
■端正な顔立ちやチャーミングな笑顔を武器にロマンス作品で活躍
ブラウンの髪に琥珀色の瞳、端正な顔立ちと親しげな笑顔で人気上昇中のガリツィン。ロンドンの名門男子校ダルウィッチ・カレッジでラグビーに打ち込んでいたガリツィンは、友人の薦めでミュージカルのオーディションを受けたのを機に俳優を志すことになる。駆け出し時代の『ぼくたちのチーム』(16)では大学ラグビーの選手を演じていたが、劇中で見せた鮮やかなパス回しやゴールキックは紛れのない実力だったのだ。

そんなガリツィンが注目されるきっかけになったのがAmazon版『シンデレラ』だった。シンデレラをドレスデザイナー志望の女性として描いたロマコメ風ミュージカルで、ガリツィンが演じたのはシンデレラ(カミラ・カベロ)に一目惚れするロバート王子。遊び人のお気楽プリンスだが、最後は王位継承者の座を妹に譲ってシンデレラの夢を叶えるため2人そろって旅に出る。地位や名誉に無関心、夢に向かって一直線のシンデレラに惹かれる優しい王子を、歌やダンスを交えて好演した。

ガリツィンの初期代表作でNetflix配信の『パープル・ハート』(22)で演じたのは、まもなくイラクに派遣される海兵隊員ルーク。10代の頃、クスリに手を出し多額の借金を抱えたルークは、ラテン系移民のキャシーと偽装結婚し、不正に給付金を得ようとする。見せかけの結婚が本物の恋になる定番のロマンスで、ガリツィンは父との確執を抱えた無骨な兵士を熱演。キャシーを演じたソフィア・カーソンとの相性も抜群で、泣ける恋愛映画としてSNSで話題を呼びガリツィンの名を知らしめた。

リアルな王子ぶりで高く評価されたのはAmazon配信作品『赤と白とロイヤルブルー』(23)だ。本作で演じたのは米大統領の息子アレックス(テイラー・ザハール・ペレス)と恋に落ちる英国の皇太孫でゲイのヘンリー王子(架空の王子)。凛とした立ち居振る舞い、ロイヤルファミリーの一員としての重圧に耐えながらアレックスへの愛を貫く姿が印象的で、日本でも多くのファンを生みだした。

続く、やはりAmazonの『アイデア・オブ・ユー ~大人の愛が叶うまで~』では、アン・ハサウェイ演じる40歳のシングルマザー、ソレーヌと恋に落ちる人気グループのリードボーカル、ヘイズ役で出演。愛の力で困難に挑む定番ロマコメ風の展開だが、ヘイズのファンやマスコミから徹底的に叩かれてソレーヌの家庭が崩壊していく様をシビアに描いた痛みを伴うお話だ。やんちゃなアイドル時代と精神的に大人になった“5年後”の演じ分けに、ガリツィンの巧さがにじみ出る。

■上昇志向の新聞記者、エリオットをコミカルに演じた『ひつじ探偵団』
配信作でファンを掴んできたガリツィンがメインキャストとして出演した劇場公開作が、ヒュー・ジャックマン主演の『ひつじ探偵団』である。田舎の牧草地で暮らす推理小説が好きな羊たちが、飼い主であるジョージ(ジャックマン)殺害事件の真相に迫る物語。監督は『ミニオンズ』(15)を大ヒットさせたアニメーション監督カイル・バルダで、これが初の実写長編監督作だ。

愛らしい羊たちとは裏腹に本格ミステリーの雰囲気漂う本作でガリツィンが演じたのは、取材でジョージの住む村を訪れた新人記者のエリオット。そこで偶然発生した殺人事件を記事にするべく、頼りない巡査と共に真犯人を追いかける。ガリツィンは好奇心旺盛だがイマイチ冴えないエリオットをコミカルに演じており、大きなメガネや巡査役で2mの長身俳優ニコラス・ブラウンとの身長差でも三枚目ぶりを強調する演出がおもしろい。事件に深く関わっていく展開を含め、ガリツィンの新境地ともいうべきクセのあるキャラクターが楽しめる逸品だ。

■『マスターズ・オブ・ユニバース』では鍛え上げたマッチョなボディを披露!
そしてガリツィンの主演最新作となるのが『マスターズ・オブ・ユニバース』だ。本作で演じるのは宇宙の中心にあるエターニアの王子アダム。邪悪なスケルター(ジャレッド・レト)の侵攻を受け、幼い時に一人地球に逃れたアダムは、大人に成長してエターニアに帰還。伝説の剣パワーソードの力で最強戦士ヒーマンに変身し、故郷を暗黒の世界に変えたスケルターに戦いを挑む。

本作はアクションフィギュアをベースにアニメやコミックなどメディアミックスに展開している、いわば「トランスフォーマー」のヒーロー版(日本では「魔界伝説ヒーマンの闘い」として販売)。その実写映画化である本作を監督したのが、「トランスフォーマー」のスピンオフ『バンブルビー』(18)で称賛されたトラヴィス・ナイトなのがおもしろい。

もともと筋肉質のガリツィンだが、上半身裸で巨大な剣を振り回すヒーマンを演じるにあたり4か月をかけ肉体改造。アーノルド・シュワルツェネッガーの当たり役コナンさながらの、マッチョなボディを披露する。そんな本作の魅力の一つがアダム/ヒーマンのキャラ設定。幼い頃のアダムは剣術が嫌いな平和主義者で、エターニアに戻ったあとも基本ひ弱な三枚目のままなのだ。ソードの力で無敵のパワーを誇るヒーマンに変身するが、バトルの合間で見せる「俺ってこんなに強くていいの?」と言いたげなリアクションの数々は、スパイダーマンにも通じる親しみやすさ。シリアスからコメディまで多彩な役をこなしてきたガリツィンの集大成というべきキャラなのだ。もちろんガリツィンのアクションシーンも満載で、迫真のソード&メカバトルが堪能できる痛快作になっている。

すでにベン・スティラー共演のロマンチックファンタジー『A Matter Of Time(原題)』への出演がアナウンスされているニコラス・ガリツィン。『赤と白とロイヤルブルー』の続編など新作の噂も絶えないが、まずは『マスターズ・オブ・ユニバース』の成功とシリーズ化に期待したいところ。本作を機にハリウッドを代表するスターの仲間入りを果たしてほしい。
文/神武団四郎
