叫んだ言葉
「お父さん!!見てて!!」
あの子の声が、校庭に響き渡りました。ゴールテープを切るあの子の姿が、双眼鏡の中でぼやけて見えました。レンズが汚れているのかと思って外しましたが、汚れていたのは僕の目のほうでした。
妻が僕を見上げているのが視界の端に分かりました。けれど僕は前を向いたまま、何度もまばたきを繰り返すことしかできなかったのです。
そして...
帰り道、あの子はずっと前を歩いていました。時々振り返ってこちらを見ては、また早足で先に行ってしまいます。家の前であの子がぽつりと言いました。
「今のはね、たまたまだから」
僕は「ありがとうな」とだけ返しました。それ以上の言葉は、まだ僕にはふさわしくないと思ったからです。2年間ずっと待っていたつもりはありませんでした。でもあの一言を聞いた瞬間に分かったのです。僕は本当は、ずっと待っていたのだと。
(30代男性・システムエンジニア)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
