ロボット導入で本当に問われるのは「性能」ではなく「使い続けられるか」
ロボットや生成AIの活用が広がるなか、犬飼氏が繰り返し強調するのは「動くこと」と「現場で使い続けられること」はまったく別だ、という視点である。製造現場は設備構成、作業条件、前後工程のつながりがそれぞれ異なるため、ロボット単体の性能だけでは解決しない場面が多いという。
同氏は「ロボットを入れるなら、その前後工程も含めてどう流すのかまで見なければならない」と話す。実装段階では、ソフトウェアや制御技術に加え、治具・搬送・検査・保守まで含めた全体設計が必要になる。同社が機械設計、電気設計、制御、現地調整まで社内連携で進める体制も、この考え方と地続きである。
ただし、現場適合を重視するほど案件は個別性を帯び、汎用化しづらい。受注側にも長期伴走の負担が生じる構造である。新技術の注目度が高まるほど、導入後の保守や継続的な改善まで支えられるかが、今後のFA各社にとっての選別要因となる可能性がある。

“3年がかりの初号機”と、地方発信のリアル
実績として挙げた案件の一つに、お灸の原料である艾(もぐさ)の製造工程を中国での手作業中心の体制から国内回帰・機械化へとつなげた事例がある。素材のばらつきが大きく、人の感覚に依存してきた工程だったため自動化の難易度は高かったというが、構想段階から伴走し、約3年をかけて初号機を納品した結果、追加受注へとつながったと説明する。
国内回帰や属人化解消のニーズは多くの業種で語られているが、それを実装まで持ち込んだ事例は限られる。一方、立ち上がりまで長期を要する案件では収益化のタイミングが読みづらく、受注体力のある企業しか取り組めないという面もある。地域との接点では、同社は2025年に滋賀県主催、近畿経済産業局後援の「しがオープンファクトリー2025」の参加企業に選ばれ、小学生から大学生を対象に工場見学やものづくり体験を実施する予定だ。行政が関わる公開企画への参加は、外部から見える形での情報発信という点で意味を持つ。
犬飼氏は、滋賀県の製造業集積地が名古屋と京阪神の間の『通過点』にとどまらず、この地域でロボットやAIに関わる仕事を生み出し続ける考えを示す。ただし、地方で先端技術人材を育て、地元に仕事を定着させる取り組みは短期で成果が見えにくいテーマでもある。工場外へ広がる自動化という構想が、事業としてどこまで継続的な需要を獲得できるか――今後の案件形成と運用実績の積み上げが試されることになる。
【取材協力】
株式会社ファーストシステム
代表取締役 犬飼 孟氏
https://firstsystem.jp/

