
2022年の放送開始以来、瞬く間に世界中のアニメファンを虜にし、社会現象を巻き起こした「SPY×FAMILY」(毎週土曜夜11:00~テレビ東京系/ABEMAほか毎週土曜夜11:30より無料放送)。スタイリッシュなスパイアクション、心温まるホームコメディ、そして何より魅力的なキャラクターたちが織りなす物語は、多くの人々の心を掴んで離さない。そんな「SPY×FAMILY」のSeason 3が10月より放送中。さらに「ABEMA」では、Season 3の放送期間中はずっとSeason 1・2の全話が無料で楽しめるという盤石体制。そこで今回は、改めてフォージャー家の軌跡を振り返るとともに、なぜこの作品がこれほどまでに愛されるのか、その魅力を改めて紐解いていこう。※Season 1・2のネタバレを含みます
■私たちはなぜ「SPY×FAMILY」に夢中になるのか?
「SPY×FAMILY」の魅力は、単なるスパイもの、あるいはコメディものでは語り尽くせない。そこには、時代や世代を超えて人々の心に響く、普遍的なテーマと巧みな仕掛けが隠されている。
■魅力(1):奇妙で、最高にクールな「偽装家族」という設定
物語の核となるのは、スパイの父〈ロイド〉、殺し屋の母〈ヨル〉、超能力者の娘〈アーニャ〉、そして未来予知犬〈ボンド〉という、およそ交わるはずのない者たちで構成された「偽装家族」である。彼らはそれぞれの目的のために家族を演じるが、その正体は互いに知らずにいる。この「秘密」が物語に絶妙な緊張感と、予測不能なコメディを生み出している。
つまり、父は娘が心が読めることを知らず、母は夫がスパイだと知らない。娘だけが二人の正体を知っているという構図が、数々のシチュエーションをさらに面白くしている。一方で、この作品の本質は、そんな偽りの関係から、いつしか本物の愛情や絆が芽生えていく過程を丁寧に描いている点にある。「普通」の家族を知らない彼らが、手探りで、不器用に、それでも懸命に「家族」になろうとする姿は、私たちに温かい感動を与えるのだ。
■魅力(2):シリアスとコメディの奇跡的な融合
本作の舞台は、東西間の冷戦が続く緊迫した世界だ。ロイドが挑むスパイ任務や、ヨルが遂行する暗殺稼業は、一歩間違えれば命を落とすシリアスなものである。手に汗握るアクション、巧妙な諜報戦は物語の大きな見どころであり、読者や視聴者を惹きつけてやまない。しかしその緊張感は、アーニャの天真爛漫な言動や、フォージャー家の日常に溢れるコミカルなやり取りによって、鮮やかに中和される。シリアスなスパイ活動の直後に、アーニャの珍行動に笑わされるなど、緩急自在のストーリーテリングこそが「SPY×FAMILY」の真骨頂。この絶妙なバランス感覚が、視聴者を飽きさせずに物語の世界へと深く引き込んでいく。
■魅力(3):愛さずにはいられないキャラクターたち
クールな完璧超人でありながら、アーニャのことになると途端に親バカになってしまうロイド。おっとりとした天然な性格と、常人離れした最強の戦闘能力を併せ持つヨル。そして、豊かな表情と「わくわく!」の精神で物語を牽引するアーニャ。このフォージャー家の3人(と1匹)は、誰もが応援したくなる魅力に満ちている。さらには、アーニャのライバルでありツンデレなダミアン、姉のヨルを溺愛する秘密警察のユーリ、ロイドを一方的に崇拝する同僚フィオナなど、脇を固めるキャラクターたちも非常に個性的。彼らが物語に加わることで、人間関係はより複雑に、より面白く展開していく。

