プロ野球の観戦スタイルが変わった。チームを丸ごと応援するだけでなく、特定の選手を推すファンが増え、移籍先の球場まで足を運ぶ姿は珍しくない。そんな時代に球団公式ルールの一文が、波紋を広げている。
楽天イーグルスの公式スタジアムルールには「イーグルスレフト応援シート」の注意事項として、こんな記述がある。
〈過去に楽天イーグルスに在籍した選手や、当該試合と関係のないチームのグッズ・ユニフォーム・シャツなどについても、トラブル防止の観点から使用、着用をお断りする場合があります〉
まず確認しておくが、これは全席対象ではなく、ホーム側外野応援席「イーグルスレフト応援シート」に限った規定だ。「禁止します」ではなく「お断りする場合があります」という表現で、一律禁止とも異なる。ビジターチームの応援やグッズ使用を禁じる規定は他球団にも広く存在するが、「過去の在籍選手」を明示的に対象に含めている例はあまり聞かない。
確認できた範囲では、西武も公式の観戦・応援ルールで同種の文言を明記している。巨人、阪神、ソフトバンクなどはホーム応援席でビジターチームや自軍以外のユニフォームとグッズの使用を制限しているが、それらは「相手チーム」「他球団」「自軍以外」を対象にした一般的な応援席ルールだ。元在籍選手までを対象とする楽天と西武の文言は、一般的な応援席ルールより一段細かい。
ヤクルト移籍「茂木栄五郎のユニフォーム」のX投稿が拡散
この規定に対する反応をかいつまんでみると、
「在籍時の楽天ユニならいいのではないか」
「移籍した選手のユニを球団が買い取るわけでもなし」
「タオルを掲げたりコールするのはともかく、ユニまで制限するのはいきすぎ」
楽天からヤクルトへFA移籍した茂木栄五郎のユニフォームをめぐり、周囲の観客が声をかけたとされるX投稿が拡散。注意した側は「脱げとまでは思わないが、ヤジで子供が球場に行きたくないと思われるのが嫌だった」と説明。ユニフォームの可否にとどまらず、応援席の空気そのものが俎上に載った。
楽天と西武がわざわざ明文化したのは、応援エリアでのファン同士の摩擦を避けたいという判断があるからだろう。球団としては「トラブル防止」という理由で線を引くしかない。ただ、球団公認グッズとして販売したユニフォームを、あとになって「場合によってはお断り」と主張する球団の姿勢は、どうしてもセコく映る。
選手は移籍しても、ファンの思い入れは簡単には消えない。かつて応援した選手の背番号を着て球場に行ったら、席種のルールで断られるかもしれない。その理不尽さが、ファンの神経に触れているのだ。
楽天と西武の一文は小さな規定に見えて、観戦の楽しみ方を根本から問い直す話なのだった。
(ケン高田)

