フレグモーネの影響でステップレースを見送り、皐月賞には“ぶっつけ”で参戦し、道中の不利もあっての大敗となったわけだが、クリストフ・ルメール騎手がダービーまで手放さなかった理由がこの一戦に凝縮されている。毎年のようにGⅠタイトルを積み上げてきた木村厩舎、それをバックアップする牧場と、スタッフの力量の高さを再認識させるに十分すぎる激走を披露したパントルナイーフ。距離に限界はありそうだが、仮に今秋、古馬中距離路線を進んでも勝負になりそうなポテンシャルを保持していると感じた。
3着のバステールも皐月賞大敗から見事に巻き返した。スタートが遅いのはデフォルトであるため、今回も最後方からのレースとなったが、ペースが遅いと読んだ川田将雅騎手が向正面で一気に動いたのが好判断。直線ではいったん先頭に立ったものの、最後に外の2頭に差されてしまったのは勝負のアヤというもの。内斜行でリアライズシリウスを押圧して不利を与えた部分はいただけないが(過怠金30000円)、川田騎手を抜きにしてこの好走は無かっただろう。
上がり最速の脚(32秒8)を使ったゴーイントゥスカイだが、ロブチェンとは0秒1差の4着で、“青葉賞勝ち馬はダービーを勝てない”というジンクスは今年も破られなかった。三冠馬コントレイルの初年度産駒として注目を集めていた本馬は、勝てないまでも僅差の勝負をしたことで父の面目を保つことになった。無事に菊花賞へ駒を進められれば、有力馬の1頭に数えられるはずだ
筆者が期待したライヒスアドラーとフォルテアンジェロ(牡3歳/美浦・上原佑紀厩舎)は、ともに距離延長が堪えた印象。前者は最内から伸びかかったものの、ラスト100mで脚勢が衰え、後者も直線の半ばで失速してしまった。ライヒスアドラーの父はマイラーのシスキン、フォルテアンジェロの母の父は短距離馬のダークエンジェルと、両者とも血統的な弱みを抱えていたのだが、2400mへの距離延長でその本質が顔をのぞかせたのかもしれない。
※パントルナイーフはレース後、膝の骨折が判明しました。
文●三好達彦
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