中国には「千人計画」なるものがある。世界トップクラスの科学者や技術者を中国国内の大学や研究機関に招致するというものだ。破格の好待遇に釣られ、アメリカ司法当局から起訴されて有罪判決を受けた元ハーバード大学教授が、今では中国に渡り、研究所の所長に収まっていることが発覚した。
その人物は、チャールズ・リーバー氏。昨年春に中国の清華大学深セン国際研究生院(SIGS)や深セン医療転換研究院(SMART)に移籍。SMART傘下の「脳・高度インターフェース・ニューロテクノロジー研究所」の所長に就任し、国家資金を背景とした大規模なプロジェクトを主導している。
このほどロイター通信が報じたもので、中国政府が最優先課題として挙げている「脳・コンピューター・インターフェース」研究のため、ハーバード大学時代には使えなかった最先端のナノファイバー製造装置や、大規模なアカゲザル(霊長類)の実験施設へのアクセス権を与えられているという。
「脱税と虚偽証言」で解雇されても年間8000万円の報酬が!
「数個の衣類カバンと夢だけを持って到着した。深センを世界的なリーダーにするのが私の目標だ」
そう語ったリーバー氏はハーバード大学教授の任にあったが、2021年12月に脱税や虚偽証言の罪で起訴され、有罪判決を受けた。「千人計画」の一員として研究費のほか、年間75万ドル(当時のレートでは約8000万円)の報酬を受け取っていた。
リーバー氏は有罪判決を受けて、ハーバード大学からは解雇されたが、中国政府が引き取ったようだ。
日本にとっても他人事ではない。「千人計画」には50人近くの日本人科学者らが関与したと報道されているが、実際にはもっと多く、数百人がなんらかの形で中国の人材招致プログラム(千人計画の地方版や後継の計画などを含む)に関与してきたと推定される。
日本政府は技術流出を防ぐため、政府系の研究資金を申請する際、海外の機関からの資金提供やプログラムへの参加状況を隠さずに開示するよう義務付けるなど、経済安全保障上の対策を強化している。
とはいえ、中国政府から日本よりもはるかに待遇のいい条件を提示されると、今後も頭脳が流出する可能性はあるだろう。
(喜多長夫/ジャーナリスト)