■フォージャー家の軌跡! Season 1 & 2 ストーリーと見どころ
■Season 1:偽装家族、爆誕! 波乱万丈のオペレーション〈梟〉
すべてはここから始まった。西国の敏腕スパイ〈黄昏〉が、平和を脅かす国家統一党総裁ドノバン・デズモンドに近づくため、偽りの家族を作り名門イーデン校への潜入を目指す「オペレーション〈梟〉」。この無茶な任務が、奇跡の家族を生み出すことになる。
流れ:出会いからイーデン校入学まで
精神科医ロイド・フォージャーと名乗ることを決めた〈黄昏〉は、任務に必要な「子ども」として孤児院からアーニャを引き取る。しかし、彼女は人の心が読める超能力者であった。続いて、妻役として出会ったのは市役所職員のヨル・ブライア。彼女の正体は、裏社会で恐れられる殺し屋〈いばら姫〉。互いの利益のために偽装結婚した3人は、数々の困難を乗り越え、見事イーデン校の入学試験に合格する。
見どころ(1):衝撃のプロポーズと家族の誕生(MISSION:1-2)
何と言っても外せないのが、家族が結成されるまでのスピーディーでコミカルな展開だ。特に、追手から逃れる中で、ロイドが手榴弾のピンを指輪に見立ててヨルにプロポーズするシーンは、本作の世界観を象徴する名場面。
見どころ(2):芽生える本物の絆(MISSION:4-5)
イーデン校の面接試験で、意地悪な質問によってアーニャが涙を流した瞬間、ロイドはスパイの仮面を投げ捨て、父親として本気の怒りを露わにした。任務のためだったはずの関係に、本物の感情が芽生えた決定的瞬間。その後の合格祝いでは、WISE(西国情報局)の仲間を総動員し、古城を貸し切ってアーニャのために本気のスパイごっこを繰り広げるなど、ロイドの親バカっぷりが炸裂。偽物の中に確かな「本物」が宿り始めたことを感じさせる。
流れ:新たな仲間と標的への初接触
イーデン校に入学したアーニャは、ロイドの指示で標的の息子ダミアンと親しくなる「ナカヨシ作戦」に挑むが、前途多難。そんな中、未来を予知する犬・ボンドが新たな家族として加わる。さらに、ロイドの同僚で彼に歪んだ愛情を抱くスパイ〈夜帷(とばり)〉ことフィオナが登場し、ヨルとの間に静かな火花が散るなど、人間関係はより豊かになっていく。そして物語は、ついにロイドが標的ドノバン・デズモンド本人と接触する、Season 1のクライマックスへと向かう。
見どころ(3):フォージャー家、完成(MISSION:13-15)
テロ事件に巻き込まれたアーニャは、未来を予知する犬(後のボンド)と出会う。彼の能力を借りて事件を未然に防ぐアーニャの活躍は必見だ。こうして家族に加わったボンドによって、スパイ・殺し屋・超能力者・未来予知犬という、最強で奇妙な家族が完成した。
見どころ(4):つかの間の接触(MISSION:25)
イーデン校の懇親会で、ロイドはついにドノバン・デズモンドとの直接対話に成功する。しかし、デズモンドは心を読ませない鉄壁のガードと、不気味なほどの掴みどころのなさを見せつける。この短い会話シーンは、オペレーション〈梟〉がいかに困難な任務であるかを視聴者に改めて突きつけ、Season 2への期待を煽る見事な幕引きとなった。
■Season 2:豪華客船編が熱い! 知られざるヨルの戦い
Season 2の主役は、母ヨル・フォージャーである。彼女の裏の顔である殺し屋〈いばら姫〉としての任務が、物語を新たなステージへと引き上げた。家族旅行を隠れ蓑に、豪華客船で繰り広げられる壮絶な戦いは、本作屈指の人気エピソードとなっている。
流れ:豪華客船での三重奏(アンサンブル)
ヨルは、所属する組織〈ガーデン〉からの指令で、マフィアの要人を護衛し、国外へ逃がす任務に就く。その舞台は豪華客船「プリンセス・ロレライ」。奇しくも、ロイドとアーニャも福引で同じ客船の旅行チケットを手に入れ、フォージャー家は家族旅行へ。表向きは優雅な船旅、しかしその水面下では、ヨルが多数の殺し屋たちと死闘を繰り広げ、ロイドもまた船に仕掛けられた爆弾テロを阻止するため密かに奔走。そしてアーニャは、超能力で二人の危機を察知し、陰ながら手助けをする。
見どころ(1):〈いばら姫〉の本領発揮(MISSION:31-33)
普段の天然でおっとりした姿からは想像もつかない、ヨルの超人的な戦闘シーンが満載。ナイフを手に舞うように戦うヨルの姿はまさに「いばら姫」と呼ぶにふさわしく、なかでもMISSION:33「船上の交響曲」は、夜空に煌めく花火の美しさとバトルの激しさが相まってシリーズ屈指の神シーンと言える。彼女の圧倒的な強さと、その根底にある「誰かの平和な日常を守りたい」という優しい信念が深く描かれ、キャラクターの魅力がより一層深まったことは間違いない。
見どころ(2):家族の共闘と奇跡の交差(MISSION:34)
物語のクライマックス、船の甲板ではヨルが最後の敵と戦い、船内ではロイドが爆弾処理に挑む。互いの存在に気づかぬまま、同じ目的(船と乗客を守る)のために戦う二人と、そんな二人をサポートしようと奔走するアーニャ。フォージャー家が知らず知らずのうちに一つのチームとして機能する、最高のエピソードだった。

現在、ABEMAの『SPY×FAMILY』公式無料チャンネルでは、10月7日(火)から10月12日(日)の6日間連続で、Season 1からSeason 2まで全37話を順次無料一挙放送している。またTVアニメ『SPY×FAMILY』Season 3は、10月4日(土)から毎週土曜日夜11:30より、「ABEMAアニメチャンネル2」にて無料放送を開始。Season 3の放送期間中はSeason 1からSeason 3最新話まで全話を無料で視聴可能となっている。

文=岡本大介

