広島カープはここまで(21勝31敗3分でセ・リーグ5位。セ・パ交流戦も3勝7敗1分で12球団中11位と、苦戦が続いている。
しかし、投打の個人タイトルのランキング表に目を移してみると、チーム再建の光が見えてきた。そのタイトル部門とは、盗塁。辰見鴻之介がリーグ3位の14個をマークしていた。1位は巨人の浦田俊輔と、ヤクルト・岩田幸宏の15個。辰見との差はわずかだ。
このまま辰見が盗塁王のタイトル争いを続けていく可能性は十分にある。このタイトル争いの意義は大きい。
というのも、広島は伝統的な機動力のチームであり、仮にタイトル獲得となれば、2014年の田中広輔以来となる。
「辰見は昨年オフの現役ドラフトで、楽天から移籍してきました。2022年に育成ドラフト1位でプロ入りし、翌シーズン途中に支配下を獲得しましたが、すぐに育成に戻ってしまい…。その後は支配下と育成を行ったり来たりしていました」(スポーツ紙デスク)
元イースタン・リーグ指導者によれば、対戦チームのスタッフは、辰見のスピードと走塁センスに一目を置いていたという。さらに2022年のドラフト当時を知る球団スタッフによると、西南学院大学の内野手だった辰見を視察した球団は多かったそうだ。
しかし、その年のドラフト会議の注目選手は高松商の浅野翔吾、立教大の庄司康誠など。パンチ力のある内野手もいたため、辰見に届いた調査書は2球団だけだった。
広島に移籍してようやく素質が開花した
「調査書とは、指名リストに入っていることを伝える書類のようなもの。『辰見はプロ一本で、就職活動をいっさいやっていない』と聞いていたので、楽天が育成で指名した時、安堵した九州担当のスカウトがいました」(元在阪球団スカウト)
楽天の担当スカウトは辰見の走塁スピードについて「アメンボみたい」と語っていたそうだ。広島でその素質がようやく開花したわけだが、辰見の出場は主に代走。14個目の盗塁を決めた6月7日も、8回に四球を選んだ勝田成の代走だった。
1970年代後半から1980年代にかけて、広島には「代走屋」がいた。今井譲二という選手で、1987年には36試合に出場しながら打席数がゼロ、盗塁9の記録が残っている。一芸に秀でたスペシャリストが育てば、「機動力の広島」が復活する。
(飯山満/スポーツライター)

