昔のドラマの再放送を見ると「この作品は××年に放送されたものです。現在においては一部不適切な表現も含まれますが、制作当時のオリジナリティを尊重し、編集をせずに放送させていただきます」といった注釈テロップが表示されることがある。その風潮を茶化すかのように効果的な演出として用いたのが、2024年のドラマ「不適切にもほどがある」(TBS系)だったわけだが…。
10月9日放送の「徹子の部屋50周年目SP 第3弾」は、5月7日の第1弾「名優&スター編」、8月6日の第2弾「時代を彩った歌手&アイドル編」に続く特別バージョン。「○○編」とは銘打たずに「大泉洋&天海祐希&マツコ奇跡の共演SP」と題して伝説のスター、スポーツ選手、文化人らの貴重映像の数々を紹介する形式だった。
しかし「奇跡の」とは言いながらも、大泉は10月21日スタートの「ちょっとだけエスパー」、天海は10月16日スタートの「緊急取調室」でそれぞれ主演しているわけで。番宣臭は拭えない。
それはさておき、第3弾も懐かしい貴重映像満載で楽しめたのだが、それ以上に驚いたのが、徹子の強烈な質問の数々。放送年とゲストの当時の年齢が表示されてはいたが、それこそ「徹子の質問には、現在においては一部不適切な表現も含まれますが」なる注釈が必要そうなものを連発。何度も「最高!」と手を叩いて笑いながら見てしまった。
12億円の負債を残して勝プロダクションが倒産した翌年の出演となった勝新太郎に向かって、
「ハッキリ言って借金、なかなか返すの大変?」
とぶっちゃけ質問するなんてのは序の口。アントニオ猪木には、
「やっぱりそのアゴで得してらっしゃる部分もあります?」
さらにまじまじと見ては、
「アレですね、下の歯の方が上の歯より出てらっしゃいますね」
ルッキズムがどうこう言われる今の世の中ではありえない。VTRを見ながら大泉などは「スゲーわ。マジ、スゲー」と驚き呆れて言葉を失うほどだ。
天海は29歳の時に初出演した際、
「元気のいい、パワフルなおばあちゃんになりたい。『おばあちゃんは昔、宝塚ってところにいてね』って言って、孫とかとね、縁側でお茶とか飲みたい」
と夢を語っていたのだが、その後、天海が出演するたびに結婚のことを話題に持ち出す徹子。今だったら「マリッジハラスメントだ」なんて騒がれかねない。
初出演から6年、その間に結婚して娘を授かった大泉に対しては、
「お嬢さんは髪の毛チリチリ?」
と質問する始末。自分にならまだしも、愛娘の容姿をそんなふうに聞くなんて…。さすがの大泉も苦笑しながら「チリチリじゃないです」と答えていた。
そんな徹子の「衝撃映像」の数々に、
「(これが許されたのは)時代ですか?」(大泉)
「時代じゃないです。徹子だからです」(マツコ)
その通り。そして徹子にすら時代を強要するような世の中には、断じてなってはいけない、と思った次第。
先日、「徹子の部屋」にゲスト出演した際に意気投合した藤井風と、プライベートデートをして元気を充電した徹子。これからも末永く「徹子だから」許される質問の数々をぶつけまくってほしい。
(堀江南/テレビソムリエ)

