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『SILENT HILL f』レビュー:過去を乗り越え未来を照らすホラーゲームの意欲作

『SILENT HILL f』レビュー:過去を乗り越え未来を照らすホラーゲームの意欲作

過去を乗り越え照らした未来にはどんな課題があるのか?

本作はそんな目的意識をもって過去のシリーズ作を見直し、どこを残し、何を削り、どんなブラッシュアップをするかを深く検討したことだろう。「シリーズの当たり前」を見直す行為は、非常に意欲的でチャレンジングだ。筆者は本作のこうした挑戦が、一定の成功を収めていると思う。

ただ、本作が何の問題もない完全無欠の傑作なのかというと、そうではない。本作は未来への大きな課題を残している。それは、周回プレイだ。

本作は周回プレイを前提とした作りになっている。これまでのシリーズもマルチ・エンディングを採用していたため、周回プレイは可能だった。

しかし本作は周回プレイ必須。というのも、1回目のプレイではストーリーの全体像が分からず、周回プレイをすることではじめて分かるようになっているからだ。

この「周回プレイ」前提という点は、サイコロジカルホラーというゲームジャンルと極めて相性がいい。というのも最初に書いた通り、サイコロジカルホラーとは、心理的状態に起因する恐怖を描いたホラーだ。

ということは、「人間の主観」が強く影響する。他の人にとっては恐怖の対象ではない事柄であっても、トラウマを持つ人物の「主観」を通して世界を見たとき、恐怖が発動するのだ。となると、視点を変えつつ繰り返し物語を描くことができれば、どこまでが主人公の「主観」でどこからが他の登場人物の「主観」か、あるいはどこからが「客観的事実」なのかを浮き彫りにでき、人物や物語をより深く表現できる。

本作のアプローチは、こうした効果を狙ったものではないかと思う。

一方で、プレイを重ねれば重ねるほど、攻略の最適解が明らかになり、プレイは作業化していってしまう。昨今の繰り返しプレイを前提としたゲームでは、ランダムなアイテム入手やライダムなステージ構造などといったローグライト要素を採り入れることが多い。なぜローグライト要素を採り入れるかと言えば、プレイヤーの状況をランダム化することで、攻略の最適解を毎回変えるためだ。

しかし本作の周回プレイは、状況が大きく変わるわけではない。一応セリフが変更されたり、新しく移動可能な場所が解放されたりといった要素はあるものの、プレイ体験はほとんど同じ。このため、どうしてもプレイが作業的になってしまい、面倒くさく感じてしまうのだ。

また、敵と戦うシチュエーションに狭い場所が多いという点も、功罪併せ持っている。

これは恐らく意図的なものだろう。というのも、本作での主人公の攻撃は、壁にぶつかるとキャンセルされるようになっている。したがって、敵へ攻撃を確実にヒットさせるための位置取りが重要。

「集中」して敵の攻撃に備えながら的確に位置取りをして、見切り反撃を加える……おそらくそんな、時代劇の真剣勝負のようなスリルこそ、本作の目指したバトルなのだろう。となると、狭い場所というシチュエーションはとても窮屈だ。この窮屈さは、サイコロジカルホラーとして見たとき、昭和的空気に対し精神をすり減らす雛子の心情とシンクロする。

このような前提に立てば、狭いシチュエーションでのバトルという要素は優れた効果を発揮していると思う。

ただ一方で、狭い場所というシチュエーションでの窮屈なバトルは、単純にストレスが強い。初回プレイ時ならまだしも、一通りプレイして攻略法を知り、「はやく異なるエンディングを見たい」と考えている周回プレイヤーにとっては、サイコロジカルホラー的効果よりも、ストレスが勝ってしまうだろう。

ここまで本作の課題について触れてきたが、筆者はこれらを単なる問題点ではなく「サイコロジカルホラーの可能性」だと捉えている。本作は「サイレントヒル」シリーズという偉大なシリーズの過去を踏まえ、新たな「サイレントヒル」のかたちを見せてくれた。しかしそこにはまだ、足りない点がある。

とは言え、その点は未来のサイコロジカルホラー作品が挑むべき課題と言えるのではないだろうか? 言い換えるなら、サイコロジカルホラー作品である「サイレントヒル」シリーズにはまだまだ発展の余地があるということ。

つまり筆者は本作について、「サイレントヒル」の新たな可能性を提示しつつ、課題を浮き彫りにすることで未来への道を照らし出した作品だと捉えている。なお、課題として挙げた点を含めても、本作は完成度の高いサイコロジカルホラー・アクションアドベンチャーゲームであり、プレイする価値のある作品だと思う。ホラーゲームファンは、是非一度プレイしてほしい。

(文/田中一広)

配信元: ガジェット通信

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