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アプリで「子供時代の顔」をまとえば、幼き記憶が蘇りやすくなる

アプリで「子供時代の顔」をまとえば、幼き記憶が蘇りやすくなる

記憶は『身体の感覚』と結びついている

記憶は『身体の感覚』と結びついている
記憶は『身体の感覚』と結びついている / Credit:Canva

今回の研究から明らかになったのは、「自分の見た目を少し変える」だけで、忘れていた記憶がよみがえることがある、というシンプルで驚きのある発見でした。

人間の記憶は、ただ脳の中に出来事だけが保存されているのではありません。

その出来事を体験したときの「自分の身体の感覚やイメージ」も一緒に記憶されている可能性が高いということです。

今回は、デジタルの力を借りて「子供だった頃の自分の顔」を再現し、それを自分自身のものとして感じることで、幼少期の記憶を鮮やかに思い出せるようになったのです。

この発見が持つ社会的な意義は非常に大きいでしょう。

研究チームは今後、さらに高度な技術を使って、幼児期のより早い時期の記憶にさえアクセスできる可能性を検討しています。

幼い頃の記憶は、大人になると多くが失われたり曖昧になったりしますが、こうした身体錯覚を利用したアプローチが進めば、今まで思い出せなかった幼児期の記憶を取り戻せる可能性も広がります。

ただし、ここで注意したいのは、今回の研究で使った「魔法の鏡」のような方法によって、どんな記憶でもすべて蘇るわけではないということです。

特に、生まれてすぐの赤ちゃんの頃の記憶は、そもそも脳にきちんと記録されていない可能性が高いのです。

つまり、「記憶自体が保存されていない場合には、この錯覚も効果を持たない」という限界があります。

しかし、こうした限界があるからといって、今回の成果の価値が下がることはありません。

むしろ、人間の脳がこれほど柔軟で、身体イメージを少し変えるだけで記憶の引き出し方が変わるということが実証されたのは、記憶研究にとって大きな一歩です。

これまでとは異なる「新しい記憶の引き出し方」を私たちに示してくれたのです。

研究チームはこの成果をさらに発展させ、将来的にはVRなどの技術を応用して、記憶を呼び覚ますリハビリテーション技術の開発にもつなげたいと考えています。

たとえば、アルツハイマー病などの記憶障害のある方に、昔の自分の姿をVRで再現することで、失われた記憶を呼び起こす手助けができるかもしれません。

これが実現すれば、「過去の記憶が失われる」という悩みを持つ人々にとって大きな希望になるでしょう。

これまで「記憶の研究」と聞くと、どこか難しそうな実験室の話に感じられたかもしれません。

でも今回の研究が示したのは、私たち自身の体や見た目といった「身近なもの」が、記憶という複雑で神秘的な現象のカギになるという、驚きに満ちた新しい視点でした。

いつか自分の姿をデジタル技術で自由に再現できる時代が来たら、これまで閉ざされていた記憶の扉が開く日も遠くないかもしれません。

元論文

Illusory ownership of one’s younger face facilitates access to childhood episodic autobiographical memories
https://doi.org/10.1038/s41598-025-17963-6

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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